新穂高温泉より大ノマ乗越、抜戸岳往復ツアー

 数年前から双六岳周辺のスキーツアーをする度に笠ヶ岳の端正な白い姿が気になっていたのだが、今年のゴールデンウィークは穴毛谷を登行し、笠ヶ岳のピークを踏んで、スキーの機動性を生かして双六まで足を延ばすことにした。しかし、あまりの少雪と降雨による穴毛谷の雪渓の崩落を懸念して、予定変更となってしまった。


日時  平成10年5月2日(土)〜5日(火)

行先  抜戸岳

日程と記録

2日(土)アプローチ

17:00兵庫出発 === 24:00新穂高温泉(470km) 幕営

3日(日)秩父沢まで

8:00 起床 朝食 14:00 出発 --- 18:00 秩父沢出会 幕営

 かなりの雨が降った。朝になってもなかなか雨はやまず、新穂高温泉を流れる蒲田川の濁流は恐ろしいほど凶暴だ。僕達は行動するのを躊躇し、土産物を見たり、バスターミナルの周辺で雨具に身を包んで下山してくる登山者をぼんやり見ていた。登山案内所の掲示によると今年は例年よりも雪解けがかなり早いようだ。

 午前中に僕は公衆浴場のコンセントから電源をいただいてノートパソコンでいくつかの仕事を片づけた。実は今回この仕事があったために無邪気に遊ぶ気になれなかったのだったが、その意味では雨が降ってよかったのかもしれない。

 昼食を取り終わった頃、雨はほぼあがっていた。僕達は深山荘脇の駐車場に車を止めてとりあえず歩き始めた。ホテルニューホタカの前にデポしておいた荷物を拾い、林道を進む。予定していた穴毛谷は、未経験の谷であり、少雪とこの降雨による雪渓の崩落が心配だった。穴毛谷出合いでしばらく迷ったが、今回は勝手のわかった大ノマ乗越経由にしたほうが安心だろうということになった。残念だが、ともかく笠ヶ岳の登頂は何とか果たしたい。

左俣林道出合から 途中あまりの少雪のためにスキーを諦めワサビ平で引き返して下山するパーティに出会った。また小池新道の登りで出会った単独行者も、少雪のために双六岳まで行かず、大ノマ乗越周辺を滑っただけで下山してきたと言っていた。左股林道から見上げた弓折岳方面は至る所が黒く露出して寂しい有り様で、特に下部はほとんどツボ足で登った。やがて快適なシール登行になった頃、秩父沢出合付近で夕暮れが近づく。少し落石などが心配で心地悪かったが、出来るだけ安全そうな所を選んでツェルトを張った。

4日(月)抜戸岳ピストン

5:00 起床 朝食 7:00 出発 --- 11:00 大ノマ乗越 --- 14:30 抜戸岳 〜 17:30 大ノマ乗越 幕営

大ノマ乗越にて なかなかの好天だ。ツェルトを撤収して、大ノマ乗越を目指す。額に汗を滴らせながら高度を稼ぐ。右手に槍穂高連峰が美しい。しかし黒々としてとてもゴールデンウィークの槍穂とは思えない。ワサビ平からの登山者だろうか、すでに何パーティーかが僕達の前後にいた。

 大ノマ乗越には何パーティーかのテントが有り、周囲には多くの登山者の姿があったが、中には双六岳や黒部五郎岳が黒々としているのを恨めしげに見ながら、わずかに残った雪を縫って向こうの双六谷に下るスノボのパーティーもあった。

笠新道分岐 僕達はしばらく休憩した後、幕営道具などをデポして笠ヶ岳に向かったが、このころから稜線にガスがかかりかけた。はじめは槍穂が隠れたりしていたのが、やがて目の前まで白くなり始めた。ルートファインディングが難しい状況ではあったが、先行者のトレースがしっかりしており、まずまずのペースで距離を稼いでいったと思う。秩父平あたりは時々ガスが切れて雪面に微妙な陰影がうごめき、幽玄な光景を楽しむことが出来た。

秩父平滑降 笠新道の分岐まで到達した頃、ガスは晴れて笠が美しく浮かび上がっていた。しかし、僕達は笠ヶ岳登頂を諦めなくてはならなくなっていた。予定より1時間ばかり遅れていたのだ。ここで引き返さないとどこかでビバークする事になってしまう。しかしまたいずれ、もっと条件のよいときに、本来の予定コースであった穴毛谷から登頂することにして、その楽しみを今後に取っておくことにするほうがよいかもしれない。今年は異常な少雪だと言うことがせめてもの慰めであった。

槍穂とツェルト 僕達は抜戸のピークを踏んで引き返すことにした。抜戸から振り返る笠は黒い部分が多かったが秀麗だった。雪の多い年は頂上付近から快適な滑降が楽しめることだろう。頂上で小休止して下山を開始。下りはかなりスキー滑降が楽しめたが、特に秩父平の滑降は快適だった。秩父沢が滑降可能かどうか上から覗いてみたがかなり急で身震いがした。まあやめた方がよかろう。

 大ノマ乗越の混雑を避けたかったので、デポした荷物を回収すると、やや抜戸方面に登り返した尾根上にツェルトを張った。ほっと一息ついた頃、辺りは蒼氓と暮れていった。

5日(火)下山

5:00 起床 朝食 7:00 出発 〜 9:00 左股林道出合 --- 10:00 ワサビ平小屋 --- 11:00 新穂高温泉 露天風呂入浴

大ノマ乗越からの滑降 いよいよ最終日だ。今日はそんなに急ぐ必要はあるまい。ツェルトを撤収して出立の準備は整ったが、雪面がアイスバーンになっていたので、スケッチなどをしながら、槍穂の向こうから登った朝陽が雪面に照り映えるのを楽しむと同時に、雪の硬度がゆるむのを待った。

 まず多くのギャラリーが居る大ノマ乗越へ急斜面を滑降するが、エッジはよく効いて何の不安もなかった。右へ折れて左股林道を目指すが、カールの滑降は快適で、結構下部までスキーを使うことが出来た。下山する登山者の羨ましげな眼差しを背中に感じながら僕達はどんどん高度を下げた。

カールを振り返る 林道に着いたとき、今回の登山の内容はともかくとして、天候にも恵まれて愉快で充実した気分であった。2時間ほどのアルバイトで新穂高温泉に到着。お定まりの深山荘の露天風呂に入浴して今回の登山を締めくくった。

13:00帰途につく === 20:00 兵庫着
(車 ===  徒歩 ---  滑降 〜)



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