梅田 亨:森毅の主題による変奏曲(下)

作成日:2018-05-04
最終更新日:

概要

著者の梅田氏曰く「結果,森さんの全体像など捉えるのは無理だと悟り,森さんをサカナ(ネタ)として自分の思うところを述べることにしたのである.」

感想

想い出

私も梅田氏のように、森さんをサカナにして自分の昔のことを思い出してみた。

かつて、私は受験生だった。そのときは予備校にはいかず、家庭教師などはとんでもなく、 模擬試験も自分の親に出してもらって受けたものは2回しかなく、 高校に通うほかは貧乏人の味方だった大学受験ラジオ講座を聞くだけだった。 数学講座は定期的に同じ先生が出る時間帯がほとんどだった。たとえば、寺田文行先生や勝浦捨造先生、樋口禎一先生、岡部恒治先生たちだった。 そして夏休みなどは単発でゲストを迎えることもあった。 その一人が森毅先生だった。おそらく、対数の授業をしたのではなかったかと思う。不思議な感じだったというのが第一印象だった。 まず、講義の間に音楽を挟むのである。どんな音楽だったか覚えていないが、演奏者にQが入っていたジャズだったような気がする。 そうなるとMJQだろう。だとすると曲は「ジャンゴ」だったのかな。勝手に想像している。

さて、講義の内容はすっかり忘れていたが、今回の本を見て、たぶんこんな講義だったのではないかということを想像した。 以下、p.240 から引用する。

そんな中、森さんの文科系学生向け講義「数学4」で,`2^10 = 1024 ≒ 10^3` という計算から,常用対数で `log_10 2` が約 0.3 だということを聞く. こんな簡単なことが,私には体感できていなかったのだ.

一般二項定理

(ニュートンの)一般二項定理ということばが pp.241-242 に登場している。式は書かれていないのでここで補足する。 一般二項定理とは非整数(非自然数)ベキに対する二項定理であり、次のとおりである。`x` を `norm(x) lt 1` なる複素数とする。また `alpha` を実数とする。

`(1 + x)^alpha = 1 + alpha x + (alpha (alpha - 1))/(2!) x^2 + (alpha(alpha-1)(alpha-2))/(3!) x^3 + cdots`

参考 http://blog.thetheorier.com/entry/binomial-approximate 

すばらしい新世界

オルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界』が出ている。最初は、p.274 の[註 5]で、 本文で epsilon を知性の低い人の意味で使うという字義を紹介していて、その注釈である。 そして、p.280 では、価値の一元化に抗うと題された項で、 大学入試に人格(のようなもの)を評価の対象にしようという議論に対して次のように憤っている。

たかだか大学に入るのに, どうして全人格を正確に評価してもらう必要があるのか. これが完成すると「非国民」が選抜の過程でハジカレル. オートメーション工場で不良品が「製品」に混じらないようにする,そんな姿が浮かぶ. 一体「製品」はどこに行く,何のために大学で作られる?

前回の註に弾いたハクスリーの『すばらしい新世界』も連想される事態. いや,もう沢山.息苦しい.恐ろしい幻想をもてあそぶと精神衛生によくない. 森さんに登場願って,なんとか解毒のきっかけを求めたい.

すばらしい新世界』がここで出てくるとは思わなかった。

誤植

誤植はないと思う。下記に記すのは誤植ではないと思いたい。

関連本

数式記述

数式は ASCIIMath で記述し、MathJax で表示している。

書誌情報

書 名 森毅の主題による変奏曲(下)
著 者 梅田 亨
発行日 2018 年 3 月 30 日
発行元 日本評論社
定 価 3200 円(本体)
サイズ
ISBN
NDC 410

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MARUYAMA Satosi