第1章 怒りっぽい隣人 (5)

 さらにハリソン氏は「ケチ」だった。アラン牧師の給料を寄付する記名帳(リスト)に署名を頼まれると、ひとまず牧師の説教を聞いて、何ドルくらいの御利益(ごりやく)があったか、ためしてからにすると言った。ハリソン氏は、品物を見ないで買い物をするくらい馬鹿なことはないと思っていたのだ。そんなわけだから、リンド夫人が、海外布教のために寄付してほしいと頼みに行ったときも――そのときたまたま家の中がちらと見えたのだが――ハリソン氏はこう言い放った。ここアヴォンリーのばあさん連中は大した噂好きで、わしの知っているどこよりも敬虔(けいけん)なキリスト教徒が少ないようだが、あんたが、あのばあさん連中をまともなキリスト教徒にしてくれるんなら、喜んで金を出させてもらうよと。リンド夫人は立ち去りながら、つぶやいたのだった。まあまあ、ロバート・ベルの奥さんのなんとかわいそうなこと、今ごろ墓の下でのうのうと寝ていて良かったよ、ご自慢の家があんなありさまになっているのを見たら胸がつぶれたろうよ。「だってあの奥さんは、台所の床を、一日おきに磨いていたんだよ」リンド夫人は、マリラ・カスバート(7)に憤然として語った。「それが今じゃ、あの散らかりよう! 埃(ほこり)がつかないようにスカートをたくしあげなきゃ歩けなかったよ」(つづく)
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