小平 邦彦:怠け数学者の記

作成日 : 2017-10-31
最終更新日 :

概要

世界的数学者である小平が残した、数学への提言やプリンストン高等研究所の滞在記など。

感想

昭和60年の開成中学の算数の入試問題がある。これが面白い、というのではないが、 小平がこれを解いて実際の制限時間内の 60 分ではついに解けなかった、 とある。なんだかおかしい。

何度か Z 教授の言として引用されていることばもおかしい。人間は決断するときには胃袋を用い、 その決断を正当化する理屈を考えだすときに頭を使う、というものである。最近、人の意見を聞くときはこのことばを絶えず念頭に置いている。

難しくなった数学

p.169 にワイルの定理についての言及がある。ワイルが行なった数学史の講義の何回目かの話である。

任意の無理数 `theta` に対して無数の点 `e^(2npiitheta)` ( `n` は整数 ) が単位円周上に一様に分布する、というワイルの定理に言及して、 われわれ聴衆に向かって「私が若かった頃にはこんな簡単な定理が大発見でした。今は数学が難しくなってあなた方若い人は大変ですね」と言われた。

数学に限らず、今は何にせよ、若い人には大変な時代だと思う。ここでいうワイルの定理とは、 一様分布定理とか均等分布定理などと呼ばれているもので、私には簡単には思えない定理である。

怠けに関する本

数式記述

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書誌情報

書名怠け数学者の記
著者小平 邦彦
発行日1990年 9月 1日(第1刷)
発行元岩波書店(岩波現代文庫)
定価1000 円(本体)
サイズ 版 ページ
ISBN4-00-603019-3
NDC

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MARUYAMA Satosi