D.A.ノーマン : 誰のためのデザイン? 増補・改訂版

2026-04-18

概要

原題は "THE DESIGN OF EVERYDAY THING"。本書では DOET の名前で参照している。

初版の増補・改訂版である。

感想

要再読である。

本書のあちこちで「そうだよな」と同感する。それぐらい、おもしろい本だ。

リターンキーとエンターキー

あとで書きます。

スライド

「第3章 頭の中の知識と外界にある知識」から「文化とデザイン―自然な対応付けは文化によって変わる」という節(pp.165-170 )を読んだ。 著者が講演中にスライドを次に進めようとして、リモコンにある上のボタンを押したらスライドは後に戻ってしまった、 というエピソードから始まっている。著者はさらに文化による違いを、ある極端で、だが興味深い例を挙げて述べている節だ。

私も似たような経験をしたことがある。WEB 上で雑誌を読むサービスをAとBの2種類契約している。 このAサービスとBサービスでページを右にめくるの操作が正反対だ。Aはマウスのホイールを手前から向こう側に回転させるが、 Bはホイールを向こう側から手前に回転させる。どちらが心的に正しいか、よくわからない。

同じことはブログを時系列的に見るときにも起こる。A社の提供するブログでは、過去のブログを見るときに左側のリンクやボタンをクリックするが、 B社の提供するブログでは逆で、過去のブログを見るときには右側のリンクやボタンをクリックすることになっている。なぜだろう。

蛇口

「第4章 何をするかを知る - 制約、発見可能性、フィードバック」で取り上げられている話題に、蛇口がある。p.207 からの p.215 までに、いろいろな場合が載っている。 著者は p.214 で一つの蛇口で水の流量と温度を同時に制御するデザインについて、こういっている。

もし蛇口メーカーのすべてが、流量と温度の層さの動きの標準化に同意したら (上げ下げを流量制御として上げると増えるようにし、左右を温度制御にして、左が熱くなるとするのはどうだろうか)、 我々は標準を一度だけ学べばよい。そして以後出会うすべての蛇口で、その知識をずっと使えるのである。

私の家の台所や洗面所の蛇口はまさにこうなっている。ただし浴室は別の構造だ。

日本では 1997年に下げ止め式(上げると増える=下げると止まる)への統一が決まった。なお、上げ止め式がなくなったのは阪神淡路大震災が起こったから、 というのは都市伝説であるらしい。下げ止め式への統一は阪神淡路大震災前からあったという。

無音と電気自動車

同じく第4章で取り上げられていた話題に、電気自動車がある。p.218 から「無音が危険なとき」で始まるこの項では、電気自動車が原理的な静かなことによっておこる不具合を示している。 つまり、眼の見えない人は通行中に道を横切る際、車の音を頼りにしているのである。これは彼らが安全に渡れるタイミングを知る方法なのである。とある通りだ。 確かにそうだ。しかし、今までの車の騒音を野放しにしてもいいというものでもないだろう。だいたい、歩行者の通行路が完全に車道と分離されていれば、このような心配は起こらないはずなのだ。 なぜ弱者である眼の見えない人が、強者である自動車や運転手におもねらないといけないのだろうか。宇沢弘文の自動車の社会的費用を読んで、つくづくそう思う。

ちなみに、この項は、事項索引を見ると「無音の問題」として pp.217-223 にあると明示されている。しかし、事項索引で「自動車」を見ても該当するページは見つからない。 「電気自動車」に至っては事項索引そのものがない。 本文を読むのに頭を使わないといけないのはもちろんだが、索引の探し方も頭を使わないといけない。

タイマー

「第7章 ビジネス世界におけるデザイン」の p.403 では、次のエピソードが紹介されている。

1920 年代、メーカーは故意に製品が旧式になるようにしていた(かなり昔からこのやり方はあった)。 製品は一定の寿命を持つように組み立てられていた。自動車は壊れるようにデザインされていた。 ヘンリー・フォードの話に、スクラップとなったフォード車を買ってエンジニアに分解させ、どれがダメでどれがまだしっかりしているかを調べさせた、というのがある。 エンジニアは、これは弱い部品をみつけ、それを強化するためだと思った。 いや違う、まだしっかりしている部品がどれかを知りたいのだ、とフォードは説明した。 それらの部品が他の部品と同じ時期に壊れるように再設計できれば、会社はコストを削減できるだろう。

この話を聞いて、私は日本の某会社を思い出した。その会社の商品の壊れやすさ(正確には、商品の保証期間終了後すぐに壊れること)を皮肉って「○○タイマー」とまで言われていたのだった。某会社の設立はフォードよりずっとあとだから、 これからすぐ壊れる商品を見つけたら「フォードタイマー」と言わねばならない。

書誌情報

書名 誰のためのデザイン? 増補・改訂版
著者 D.A.ノーマン
発行日 2017 年 6 月 20 日 初版第 4 刷
発行元 新曜社
定価 3300 円(本体)
サイズ A5 版
ISBN 978-4-7885-1434-8
その他 草加市立図書館で借りて読む