次にドライバー段です
初段はペアマッチドFETの2SK389GRとし,カスケード用にNPN Tr 2SC1222(Vcbo=50v),ドライバ段に2SC1480(300v)を使用しました。
ファイナルを真空管式とする場合pnp-Trに該当するものがありませんので、回路構成上、上下対称形式より、差動アンプ形式が都合がよいので採用しました。
OTLなどの場合でも2電源式にすると半導体ドライブは具合がよいので習得しておくと設計の幅が広がります
@初段差動カスケード
2SK389GRの差動アンプにnpn-Trでカスケードしたものです。
初段差動カスケードのゲインはRL*gmで求められます。
2SK389GRのドレイン電流4mAにおけるgmを10mυとすると
2200(RL、Ω)*0.01(gm、2SK389GR 4mA)=22
で、差動片側だけしか使いませんので約10程度となります。
カスケード接続の理論は各種文献を見ていただくとして、考え方は通常のソース接地のドレイン負荷にベース接地エミッタ入力のバッファ−が追加されたもので、フロントのドレイン出力が吸い込み型の電流出力になったものです。上側トランジスタのベースがツェナーで固定され、上側トランジスタのエミッタと2SK389のドレインが−0.6vほど低い電圧で一定となります。このため2SK389のドレインの出力電圧がほとんど変化しませんのでCob*ゲイン=ミラー効果の影響が劇的に軽減されます。負荷の変換は上側ベース接地アンプが受け持ち負荷抵抗(2200)Ωで電圧振幅に変えます。
ソース側の定電流源ですが、簡単にツェナーとnpnTrで8mAを作っています。半導体アンプの設計のセオリーとしては、基本的には初段の電流値を決め最大振幅が得られるようにカスコードアンプのコレクタにおいて所要電源の1/2前後になるよう負荷抵抗を計算します。Vcc=24Vのとき12V前後になるようにするものです。
ただ今回は、後段のpnp差動段との兼ね合いで所要振幅が得られる程度に、Vccへシフトして設計しています。真空管をドライブする上では,後段の振幅を最大にとれるように,できる限りVccへ近いほうがよいのです。
2段目の2AS1480-pnp差動回路はエミッタ抵抗を追加して電流帰還をかけたもので,適切な増幅度と帯域を確保したものです。
また同時に真空管が要求するマイナス側のグリッドバイアス電圧へオフセットさせたものです。万一このpnp段が壊れたときでもグリッドバイアスがコレクタ抵抗を介してマイナス電圧へ引かれ、真空管をカットオフさせます。
ここではエミッタ抵抗とコレクタ抵抗の比がゲインとなります。当初はコレクタ負荷抵抗を27K程度としていましたが、2AS1480の発熱が多めなので43kΩへ変更しました。放熱器を一回り大きめにして20kΩ前後とした方がゲイン配分も帯域特性もよくなります。
27k÷1k=25倍前後
43k÷1k=40倍前後
となり、初段差動カスケード段i以降、約250〜400倍のゲインが得られます。
一見するとありすぎるように見えますが6080の所要入力電圧には300Vp-pほど必要ですのでNFBを6dBもかければあまり余裕はないのです。
この結果、0.5v〜1V前後でフルドライブとなります。真空管で作ったのではこうは簡単にいきません。
...半導体DCアンプが興隆した当初(1970年代後半)から10年くらいは2段目をフルゲインとしてファイナルのダーリントンコンプリメンタリ段から大量のNFBをかけていたものです。
どの半導体アンプ設計者も一度はOPアンプの内部等価回路を解析した覚えがあるのではないでしょうか。カレントミラー、差動アンプ、カスコード接続等々華麗な回路テクニックが使われています。
現代半導体アンプの原点はOPアンプで、μA741(フェアチャイルド)の内部等価回路を初めて見たとき ”なぜこのようにしたのか???” でした。後年(1991年)設計者の手記が日経エレに掲載されたときにその開発経緯が書かれており設計者でないとわかりえない点が氷解した記憶があります。
参考書の助けが必要ですがぜひご自身で解析してみてください。
|