「まえがき」から引用する。
本書は,自然言語処理と計算言語学の共通の研究対象である,ことばの意味を計算するしくみの理論について,わかりやすく解説することを目指したものです.
本文には練習問題がある。解答はない。
要再読である。
pp.11-12 の練習問題を引用する。
練習問題 2.2.1 次の英文はどのような曖昧性が生じるのか,考えてみよう.
(17) Jake saw her duck
(18) Susan told some woman that Bob liked the story
どちらもピリオドがないから文ではない、と言いきれればいいが。そうはいかないだろう。(17) は、her と duck がわからないとどうしようもない。duck をアヒルという名詞だと仮定すれば、 一つの可能性は、「ジェイクは彼女の(飼っている)アヒルを見た」となるだろう。もう一つの可能性は、duck を動詞とみて、「ジェイクは彼女が頭を(ひょいと)下げたのを見た」となるだろう。 私は、duck が動詞ならば(アヒルのように)よちよち歩く、と意味だと思ったが、そのような意味は duck にはないことが英和辞書を見てわかった。(18)は、わからない。
p. 14 の練習問題を引用する。
練習問題 2.3.1 次の文は曖昧である.どのような解釈が可能であるのか,考えてみよう.
(30) 花子は太郎より研究が好きだ.
(31) 私は太郎です.
(32) 父親の教育が重要だ.
(30) は、次の解釈が考えられる。まず、花子が好きな対象が、太郎と研究で比較される。そして、好きな対象は、研究のほうが太郎より強い、ということが一つの解釈である。 もう一つの解釈は、研究の主体として、花子と太郎を比較している。花子が研究の好きな程度・度合いが、太郎より強い、というのがもう一つの解釈である。
そこへいくと(31) の曖昧性がわからない。あえてあげれば、「あなたの名前は二郎ですか?」と聞かれた私が「(いえ、)私は太郎です。」と答える場面が考えられる。 別の場面として、誰かの名付け親になる可能性がある私が名前の選択肢を挙げられて、「あなたがいいと思う名前は?」と聞かれて「私は太郎で(いいと思いま)す。」と答える場面もあるだろう。 後者は苦しいが、有名なウナギ文「僕はうなぎだ」を思い出したので敢えて挙げてみた。
(32) は、次の解釈が考えられる。まず、教育とは人 A が 人 B にするという方向性を確認する。そして、第1の解釈は父親が A になり、父親がある誰かにする教育が重要だ、 ということになるだろう。ある誰かとは、「父親」ということばからして子供、つまり娘や息子にする教育のことだろう。 第2の解釈は父親が B になり、父親にある誰かが教育をすることが重要だ、ということになる。この場合に、父親に対して誰が教育をするのかはこの文脈からでは定かでない。
参考文献は 300 近く挙げられているが、日本語のものは 1 割に満たない。そのうち、 『斎藤康毅.ゼロから作る Deep Learning 2』 は借りて読んだことがある。 また、『萩谷昌己,西崎真也.論理と計算のしくみ』は読んだことがないものの、この本のもとになった次の2冊: 萩谷昌己.論理と計算と、萩谷昌己.ソフトウェア科学のための論理学は、 どちらも手許にある。
書名 | ことばの意味を計算するしくみ |
著者 | 谷中瞳 |
発行日 | 2024 年 10 月 9 日 第1刷 |
発行所 | 講談社 |
定価 | 3200 円(税別) |
サイズ | A5 版 |
ISBN | 978-4-06-536984-5 |
備考 | 越谷市立図書館で借りて読む |
NDC | 007.1 |
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