第1章 怒りっぽい隣人 (4)
まず第一に、ハリソン氏は、男所帯を一人できりもりしていた。わが家に馬鹿な女どもなんぞいらんと、おおっぴらに言い放っていた。お返しに、アヴォンリーの女たちは、この男の家事と料理がいかにひどいものか噂(うわさ)しあった。ハリソン氏は畑の手伝いに、ホワイト・サンズのジョン・ヘンリー・カーター(6)少年を雇っていて、この子が噂の出所(でどころ)だった。たとえばハリソン氏の家には、決まった食事時間というものがなく、氏が空腹をおぼえたときに「ちょっと一口つまむ」だけだった。ジョン・ヘンリー少年は、そのときそばにいれば食事の分け前にあずかれるが、もしいなければ、次にハリソン氏がふと腹が減ったなと思うまで待たねばならなかった。ジョン・ヘンリーは、日曜ごとに家へ帰って腹いっぱいつめこんだ上に、月曜の朝は母親がいつも「おやつ」をつめたカゴを持たせてくれたが、そうでもしなければ今ごろは飢え死にしていただろうと、悲しげに訴えるのだった。
皿洗いも、ハリソン氏は雨ふりの日曜日しかしなかった。日曜に雨が降ると、やっと仕事にとりかかるのだ。といっても、汚れた皿を大きな樽に入れ、落ちてくる雨水で全部いっぺんに洗い、水を捨てると、置きっぱなしにして乾かした。(つづく)
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