直交関数列

作成日:2013-09-07
最終更新日:

関数が直交するとは

ふつう、直交という概念は図形に関していう。イメージとしては、二つの直線が交わっているとき、 そのなす角が直角であることをいう。 角度という量は数学では扱いにくいため、角度に関係する量として内積が扱われることが多くなった。 内積は図形だけでなく関数にも適用できる。具体的には次のようになる。

関数列 `phi_n(x) quad (n = 0, 1, 2 cdots) ` が 区間 `(alpha, beta) quad (-oo <= alpha < beta <= oo) ` で定義されているとする。このとき、内積`(: phi_n(x), phi_m(x) :)`を次で定義する。

`(: phi_n(x), phi_m(x) :); = int_alpha^beta phi_n(x) phi_m(x) dx`

この内積が 0 となるとき、`phi_n(x)` と `phi_m(x)` は直交するという。

また、関数列 `phi_n(x)` とある関数 `w(x)>=0` に対し、`{sqrt(w (x)) phi_n(x)}`が直交関数列をなし、

`{int_alpha^beta w(x) phi_m(x) phi_n(x) dx = 0 quad (m != n)}`

となるとき、この関数列を重み `w(x)` の直交関数列という。

一般に直交関数は係数分の不定性がある。この不定性を解消するための一つの方法として、ノルムを 1 になるように決めればよい。すなわち、

`int_alpha^beta w(x) |phi_n(x)|^2 dx = 1`

となるように決めればよい。このような `phi_n(x)` を特に正規直交関数列と呼ぶ。

なお、以下の直交関数列では係数の正規化はしていない。

直交関数列の分類

直交関数列には、大別すると次のように分類される。

以下は直交多項式について述べる。

ゲーゲンバウアー多項式

ゲーゲンバウアー多項式 `C_n^((alpha)) (x)` とは、区間 [-1,1] 上で定義される重み関数 `(1-x^2)^{alpha-1/2}` の直交多項式をいう。 この多項式は、チェビシェフ多項式ルジャンドル多項式などを一般化した多項式として知られている。 漸化式を用いた定義は次の通りである。

`C_0^((alpha)) (x) = 1`
`C_1^((alpha)) (x) = 2 alpha x`
`C_n^((alpha)) (x) = 1/n [2x ( n + alpha - 1) C_(n-1)^((alpha)) (x) - (n + 2 alpha - 2) C_(n-2)^((alpha)) (x)]`

ここで、`alpha = 1` とした漸化式 `C_n^((1))` は、 第 2 種のチェビシェフ多項式を表す。代入してみると、実際に満たしていることがわかる。

`C_0^((1)) (x) = 1`
`C_1^((1)) (x) = 2x`
`C_n^((1)) (x) = 1/n [2x n C_(n-1)^((1)) (x) - n C_(n-2)^((1)) (x)] = 2x C_(n-1)^((1)) - C_(n-2)^((1)) (x)`

また、`alpha = 2` とした漸化式 `C_n^((2))` を書き下すと次のようになる。
`C_0^((2)) (x) = 1`
`C_1^((2)) (x) = 4x`
`C_n^((2)) (x) = 1/n [2x (n + 1) C_(n-1)^((2)) (x) - (n + 2)C_(n-2)^((2)) (x)] `

具体的には次のようになる。

`n``alpha=1``alpha=2`
0 `1` 1
1 `2x` `4x`
2 `4x^2 - 1``12x^2-2`
3 `8x^3 - 4x``32x^3 - 12x`
4 `16x^4 - 12x^2 + 1``80x^4 - 48x^2 + 3`
5 `32x^5 - 32x^3 + 6x``192x^5 - 160x^3 + 24`

また、`alpha = 1/2` とした漸化式 `C_n^((1//2))` はルジャンドル多項式となる。


ゲーゲンバウアー多項式のグラフ

上記のグラフを色分けした。左は `alpha=1` の場合、右は `alpha=2` の場合である。色と次数 `n` の関係は次の通り。 黄:`n = 0`、橙:`n = 1`、赤:`n = 2`、緑:`n = 3`、青:`n = 4`、紫:`n = 5` である。縦軸のスケールが左右で異なることに注意。

ヤコビ多項式

ゲーゲンバウアー多項式のさらなる一般化はヤコビ多項式として知られる。 ヤコビ多項式 `P_n^{(alpha, beta)} (x)` とは、区間 [-1,1] 上で定義される重み関数 `(1+x)^alpha(1-x)^beta (alpha, beta > -1)` の直交多項式をいう。 漸化式を用いた定義は次の通りである

`P_0^{(alpha ,beta )}(x)=1`
`P_1^{(alpha ,beta )}(x)=1/2 {(alpha+beta+2)x + (alpha - beta)}`
`(2n+1)(n+alpha +beta+1)(2n+alpha+beta)P_{n+1}^{(\alpha ,\beta )}(x)=`
`(2n+\alpha +\beta +1) {(2n+\alpha +\beta )(2n+\alpha +\beta +2)x +\alpha ^2-\beta ^2} P_n^{(\alpha ,\beta )}(x) -2(n+\alpha)(n+\beta)(2n+\alpha +\beta+2 )P_{n-1}^{(\alpha ,\beta )}(x)`
`(n = 1, 2, cdots) ` 。


数式とグラフの表現

数式の記述にはASCIIMathML を、表現にはMathJaxを使っている。

グラフは ASCIIsvg を用いている。以前はグラフも ASCIIMathML を使っていたが、現在は MathJax との干渉があるため使っていない。

文献

リンク

  1. 直交多項式 (ja.wikipedia.org)

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