序を見ても本書の内容をまとめるのが困難だったので、章立てでまとめに替える。
この本を読んでわかるところは皆無である。一応、見たところを引き写す。第6章 p.270 である。
§5.7 では現象論の立場から Langevin 方程式の拡張を試みたが, ミクロな立場からのその基礎づけは森によって与えられた. これは §6.5 に述べた減衰理論の方法で力学量の運動方程式を Langevin 方程式の形に変形し, これに確率的解釈を与えるものである.
ここで森によって
というのは、物理学者の森肇のことを指しているものと思われる。
次は第9章 p.384 である。
前節ではユニタリー演算子 `e^(-itccH//ℏ)` と密度行列 `e^(-itccH//ℏ)` との類似性を利用して, 前者の摂動展開の公式を後者に引き写した.前者では因果 Green 関数を使って摂動展開のダイヤグラム技法が考案された. 時間の代りに温度の逆数に当たる変数 `tau` へと因果 Green 関数を翻訳したのは松原であった.
この翻訳した松原とは、物理学者の松原武生のことだろう。 松原は同じ岩波の現代物理学の基礎の 7 巻「物性Ⅰ」の執筆者でもある。
次に見たところを引き写す。第10章 p.435 である。古典力学系の中でエルゴード性をもつ数学的モデルに関する説明である。
円周の長さが 1 の円を考える. 1 点から測った弧の長さを `x` とすると円周上の点は `x (mod 1)` で定義される. `phi` を円周上の平行移動 `x -> x + omega (mod 1)` とする. ここで `omega` は実数値をとることにする. すると `omega` が無理数であるとき,そしてそのときに限り, `phi` の軌道は円周上至るところ密であって,エルゴード的である.
表現は違うが、この事実は数学ではワイルの一様分布定理(均等分布定理)として知られている。 このワイルの定理については、ワイル自身の感想が小平邦彦の「怠け数学者の記」で述べられている。
ぜんぜん関係ないが、至るところ密であって
という表現を見て、
思わず驚いてしまった。これも、2020 年からのコロナ禍のせいだ。
このページの数式は MathJax で記述している。
書 名 | 岩波講座 現代物理学の基礎6 統計物理学 |
著 者 | 戸田盛和, 斎藤信彦, 久保亮五, 橋爪夏樹 |
発行日 | 1972 年 9 月 12 日 第1刷 |
発行元 | 岩波書店 |
定 価 | 1400 円(本体) |
サイズ | A5版 482 ページ |
ISBN | |
その他 | 越谷市立図書館にて借りて読む |
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