ことば日記(2004年)

作成日:2004-01-04
最終更新日:

このページでは、2004年、日々、気付いたことばについて記録する。 2003年以前は「日々のことば」としてまとめている。


または

休みによく行く駅ビルがある。その駅ビルのトイレの案内は、昔次のようになっていた。

当ビルのトイレは2階または3階にあります

私は長らく、この表示に戸惑っていた。なぜ「または」なのだろう。 どちらか選択していかなければいけないのか。選択するのは当然だが、2階にないときは3階にあるのか。 3階にないときは2階にあるのか。どちらか片方しかないのか。そんな勝手にトイレができたりなくなったりするのか。

現在はこの記述はなくなり、当ビルのトイレはこちらですとなり、2階と3階のそれぞれの場所を並記しているだけになった。 きっと私と同じことを考えた人が一人はいるのだろう(2004-12-30)。

葡萄の種類

最近、ある有名ホテルの宴会場で、ワインを飲んだ人から聞いた話である。 有名ホテルのワインを期待して、瓶のラベルを見た。 ラベルには、使った葡萄の種類について、「カベルネ・ソーヴィニヨン**」と書いてあった。 漢字2文字の熟語**とは何か。次のなかからあててほしい。

配合   中心   使用   主体  

その結果を聞いて、一同脱力した。(2004-12-19)

川柳

<『課長いる?』 返った答えは 『いりません!』>  これは、今年のサラリーマン川柳で1位になった作品である。 問は「居る」のつもりであったが、答が「要りません」になったところに面白さがある。

この句を見て、はるか20年以上昔を思い出した。 以前、「ことばについて」の 学生時代(1)−御教訓カレンダーで書いたことである。 これも、居ると要るのことばを掛けている。ということは、 このような言葉遊びは何度も再発見されているのだろう (2004-04-30)。

エンジェル係数

新聞を見ていたら、家計に占める子育て費用の割合が「エンジェル係数」という名前で紹介されていた。 このことばは初めて見たものではなかったが、改めてその語呂合わせのセンスに感心した。 そこで、同じように、いろいろな名前を考えてみた。

ノンデル係数
飲み代の割合
ヘンデル係数
クラシック音楽の享受にかける費用の割合
メンデル係数
園芸にかける費用の割合
ケンネル係数
ペットにかける費用の割合
スンデル係数
住居費の割合
ユンケル係数
**にかける費用の割合

(2004-03-07)

本日閉店

今年になって、近くの居酒屋が閉店した。こんな貼り紙が店先にあった。

長い間の御愛顧ありがとうございました。本日閉店いたしました。

この場合、本日がいつなのか、年月日を書いてもらわないと困る。確かに、今日も、明日も、ずっと閉店しているのだろう。 しかし、いつまで営業していたのかわからないので、ずっと気にかかる。

そういえば、小学生の頃、パチンコ屋が毎日「本日開店」という幟や札を掲げていたのを見て、不思議に思っていた。 今では普通の光景なので不思議に思うこともなくなったが、「本日閉店」の貼り紙を見て、 一挙に昔の疑問が蘇ってきたのだった。

関係ありそうでなさそうだが、知人の H くんがこんな話をしてくれた。 「Y さんはね、日本語にうるさいんだよ。あるとき俺が『今日の朝、こんなことがあったんだけれど』と切り出したら、 Y さんから『<今日の朝>ということばは日本語にはない。<今朝>といいなさい』と怒られたんだ」という。 私も Y さんを知っているが、そんな側面があったとはしらなかった。今からもう20年前の話である。 (2004-01-13)

宣伝としての外来語

広島で、気になった看板を見た。もっとも、それは広島固有のものというよりは、 全国に共通する現象のように思える。たとえば、こんな感じである。

coiffeur CROWN

coiffeur は美容師の意味のフランス語、CROWN は冠の意味の英語である。 どちらかの言語に統一しないと落ち着かないのではないかと思うが、 重箱読みや湯桶読みが定着している日本だから何でもありという気がする。

sozai-café

惣菜と飲みものを売っている店である。これを日本語風に惣菜と読ませるのは難しい。おまけに、 そうざい、と読ませるには、i にトレマをつけて、sozaï としなければいけないのではないか、 と私がいうと、つれあいも賛同した。しかし、つれあいが付け足していうには、ザ行音にzの文字はまず使わない、 とのことである。

Enjoy four season & feeling

これは、seasons でなければならないだろう。

あまりこんなことばかり書いてもいられない。天に唾するようなものだ。

さてそのあと、本屋に入った。 すると、私が以前買った本「ヒット商品を作るネーミング辞典」の続編が出ていた。 この辞典は、日常物や概念を著す単語に対して、それぞれの言語の読み方とスペリングが記されている。 標題の通り、宣伝広告に使うためのイメージにつけるものであり、語学のためのものではない。 本編は、日英仏独西露羅希である。続編は、英語のほか、オランダ語、ポルトガル語、韓国語、中国語、アラビア語である。 この続編を見て、悔しかった。続編には、ぜひともエスペラントを載せて欲しかった。 (2004-01-04)

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MARUYAMA Satosi