苦情対応マネジメントシステムの指針 JIS Z 9920


作成日:2002-08-19
最終更新日:

廃止された JIS Z 9920

本稿の主題である JIS Z 9920 は廃止された。 このページは参考のために残しておくが、 現在は、 JIS Q 10002 品質マネジメント−顧客満足− 組織における苦情対応のための指針になったことを注意しておく。 以下は、2002年8月19日現在の記述である。

JIS Z 9920 について

日本で JIS となっているマネジメントシステムは、多くは英語を原文とする ISO からの邦訳である。 特に ISO 9000 シリーズは認証取得というハードルがあるため、取得をしようとする組織の担当者は その語句に敏感にならざるを得ない。英語に対するアレルギーの少ない担当者は、 原文と邦訳を比較して、その結果 JIS の訳に問題があることを見い出す。しかし、 JIS の訳はそう簡単には変わらない。どのように変えるべきなのか。いや、その前に、 邦訳に対する苦情が受け付けてもらうためには、どこに、どのような手続きをすればいいのか。 否、そんなことは無駄なのか。JIS の訳がよりよくなる保証はあるのか。

この前振りは、二重の意味を持つ。一つは、 「苦情対応マネジメントの指針」という、利用者から組織への「物言い」に対する、 組織の受け止め方や関与の仕組が存在するということ、そして そのあるべき姿が JIS によって提示されている、ということである。 もう一つは、この「苦情対応マネジメントの指針」は、因って立つ ISO は存在せず、 日本語で一から書かれた指針である、ということだ。 もっとも、苦情対応マネジメントとして標準化されている例は過去にもある。 オーストラリアの AS4269 や、英国の BS8600 がそうである。

さて、この指針の目的は何かというと、企業、団体等の組織が、消費者苦情に適切かつ迅速に対応し、 消費者の満足度を高めることである。いいかえれば、

この規格は、組織が製品(消費者に提供することを意図した有形・無形の商品で、 サービス、ハードウェア、ソフトウェア及びこれらを組み合わせたもの。) にかかわる苦情を申し出る人の権利を守り、迅速に対応し、 公平に解決するために必要な要素を示し、 組織における苦情の受付から対応の終了に至る苦情対応マネジメントシステムに適用する。

とされている。指針の主な内容は次の通りである。

  1. 組織の最高責任者は、苦情対応マネジメントシステムを構築する。
  2. 苦情対応責任者は、苦情対応を迅速・確実、かつ公平・透明に実施するために、 苦情に不可欠な要素を含む活動を文書化する。
  3. 組織は消費者に対して情報を適切に伝える活動をする。 (以上が苦情対応マネジメントシステムの構築)
  4. 苦情対応の要素として、公平性、透明性、苦情申し出の容易性、支援、情報提供活動、 応答性などを規定している。

実際の指針は、経済産業省の 報道発表資料にある。これは、章・節・項の番号を除いて、実は JISZ9920 そのものである。

この規格は指針であり、まして認証取得をする性格のものでもない。各組織がこの指針に従って、 苦情対応に対する仕組みを作り、他のマネジメントシステムと同じくよりよい運用をすればそれでよい。 もっとも、組織の中にはこの指針に従って構築した苦情対応マネジメントシステムに対して、 第三者認証を取得したところがある。みずほフィナンシャルグループの中の、みずほ信託銀行である。 みずほグループは今年システムの不具合により多くの損害を個人や組織に与えたことを思い出すと、 なんとも皮肉である。

このマネジメントシステムの指針は、一部には評判が悪い。 曰く、こんな七面倒なことをグダグダ述べるより社長が「お客さんの苦情は宝の山だ」と述べればよい、 曰く、消費者からの申し出とは何ごとか、申し出ということばは組織がお客さんを見下している、 などなど。しかし、まだこの規格は 2000 年 10 月に出たばかりの(といってももうすぐ2年だ) 指針である。細かな表現に惑わされることもあるまい (なんといっても原文が日本語だ)。読んでみて必要な個所を探して、構築してみてはどうだろうか。

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MARUYAMA Satosi