概要
「書籍化にあたって」から引用する。
(前略)本書は 株式会社 セガ にて行われた有志による勉強会用に用意された資料を日本評論社さんからのお声がけで書籍化したものです。(後略)
演習問題はなく、また参考文献の明示もない。
感想
セガといえばゲームの会社だ。ゲームと線形代数とくればグラフィクスに特化した線形代数を指向するだろうと思っていた。 だから、行列プログラマーのように行列式なんて格下に扱うだろうし、 仮に行列式を扱ったとしても計算に惑わされない 図形分野を通して学ぶ 線形代数入門のように帰納的な定義のみで扱い置換には触れないだろうとか、 クラメルの公式などコンピュータ計算には不向きだから触れないだろうとか、勝手に思い込んでいた。ところが、行列式はしっかり書かれている。 また置換にも補足で触れられている(しっかり転倒数も定義している)。さらに、 クラメルの公式も複数の節で扱われている(クラメルの公式は理論的考察に用いられることも脚注で明らかにしている)。思ったよりは工学というよりは理学に近い線形代数だ。
本書がグラフィクスを意識しているとすれば、回転の記述が充実していることだろう。第7講ではオイラー角が扱われている。ところで、Tait-Bryan 角はどう読めばいいのだろう。 タイト・ブライヤン角だろうか。それともタイト・ブライアン角だろうか。 最後の第8講では四元数が丁寧に解説されている。わたしは四元数を「よげんすう」と読むものとばかり思っていたら、本書で「しげんすう」と読むことを知った。 だから本書では四元数のことを「クォータニオン」で通しているのだろう。
【第2講】初等関数
p.27 で組合せの数について、「`n` 個の中から `k` 個を取り出す組合せの数」を表す `{::}_n"C"_k` ( `( n/k )` とも書かれる)となり
とある。
このカッコ内の注釈について、組合せの数は `((n),(k))` と表記する、すなわち分数のような中棒がない形で表記するのが一般的だと思われる。
スカラーとベクトル
pp.131-132 から [5.5.3] ベクトルの列ベクトルによる表示、という小項を引用する。
任意のベクトルは、ある基底の線形結合として表すことができ、列ベクトルはこの係数の組を各成分として縦に並べて表したものであり、 逆に列ベクトルの各成分による基底の線形結合の結果が元の(基底によらない)ベクトルとなると考えることができる。このことを定式化してみよう。
`n` 次元ベクトル空間 `U` の任意の元であるベクトル `x` が、`U` の任意の基底 \( B = \{ \boldsymbol{b}_i \} \) (\( \boldsymbol{b}_i \) の集合 ) の線形結合として \( \boldsymbol{x} \)`= sum_(i=1)^n` \( \boldsymbol{b}_i \) `x_i^B` と表されているとき*4、 この係数 `x_i^B` を用いてベクトル \( \boldsymbol{x} \) の基底 \( \{ \boldsymbol{b}_i \} \) に対する列ベクトル表示 \( \boldsymbol{x}_B \)`= [[x_1^B],[vdots],[x_n^B]] in RR^n` を得る。
逆に基底 \( \{ \boldsymbol{b}_i \} \)の各ベクトルを各成分にもつ「行ベクトル」\( (\boldsymbol{b}_1 \cdots \boldsymbol{b}_n) \) と列ベクトル \( \boldsymbol{x}_B \) との積として以下のように基底の線形結合としてのベクトル `x` を得る。
\[ ( \boldsymbol{b}_1 \cdots \boldsymbol{b}_n) \boldsymbol{x}_B = (\boldsymbol{b}_1 \cdots \boldsymbol{b}_n) \begin{bmatrix} x_1^B \\ \vdots \\ x_n^B \end{bmatrix} = \sum_{i=1}^n \boldsymbol{b}_i x_i^B = \boldsymbol{x} \in U \] (ここで `x_i^B` の右肩および \( \boldsymbol{x}_B \) の右下の `B` は基底 `B` に対する表示を示し、 また「`U` 上のベクトルを成分に持つ行ベクトル」として丸括弧を用いている。)以上により列ベクトル `x_B` は `U` 上のベクトルの基底 `B = {b_i}` に対する `RR^n` 上での表示となる。
p.131 の脚注には、*4 線形結合の係数である成分を基底であるベクトルの右に書くのには理由があり、すぐあとでわかる。
とあり、本当にあとでわかるのかと思った。
うーん、こうやって行列表示でみると、右側から成分(スカラー)をかけるのもわかるように気がしてきた。
MathJaxを用いている。
書誌情報
| 書名 | セガ的基礎線形代数講座 |
| 著者 | 山中勇毅 |
| 発行日 | 2025 年 3 月 5 日 第 1 版 第 5 版 |
| 発行元 | 日本評論社 |
| 定価 | 2700 円(税別) |
| サイズ | |
| ISBN | 978-4-535-79030-8 |
| NDC | |
| その他 | 越谷市立図書館にて借りて読む |