関数解析の文脈では、スペクトルという概念は必ずリゾルベントという概念と合わせて語られる。 にもかかわらず、本稿ではスペクトルのみを採り上げる。
スペクトル (エス:spektro 、英:spectrum ) は、数学では固有値の集合と説明される。一般にスペクトルとは物理のことばとして認識され、 分光に関する概念のもろもろをいう。
では関数解析でのスペクトルはどのようなものか、説明する。
ヒルベルト空間 `H` 上の有界作用素を `T` とする。
`T - lambda I` が逆作用素をもたないような複素数 `lambda` の集合を `sigma(T)` で表し、これを `T` のスペクトルという。
線形代数からの類推では、固有値は線形作用素の一種のツボのようなものだと思う。有限次元の線形代数では、`n` 次の行列の固有値はたかだか `n` 個であった。 では、関数解析ににおけるスペクトル `sigma(T)` の正体はどんなものだろうか。
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