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last update 05/07/18

 

 

2003/09/15
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3. 主回路図
3.1 2004.02.01 改

3.2 各部設計
出力段 6080をプッシュプルで使用するときの出力段の検討です。

@ 6080のEp−Ip動作曲線にロ−ドラインを引きプレ−ト負荷を決めます。
Epmax=250V(最大定格)においてEc≒▲135V、アイドリング40mA前後を与えるとプレート損失がPd=10Wとなり定格Pd=13Wにおさまります。


6080のAB1級時の内部抵抗rpはプッシュプル片側約600Ωであり、5KΩの出力トランスを用いれば無帰還のダンピングファクタは DF=(5KΩ÷4)÷(600Ω×2)≒1.04となります。 

Aダンピングファクタは、私の使用目的がジャズ系のためDF=3〜5といたします。、クラシック系は10前後と思います.

ここでDF=3以上を必要とすると、所要NFB量は
無帰還のD.Fが
 DF=1.0の時(負荷1.25K) : (1+1)*NFB−1=3より逆算して 所要NFB=約2(6dB)
 となります。

B固定バイアス
通常のオーディオ管と同様にカソード抵抗を測定しやすいように10Ωとした場合です。しかしながらユニット間のバラツキが大きいため断念しました。
ロ−ドライン=1.25Kから、Ep−Ip動作曲線よりトランス1次側で約16W/250Vの最大出力が得られることがわかります.この場合必要なグリッド入力は、270Vpp/50kHz程度必要となります.

C半固定バイアス
実は当初,スピーカーの低域再生時のことを考えて(=低域共振点をピークにインピーダンスが約3−6倍に上昇します。8Ωの場合40Ωくらい),負荷をこの半分の2.5kΩとして設計しました。しかしユニット間のばらつきが大きく,対策のため半固定バイアスにしたところ,今度はドライブ段と直結ですので,バイアス点が最大出力時のとき電流値が増大すると深くなり,クロスオーバー歪が発生しました。
 考えてみるとあたりまえなんですが,対処に困りました。自己バイアスにして,コンデンサ結合するのが安直な解決策ですが,音の鮮度が落ちます。そこで最大出力がかなり落ちるのですが,負荷を増すことで電流値の変化が少なくなるよう,一般的な5kΩとして逃げました。
 直結にこだわったのは,”どこのコンデンサがいい?”などど言う議論から開放されますし,回路の挙動が予測できます。300V近い振幅で広帯域と良好な特性を確保するためには高スルーレート,低オーバーシュートを要求されます。コンデンサが入っていたのではうまくありません。

カソード抵抗は標準で330Ωとし(Eg=▲135v,Ip=40mA時 自己バイアス12V程度),gmの低いものに対して,さらに330Ωや470Ωを並列に足してそれぞれ165Ω、194Ωとしてユニット間のバラツキを平均化しました。最終的にドライバ段で上下の波高とバイアス電圧を微調整します。これで両ユニット間における出力トランスのアンバランス量に収まるようにトリミングします。
半固定バイアスへ変更したのとプレート負荷を増やしたため動作クラスは通常のAB級よりはむしろA級に近い浅いABになります。

当然のことながらパワーは30%近く減ってしまいます。

ただ、こうしたほうが熱暴走の対策にはなります。規格表には最大定格動作時にはプレート用直流抵抗の挿入、カソードバイアスの推奨、100kΩ以下のグリッドリーク抵抗の記述があり熱暴走への対策の指示が出ています。低rpにする為、幅広のカソードにグリッドが近接しており、発熱したグリッドが球を暴走させます。
3.3
ドライバー段



次にドライバー段です

初段はペアマッチドFETの2SK389GRとし,カスケード用にNPN Tr 2SC1222(Vcbo=50v),ドライバ段に2SC1480(300v)を使用しました。
ファイナルを真空管式とする場合pnp-Trに該当するものがありませんので、回路構成上、上下対称形式より、差動アンプ形式が都合がよいので採用しました。
OTLなどの場合でも2電源式にすると半導体ドライブは具合がよいので習得しておくと設計の幅が広がります


@初段差動カスケード
2SK389GRの差動アンプにnpn-Trでカスケードしたものです。

初段差動カスケードのゲインはRL*gmで求められます。
2SK389GRのドレイン電流4mAにおけるgmを10mυとすると

2200(RL、Ω)*0.01(gm、2SK389GR 4mA)=22

で、差動片側だけしか使いませんので約10程度となります。

 カスケード接続の理論は各種文献を見ていただくとして、考え方は通常のソース接地のドレイン負荷にベース接地エミッタ入力のバッファ−が追加されたもので、フロントのドレイン出力が吸い込み型の電流出力になったものです。上側トランジスタのベースがツェナーで固定され、上側トランジスタのエミッタと2SK389のドレインが−0.6vほど低い電圧で一定となります。このため2SK389のドレインの出力電圧がほとんど変化しませんのでCob*ゲイン=ミラー効果の影響が劇的に軽減されます。負荷の変換は上側ベース接地アンプが受け持ち負荷抵抗(2200)Ωで電圧振幅に変えます。
 ソース側の定電流源ですが、簡単にツェナーとnpnTrで8mAを作っています。半導体アンプの設計のセオリーとしては、基本的には初段の電流値を決め最大振幅が得られるようにカスコードアンプのコレクタにおいて所要電源の1/2前後になるよう負荷抵抗を計算します。Vcc=24Vのとき12V前後になるようにするものです。
 ただ今回は、後段のpnp差動段との兼ね合いで所要振幅が得られる程度に、Vccへシフトして設計しています。真空管をドライブする上では,後段の振幅を最大にとれるように,できる限りVccへ近いほうがよいのです。

 2段目の2AS1480-pnp差動回路はエミッタ抵抗を追加して電流帰還をかけたもので,適切な増幅度と帯域を確保したものです。
 また同時に真空管が要求するマイナス側のグリッドバイアス電圧へオフセットさせたものです。万一このpnp段が壊れたときでもグリッドバイアスがコレクタ抵抗を介してマイナス電圧へ引かれ、真空管をカットオフさせます。

 ここではエミッタ抵抗とコレクタ抵抗の比がゲインとなります。当初はコレクタ負荷抵抗を27K程度としていましたが、2AS1480の発熱が多めなので43kΩへ変更しました。放熱器を一回り大きめにして20kΩ前後とした方がゲイン配分も帯域特性もよくなります。

27k÷1k=25倍前後
43k÷1k=40倍前後

となり、初段差動カスケード段i以降、約250〜400倍のゲインが得られます。
一見するとありすぎるように見えますが6080の所要入力電圧には300Vp-pほど必要ですのでNFBを6dBもかければあまり余裕はないのです。
 この結果、0.5v〜1V前後でフルドライブとなります。真空管で作ったのではこうは簡単にいきません。

 ...半導体DCアンプが興隆した当初(1970年代後半)から10年くらいは2段目をフルゲインとしてファイナルのダーリントンコンプリメンタリ段から大量のNFBをかけていたものです。

 どの半導体アンプ設計者も一度はOPアンプの内部等価回路を解析した覚えがあるのではないでしょうか。カレントミラー、差動アンプ、カスコード接続等々華麗な回路テクニックが使われています。
 現代半導体アンプの原点はOPアンプで、μA741(フェアチャイルド)の内部等価回路を初めて見たとき ”なぜこのようにしたのか???” でした。後年(1991年)設計者の手記が日経エレに掲載されたときにその開発経緯が書かれており設計者でないとわかりえない点が氷解した記憶があります。
 参考書の助けが必要ですがぜひご自身で解析してみてください。

3.4
電源部

  

 

 パワ−部の電源はタンゴPH−261、240v260mAをブリッジし、直後のリップル用電解コンデンサを2.2uf程度と小さめにして、タンゴ0.7H500のチョークインプットとして2次側260v程度を得ています。
 単にチョークインプット用ではないチョークをそのまま使用すると、 ”ブーン” とないてしまいますので、+B電圧が高くならない範囲内で、小容量のリップル用電解コンデンサを整流直後に入れます。2.2uf〜4.7uf程度で様子を見ます。 04.2.1現在で10uFになってます。) 
こうするとおおむね、トランスの表示電圧付近の+B電圧が得られます。トランスにも負担が少なく、それに伴い電流もやや多めにとれますので、私自身は最近よく使う用法です。コンデンサインプットにすると出てくる電圧が高すぎる場合が多く、最終電圧がなかなか読めません。
 チョークのあとにはたっぷり電解コンデンサを与えます。ELNAのCerafine 350V/100uf*2を2本並列にし、400ufとしています。

 ドライブ段の電源ですが当初はドライブ段用として3端子レギュレータで±24V、真空管バイアス用として300vを用意しました。調整時に半固定バイアスへ変更したために、ドライブ電圧をプラス側12V程度まで振る必要に迫られたため29Vへ変更しました。 24V系はヒーターの6.3v*2をプラス、マイナス側とも倍電圧片波整流しています。300vはPH−261の250v35mAをブリッジ整流しています。

 PH−261は6BM8や6CW5などの低圧大電流型に適した廉価なトランスなんですが、ISOからはこの種のトランスは、電圧がやや高めのGS250、MAX280くらいしかありません。
 U−13,15,25、ST−350、MAX360、520とともに再発売していただきたいトランスです。
 OPTも、トライオード用の10〜20W用の廉価で高品質なバンド型OPTがほしいところです。ハモンドなどUSA製も検討したいのですが、2次側タップが複雑ですし、日本製にも2次側が0−4−8−16Ωとなかなかそろっていません。KNFBや1次側インピーダンスの見かけ上の変更をするのに便利なんですが残念です。