表題作を含め、計 10 篇を収める小説集。 目次は次の通り。
装丁は亀海昌次。
《『饗宴』問答》は、後藤明生コレクション 4 に収められている。
本書では、作者自身のようにみえる G という人物が出てくる。この G は、手紙では「ぼく」といっている。それがなぜかおかしい。
この作品には、イニシャルがやたらと多く出てくる。イニシャルが出てくると、つい、このイニシャルは実在の人物の誰なのかを詮索してしまう。
そんなことはどうでもいいのだが、私は俗物だから気になってしまう。たとえば、p.7 ではKは、あのチェコの作家の方のKではない。日本の小説家のKである。
と語られている。チョコの作家のKといえば、ふつうはあのKのことを思い浮かべる。しかし、わざわざ隠しておくのである。なぜだろうか。そのくせ、
p.30 では、世代病の話題が出てきて、そのとき、世代病と同時に説明されていたのがマルクス病だった。マルクスは隠しておかないのはなぜだろうか。
この小説では、香水がなかなか出てこない。最後の段落でやっと登場する。はぐらかされた思いがしたが、香水が印象に残るということでこうした仕掛けをしたのだろうか。
作者の後藤明生はロシア文学に詳しいので、読者がロシアの小説を知っていることは当然と思っているのだろう。私はロシア文学をまるで知らないので困る。
p.64 で、ある女性を見て、例えば、スタヴローギンを女にしたような、
と描写している。
わたしはスタヴローギンとは何者か知らない。調べてみて、ドストエフスキーの「悪霊」の主人公だとわかった。「悪霊」を読む日が私には来るのだろうか。
文中に「ポツダム中尉」ということばが出てくる。調べてわかったことは、日本の陸軍や海軍がポツダム宣言受諾後に軍人の階級を一つ進級・昇進させたことがありこれが「ポツダム進級」とか「ポツダム昇進」 と呼ばれたこと、この進級によって少尉になった者が「ポツダム少尉」と呼ばれたこと、などだった。それにしてもこの「饗宴」は、もちろんプラトンの「饗宴」の話も出てくるが、 あちこちに話が飛びまくっていて、ついていくのが大変だ。
現在まとめ中。なお、後藤には斎藤忍随との対談集<「対話」はいつ,どこででも>がある。
本文から察するに、「海援亭」とは博多のラーメン屋であるようだ。p.141 では間もなく、二人が向かい合ったラーメン屋のテーブルの上には、ウイスキーのミニボトルが四つ置かれた。
とある。ウイスキーのミニボトルは、どれだけはいっているのだろう。すぐあとでは、ミニボトル一個で水割り約二杯分と勘定して、最初から四個注文したのである。
と続く。
インターネットでは、ウイスキーには、50ml がミニチュアボトルで、200ml がベビーボトルとある。また、ウイスキーの水割りの作り方の別のインターネットのページには、
おいしい水割りを作るにはウイスキー 30ml を用意するとある。ということは、ここのミニボトルは 50ml か。
書名 | 汝の隣人 |
著者 | 後藤明生 |
発行日 | 1983 年 11 月 10 日 (初版) |
発行元 | 河出書房新社 |
定価 | 1300 円(本体) |
その他 | 草加市立図書館で借りて読む |
まりんきょ学問所 > 読んだ本の記録> 後藤 明生:汝の隣人