サブタイトルは、「結果から原因を探る数学」
昔学んだ物理を思い出した。グラフを自分でも書いてみた。 上からレイリー・ジーンズの放射公式(赤色)、プランクの放射公式(緑色)、 ウィーンの放射公式(青色)である。
逆問題の守備範囲は広いと思っているが、まさか恐竜絶滅の原因に逆問題が出てくるとは思わなかった。 また、モロゾフの食い違い原理についてはこの本で初めて知った。これも面白い。以下は第7章の私なりの理解である。
この章ではチホノフの正則化法とモロゾフの食い違い原理を説明しよう、 まず、逆問題を解くときにたいてい現れるのは問題の非適切性である。 これを解決するための一つの方法がチホノフの正則化法である。
連立一次方程式を `A bbx = bb b` として記述する。これと等価な方程式は `abs(A bb x - bb b) ^2 = 0 `を解くことである。 この考えを広げて、`J = abs(A bbx - bb b) ^2 + alpha abs(bb x)^2` を最小にすることとしてとらえる。`alpha = 0` であれば当初の連立方程式である。 この `J` の最小化がチホノフの正則化法であり、`alpha` を正則化パラメータという。そして、`alpha` を定めたときの解 `bb x_alpha` をチホノフ正則化解という。
次にくるのは `alpha` をどのように決めるべきか、という問題である。
一つの考え方は、`bb b` の誤差の程度 `delta` と関連させるものである。
具体的には、`abs(A bbx_alpha - bb b) = delta` となるように `alpha` を選ぶというものである。この原理をモロゾフの食い違い原理という。
`delta` は観測で決められる。たとえば、`bbb = (3.6, 3.8)` と観測されたとしよう。
この観測値は小数点第1位での誤差が 0.1 ずつあると考えられる。たとえば、`bbb = (3.5, 3.9)` となってもおかしくないわけだ。
そこで、具体的に値を代入すると
`delta = sqrt((3.6-3.5)^2 + (3.8-3.9)^2) = sqrt(2) / 10 = 0.14142 cdots`
となる。
以上が第7章の一部である。私にとって面白かったのは、p.198 で位相論におけるチホノフの定理が紹介されていたからである。また、 p.199 でショスタコービッチの交響曲についても言及されている。
オヤジギャクの多さにもわたしはたじろぐことはなかった。わたしもオヤジだからだ。
書 名 | 逆問題の考え方 |
著 者 | 上村 豊 |
発行日 | 年 月 日 |
発行元 | 講談社 |
定 価 | 円(本体) |
サイズ | |
ISBN |
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