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2000年10月の常識は

初秋の小ネタ12連発!!マツモトキヨシ/おやぢセンス/臭いひと/大きなひと/路地裏のニオイ/親切な自販機/好っきやねん大阪/新連載「関西エロス」/気ぃ悪い物件/気ぃ悪い血痕/ささ丸まんが/あとがき


「西の常識」第六回(ミリオン出版「GON!」2000年10月号に掲載)

■マツモトキヨシ

●今年の春、安売りドラッグストアチェーンとしては首都圏で超有名なマツモトキヨシがJR大阪駅前地下に開店した◇大阪店は関西圏では初店舗であるが、新しモン好きの大阪なので、その成功はほぼ約束されている◇各私鉄ターミナル駅から近いこともあり、連日多数の客でごった返しているのは結構だが、その多数の客のほとんどが大阪人であることを忘れてはならない◇大阪の人間の5人のうち2人は漫才師であり、1人はヤクザであり、1人は商売人である。さらに、あまり知られてはいないが、残りの1人はドロボウなのである◇ここまでで、たぶん誤解する地方の方々もおられるとナンなのであらためて記しておきますが、これはあくまで気質としてのドロボウで正味のハナシではない◇ちなみに、大阪はひったくりの事件数ではここ20数年日本一の記録を保持している(警察発表データなので信憑性は不明)◇というわけで、ひったくり、かっぱらいなどは大阪固有の文化習慣といえる◇大阪の事情通間でマツモトキヨシは素人でも簡単に万引きができるショップ、として広く知れわたりはじめている◇売り上げの何%が万引きで消えるのかは知らぬが、このようなつくりの店を大阪で営業することはある意味、自殺行為である◇見ているだけでコワイコワイ◇がんばれマツモト!

 

■おやぢセンス

●20世紀が終わろうとしている◇いっぽうで、デジタル通信だの、IT革命だの大騒ぎしている時代に、寿司やで「シャコ」注文するとき呑気に「ガレージ」という極北ギャグをかます輩がいる◇幸い大阪には、もともと箱寿司が主流だった過去がある。シャコなどというゲテモノに手を出さずとも、他にいくらでも旨いモノが手には入ったので、このガレージのネタは一般的ではない。しかし、同種のおやぢセンスは街のあちこちに発見できうる◇大阪代表というわけではないが、梅田地下街の立呑みスタンド「いないいないバー」、阿倍野銀座の小料理屋「あそこ」。どちらもコメカミに軽い痛みが走るほど恥ずかしいネーミングセンスだ◇命名者には、悪気などはない。はなはだことばに無神経な大阪とも映るがじつのところ、本質は異なる◇こうした飲食店は名前で勝負するものではないというのが裏の真の主張。その飲食店の内容が、旨くて安ければセンスなどどうでもいい◇大阪は名前やブランドという皮質のコトガラよりも実をとるのである

 

■臭いひと

●とてもとても臭うひとに出会ったのでここにご報告したい◇今年の夏はホント、暑かった。主筆はけっこうな汗かきなので夏の暑いのを好まない◇猛暑のなか、JR環状線「天満駅」外回りホームで電車を待っておりましたところ、内回りホームのベンチでなにやら細かい作業をするじいさんを発見した。しかもかなりの厚着をしている◇当日は、35度超という、記録的猛暑日。黒のフード付きコートを着用する気候などではない。また細部が確認できないが、極彩色のヒモで編み物しているように見える。クサイ! ナニかが臭う◇主筆は変態なので臭うのを好む◇意を決してジジイの近所に近づいたらスンゴイ臭い。10m手前から全く前進できない! 天王寺動物園の臭い◇新陳代謝系がコワレた爺さんなのかもしれないが、とりあえず、もんのすごいセックスアピールであった

 

■大きいひと

●地下鉄内で身長2メートル、体重約150キロなる人物にガンつけられたらどうする?◇主筆はワケありで週に一度、地下鉄御堂筋線と北部で相互乗り入れしている「北大阪急行」を利用している◇ちなみに、この北大阪急行は「急行」などと名付けてはいるが、運行車両のすべてが各駅停車という不条理な第3セクター会社である◇さて「梅田ーナンバ」間は地獄のように混み合うので覚悟がいるが「新大阪」駅を過ぎるといきなりガラガラになるので楽な電車なのである◇その呑気な車内でいきなり大男に睨まれてしまった◇大阪ではこうした行為を「メンチ切る」というが、降りる駅までの10数分、思いきり切られたまんまの状態であった◇ホント、写真撮るのがやっと…。ふふふ

 

■路地裏のニオイ

路地裏にしみついたホルモン焼きのニオイをたどっていくと、杉山さんちに到着しました。杉山さんはいつから“おすぎ”と呼ばれているかは知りませんが、たぶんオカマなのでしょう。杉山さんがいる限り、この路地はええ感じのままやと思います。杉山さんちはべつにホルモン焼き屋でも何でもなく、普通の家でした。 

 

■親切な自販機

●数年前から、天王子駅の南側(阿倍野区)で大規模な区画整理が進められている◇おかげさまで、歴史ある大阪の下町情緒がワヤクチャです◇奇跡的に残ったのが親切なタバコ屋兼ボタン店◇何故にボタンとタバコが出会ったのかという謎はひとまず置いといて、タバコの自販機に注目していただきたい◇一見するとフツーの自販機であるがよく見るとタバコ名がすべて手書き表示◇とにかく手書きは味が濃ゆい。しかも活字に比較し、かなり親切な表現でもある◇こうした行為は単なる思いつきから始まったものなのだろうがこのような時代錯誤ともいえるアナログ的手作業は見るひとを選び、味わいも深い◇タバコ名のすべてがわざわざ手書き表示されている自販機は主筆が知る限り、大阪市内にここだけである◇大して意味のあるコトではないのだろうが、何故か感動する物件、なのであった

 

■好っきやねん

◆地方出身者が大阪のことばを揶揄する場合、たびたび聞かされるのが大阪のことばは恋愛表現に適さないという指摘である◇だが、これほど大きなお世話はない。恋愛ごとき、言葉にたよるほど大阪人はヤワではないのである◇とはいえ、一般に使われている大阪のことばは、はなはだガラが悪く、あまりカッコの良いことばではない。だが、それがどうしたというのだろう◇ある意味では人間同士のコミュニケーションは誤解でなりたっている◇ちなみに、大阪では「〜でんがな、〜まんがな」などという言い回しは、笑福亭一門の落語家以外は使わないものである◇もし地方で、そうした語尾をつける大阪の一般民間人がいたとしても、それは大阪人としてのサービスなのであるから誤解しないように◇同様に、大阪人が「すっきゃねん」などと愛の告白をする場合それはほとんど冗談といっても過言ではないのでくれぐれも本気になさらぬように

 

■新シリーズ 関西エロス 第1回

B級的生き方を貫いた“奇才”たちに捧ぐ

「水曜日の女形」

それは7年前の夏の日だった。

外回りの営業で奈良県南部を回っていたら急に大雨に見舞われたので近くのスーパーに入り、自販機で飲み物を買ってくつろいでいた時である。どこからか、ふろしき包みをかついだ着物姿のおじいさんが近付いて来て「横に座っていいですか」と聞いてきた。テーブルはいっぱい空いてるのにと思いつつも「いいですよ」と返事をした。

おじいさんは荷物を下ろしながらずっと僕の方を見ている。ようやく遠慮してか椅子一つを空けておじいさんは腰をかけた。僕は“何か”ありそうだなと感じたが、案の定おじいさんは自分は京都の呉服屋に勤めていると言い始めた。次に毎週水曜にこの辺りに来ると言った。自分は80歳を過ぎているとも言った。僕は適当に返事していた。この歳で毎週遠出は大変やろうとも思った。

そして間が空いた後、おじいさんは微笑んで「歌舞伎でいえば僕は女形(おやま)やねん、もうわかったやろ」と言って、こっちの目をずっと見続けた。

キンタマが溶けていきそうなのをガマンして、この時ようやくおじいさんの顔をしっかりと見た。小柄なそのおじいさんは淀川長治に似ているなと思った。さらによく見るとしわだらけの唇が妙に紅いことにも気付いた。おじいさんは何だかうれしそうだった。そして遂に隣に座ってきた。

おじいさんは言った。「月に一回この辺りに住んでる男の子と会ってるねんけど、あなたも僕がここへ来た時に会ってくれない?」僕は、間髪入れずここへはめったに来ないと応えた。おじいさんは悲し気に「いつかここへ来た時でええから、この場所にいてね」と言った。そして「…少しばかり手当ては出すから」と続けた。僕は嫌悪感を感じたが、同時になんだか気の毒に思った。こんな行商をしているおじいさんが“手当”を出してまで… だが、それが励みで毎週ここまで来れるのだろうとも思った。

不思議な気持ちが抜けきれないまま、「そろそろ仕事に行きます」と言って立ち上がろうとした時、おじいさんは懇願した。少しだけ僕の手をさわらせてほしいとのことだった。「いいですよ」と言っていた。

ゆっくり身を寄せてきたおじいさんは、ほんの少しだけ僕の左手の小指と薬指の付け根辺りをさすった後、「ありがとう」と言った。僕のキンタマは完全に溶けた。

周囲の目が気になったが、誰も気にとめていないようだった。久しぶりに会った祖父と孫ぐらいに思ってたのだろう。気持ちのいいものではないが、少しばかり自分がビョルン・アンドレセンのように思えた。いや、思うことにした。また、ルネ・クレマンに見初められて『太陽がいっぱい』に主演したアラン・ドロンの映像(裸でヨットの舵をとってるやつ)も脳裏に浮かべた。全くやっかいな性格だとつくづく感じた。

それから何年か経って、水曜にこの場所へ行く機会があった。それとなくレジ横の自販機コーナーを見渡した。おじいさんの姿はなった。

 

■ささ丸マンガ「炎のランナー」

「ささ丸マンガ館」はこちら 

■気ぃ悪い物件「路上の幼児用ズック靴(片方)」

 

■おまけ:今月の気ぃ悪い血痕「地下鉄本町駅地下道階段にて」

■あとがき

●次号の予定は、「関西レズビアンスポット探訪」、「USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)完成間近に潜入!」、「アメ村でグラフィティ」、「路上のアーティスト」など。

●「WEB・西の常識」ですが、たぶん本誌発売のころにお目見えする予定です。してその内容は、「西の常識 バックナンバー」、GON!未掲載没ネタ、マニアにはたまらない、思ひ出の旧「西の常識」などなど。パソコンをお持ちで死ぬほどヒマな方は、ぜひともご覧ください。接続無料!? http://www.ne.jp/asahi/nisi/josiki/main.html

※なお、本文中の関西の地名・人名などの固有名詞は実在のものと一切関係はありません。

■主筆:二階堂茂

■協力:NGD上田耕司ささ丸


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