第1章 怒りっぽい隣人 (3)
(7)マリラ・カスバート(p13)……マリラは聖母マリアから派生した名前。歴史的にはイングランド北部からスコットランドにかけて信仰された聖カスバートが有名。
 『赤毛のアン』に引用されるスコット作『マーミオン』(1808)には聖カスバートの名が何度も登場する。
 モンゴメリはこの聖人に関心があり、一九一一年に渡英し聖人ゆかりのホリー島を訪ねた。モンゴメリの親族にもカスバート姓はあった。

(8)ジンジャー(しょうが)という名前のオウム(p13)……ジンジャー(しょうが)という名にはピリリと辛辣なイメージがあり悪態をつくオウムにふさわしい。
 十九世紀の欧米ではオウムは大航海と未開の南方を連想させるエキゾチックな動物だった。デフォー作『ロビンソン・クルーソー漂流記』(1719)、スティーヴンソン作『宝島』(1883)にも描かれる。

 南米やアフリカなどの原産でプリンスエドワード島では非常に珍しかったが、当時の島は海運業がさかんで海外船舶の寄港がありバハマ諸島などとも行き来があった。
(9)忍耐は美徳だなんて言うが、もう我慢ならん(p14)……イギリスの劇作家トーマス・モートン(1764〜1838)の戯曲『鍬(すき)に栄えあれ』(1798刊、1800初演)第四幕第三場「これからは忍耐は美徳だというのはやめる」の引用。
 一般に「忍耐は美徳」という諺を前提とした言い回し。[RW/St]
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