岩波講座 現代物理学の基礎6 統計物理学

作成日:2021-09-28
最終更新日:

概要

序を見ても本書の内容をまとめるのが困難だったので、章立てでまとめに替える。

  1. 一般的な予備的考察
  2. 統計力学のアウトライン
  3. 具体的応用
  4. 相転移
  5. Brown 運動
  6. 確率過程としての物理的過程
  7. 緩和現象と共鳴吸収
  8. 線形応答の統計力学
  9. 統計力学における場の量子論の方法
  10. エルゴードの問題

感想

この本を読んでわかるところは皆無である。一応、見たところを引き写す。第6章 p.270 である。

 §5.7 では現象論の立場から Langevin 方程式の拡張を試みたが, ミクロな立場からのその基礎づけは森によって与えられた. これは §6.5 に述べた減衰理論の方法で力学量の運動方程式を Langevin 方程式の形に変形し, これに確率的解釈を与えるものである.

ここで森によってというのは、物理学者の森肇のことを指しているものと思われる。

次は第9章 p.384 である。

 前節ではユニタリー演算子 `e^(-itccH//ℏ)` と密度行列 `e^(-itccH//ℏ)` との類似性を利用して, 前者の摂動展開の公式を後者に引き写した.前者では因果 Green 関数を使って摂動展開のダイヤグラム技法が考案された. 時間の代りに温度の逆数に当たる変数 `tau` へと因果 Green 関数を翻訳したのは松原であった.

この翻訳した松原とは、物理学者の松原武生のことだろう。 松原は同じ岩波の現代物理学の基礎の 7 巻「物性Ⅰ」の執筆者でもある。

次に見たところを引き写す。第10章 p.435 である。古典力学系の中でエルゴード性をもつ数学的モデルに関する説明である。

 円周の長さが 1 の円を考える. 1 点から測った弧の長さを `x` とすると円周上の点は `x (mod 1)` で定義される. `phi` を円周上の平行移動 `x -> x + omega (mod 1)` とする. ここで `omega` は実数値をとることにする. すると `omega` が無理数であるとき,そしてそのときに限り, `phi` の軌道は円周上至るところ密であって,エルゴード的である.

表現は違うが、この事実は数学ではワイルの一様分布定理(均等分布定理)として知られている。 このワイルの定理については、ワイル自身の感想が小平邦彦の「怠け数学者の記」で述べられている。

ぜんぜん関係ないが、至るところ密であってという表現を見て、 思わず驚いてしまった。これも、2020 年からのコロナ禍のせいだ。

数式記述

このページの数式は MathJax で記述している。

書誌情報

書 名岩波講座 現代物理学の基礎6 統計物理学

著 者戸田盛和, 斎藤信彦, 久保亮五, 橋爪夏樹
発行日1972 年 9 月 12 日 第1刷
発行元岩波書店
定 価1400 円(本体)
サイズA5版 482 ページ
ISBN
その他越谷市立図書館にて借りて読む

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MARUYAMA Satosi