猪苗代より磐梯山、裏磐梯へ

 宝の山磐梯。その魅力を味わい尽くすべく、表から裏へツアーをしてみた。あいにくの天気で視界はほとんどなく、まだ積雪量が少なくてブッシュに悩まされたり、いろんな苦労があったが、地形が面白く充実感のあるツアーとなった。


日時  平成6年12月30日(金)

行先  猪苗代スキー場より磐梯山、裏磐梯スキー場へ

日程と記録

 裏磐梯に停めた車中で目を覚ます。昨日は天候があいにくで、猫魔スキー場でスキーを楽しんでいた。今日もあまりいいとはいえないが、あまり日数もないので磐梯登山を決行することにする。今回の磐梯山はこちらに車をデポしてバスで移動して、猪苗代側から登り、こちら側へ降りてくる予定だ。

 猪苗代行きのバスの始発時刻が7時30分頃と遅いので、時間を有効に利用するため、早朝にスキーと荷物を小野川湖入口の停留所に降ろし、車は裏磐梯スキー場の林道下へ移動してデポする。そして3kmを歩いてバス停に戻ると、やってきたバスに乗って猪苗代に移動した。天気が良ければ見えるであろう裏磐梯は低くたれ込めた雲の中であった。猪苗代で猪苗代スキー場行きに乗り換える。

 

 猪苗代スキー場のリフトで最上部に上がるが、あいにく雪がちらつき始めた。あまり志気が揚がらないが、いざという場合は引き返せばいいのだと自分たちに言い聞かせて準備をした。赤埴山へ向けてシール登行を開始する。視界が悪く心細い。

 赤埴山からは沼ノ平に向けて明瞭な尾根が続く。すでに樹林帯の上なので霧がなければ眺めがいいことだろう。だが時々薄日が差すような気もする。

 沼ノ平を横切って対岸へと進む。ほとんど水平で散歩気分だ。視界はまずまずだが、左に見えているはずの磐梯山も上部はガスの中だ。

 

 渋川登山口の道標を見つけ、いよいよ磐梯山への急な登りとなる。硬い雪面にスキーのエッジを利かせながら、ジグザグを切って高度を稼ぐ。登り着いたところが爆裂火口の縁だ。ここにも道標があり、その縁に沿って左手にルートをとる。雪が氷化していて危険なのでアイゼンを装着し、ピッケルを持つ。

 やや傾斜が緩くなってしばらく行くと弘法清水小屋があり、小屋を過ぎると左手の尾根にルートをとった。夏道は真っ直ぐ登るようであるが、左の方がシンプルで自然な感じがした。少し深い積雪をかき分けて登る。あたりの樹々は真っ白だ。山頂はやはりガスの中だった。ジャケットや眼鏡にもたちまち霜が付いてゆく。僕たちの後続に福島からの2人組の登山者があって、彼らは夏道をたどってきたものらしいが、彼らは僕たちの残したトレイルを磐梯に詳しい地元の登山者のものだと思ったそうだ。恐縮至極。ツボ脚の彼らとはひとまず写真を撮り合って分かれた。

 いよいよ滑降に取りかかるが、まだシーズンのはじめで積雪が浅く、ブッシュが多くて苦労した。大滑降は望むべくもない。混んだ白い樹林を慎重に下り、正しいルートを求めて右へトラバースする。

 途中で先程のパーティーに追いついた。痩せ尾根のトラバース気味の下りで僕たちもスキーを担ぎにし、ツボ脚で彼らと一緒に行動する。1500m付近で彼らは早々にビバークを決定して、行動を中止した。だが僕たちはスキーの機動力を活かすべく、さらに下山を続ける。樹々が大きくて、その分まばらになった林の中を、スキーを履いて、中ノ湯方面に滑ってゆく。

 このあたりは地形的に複雑で、変化があって面白い代わりに、ルートファインディングが難しい。おまけに樹林帯で視界が利かないので、最近手に入れた多機能時計のコンパスと高度計機能を頻繁に使いながらの滑降だったが、ストックを付くうちに引っ張りの力がかかったのか、バンドが壊れてどこかへ飛んでいってしまった。あわててそこまで戻って探し出したが、まだ新品に近かったのでショックだった。無くさないようにポケットに入れて滑降を続ける。

 中ノ湯で一休みするが、もうかなり暗くなって、ヘッドランプを使わなくてはならないほどになってきているので、早々に腰を上げた。丸山と爆裂火口壁の間を滑り、コンパスの示す方位を頼りに雪原を横切って銅沼を目指す。火口壁の上部はガスっているらしいが、暗くてよく見えない。

 銅沼に出て、沼と西側の崖の間を北にたどる。雪明かりが頼りだ。

 ほどなく裏磐梯スキー場上部に出た。もうあたりはすっかり真っ暗だ。ゲレンデを慎重に滑り、レストハウスの側を通って、林道に出た。ここから車をデポした所まで2km程スキーを使う。もうかなりくたびれているので、歩く元気はないが、スキーなら楽ちんだ。しかし夜目にボンヤリ白く見えていた道にも沢山の砂礫が転がっていたらしい。スキーのソールがボロボロで、修理しなくてはいけないほどになっているのに気が付いたのは、もう車に到着してそのスキーを積もうとしていたときだった。


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