飛騨沢から槍ヶ岳、大喰岳西尾根

 あこがれの槍ヶ岳登山は天候に恵まれ、冷え込んだ稜線にダイヤモンドダストが舞う、美しい山旅だった。


日 時  1988年12月29日〜1989年1月31日

行 先  新穂高温泉より飛騨沢を通過して槍ガ岳、大喰岳西尾根を下山し新穂高温泉へ

記 録

29日

 新穂高温泉の蒲田川右岸にある駐車場に車を停め、右俣谷を滝谷出合まで進み、幕営する。

  

 

30日

 いい天気で、暖かな朝日が足元の雪をキラキラと輝かせる。その煌めきははまるで誰かが演出しているかのように見事だ。

 

 徐々に飛騨沢を詰めてゆく。大喰岳西尾根を登る予定で宝の樹を探すが、トレースが真っ直ぐ飛騨沢を登っているのを見て心が揺らいだ。確かに雪はよく締まっているようだ。僕達も先行者に倣うことにした。

  

 ふり返って見る笠ヶ岳が美しい。ややパートナーが遅れがちになる。

 夕方4時、かなり高度を稼いだが、肩まではまだしばらくかかりそうだ。しかしパートナーが、開き直ったのか休憩を兼ねて天気図を書き始めた。僕はその間、彼を待ってスケッチをするが、陽が傾き、徐々に冷え込みが強くなって、あたりにはちらちらとダイヤモンドダストが舞っている。ふと気が付くと、その太陽の下に眩いばかりの光の柱が真っ直ぐ縦に延びていた。僕はしばらくその神秘的な光景に見とれた。

  

 肩の小屋の側に幕営。

31日

 槍のピークを目指す。雪はしっかり付いており、ピッケルもアイゼンの歯もよく刺さる。

 ついに穂先に立った。素晴らしい天気で、空気が澄んでおり、穂高連峰のモルゲンロートが美しい。風も穏やかで、平和な年の暮れだ。この素晴らしい状況に友人と2人だけの贅沢である。山頂からの眺めは最高で、スケッチに時を忘れる。

  

 テントを畳み、大喰岳へ向かう。・・・幸せな稜線だ。あたりの山々は陰影深く、この上もなく美しい。・・・少しクリアすぎる感じさえする。大喰岳山頂でしばしスケッチする。

    

 大喰岳から西尾根を下り、そのまま一気に新穂高温泉まで下山してしまった。

  

 駐車場にテントを張り、轟々と流れる蒲田川の音を聞きながら、年越しの雑煮を作った。いい登山だったが、天気に恵まれすぎて順調に下山したので、正月は人里で迎えることになってしまったことだけが少し残念に感じられた。


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