フォーレ:リズムについて

作成日:2001-12-10
最終更新日:

1. フォーレの作品のリズム

フォーレはリズムについては革新的な発明を何も行っていない。 しかし、 古典的な枠内で試みているリズムの書法は洗練されている。 まずは、ヘミオラを例にとって考えたい。

2. ヘミオラとは

音楽用語の「ヘミオラ」の意味については、 ヘミオラの説明 を参照してもらいたい。 以前ここに書いたことは、誤りまたは曖昧な点があったので、お詫びする。

フォーレでも、ピアノ曲にいくつかヘミオラが使われている。 フォーレのヴァルス・カプリスは、 ショパンのワルツだけでなく、 スケルツォの軽さも多少しのばせている。 それゆえ、ヘミオラはヴァルス・カプリスでも 多く使われると予想される。 事実、第3番、第4番にはかなりの頻度で使われている。

その他、舟歌、 室内楽でも採用率が高いはずであるが、よく調べていない。

フォーレの作品がもつこれらの特性が、 本当に彼の個性であったかどうか、私にはまだ判断できない。 仮にそうであったとしても、 それがどのような因果で個性と認められるに至ったのかを証明する術を私は持たない。 フォーレが指導を受けたニデルメイエール音楽学校では、 教会旋法に基づく曲を教えられていたのは事実である。 だからといって、 それらグレゴリオ聖歌に拍子がなかったが故に自由なテンポ感覚を養うことができた、 というのは勝手すぎる気がする。 本当にそうかどうかは今の私にはなんともいえない。

3. ピアノ五重奏曲第2番のヘミオラ

この曲の分析はフォーレ通で名高い pierre さんが行っているので、 私がこれから述べることはヘビに足を書くようなものである。

この ピアノ五重奏曲第2番で不思議に思うことは、 全4楽章のうち、第3楽章を除いた残りの楽章で ヘミオラがかなりの頻度で使われていることだ。 第1楽章では、このヘミオラは影に隠れてなかなか目に付かない。そのなかで、 もっともよく認識できるのは次の個所である。

第2展開部の山というべき個所で、ハ長調の光がうつろいつつ輝く部分である。 (すみません、小節数がわかりません。練習記号 16 の6 小節前)。 ここでの第一ヴァイオリンは、2拍子である。 またピアノの音型も2拍が単位となるように聞こえる。ここでは、 3拍子という概念は希薄になっている。 そしてこの第一ヴァイオリンの2拍単位の音型は、 中声部に引き継がれる。 第一ヴァイオリンは、このあとで第一主題をリディアンモードで高らかに歌う。 この個所が織り成す綾は、何度聴いてもすばらしい。 このすばらしさのもとになっているのが、 ヘミオラではないかと思うのである。

このほかにも、ヘミオラはまだまだあるだろう。 第1楽章のビオラで提示される主題からして、 そのヘミオラの影を見る人がいるかもしれない。 (2002-04-09, 2007-03-18)

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MARUYAMA Satosi