それでは「三角縁神獣鏡は卑弥呼に贈られた鏡である」とする学説はどの程度検証されたものであろうか。驚くべきことに永年に亘り論争が行われてきたにも関わらず、学説の根本となる「三角縁神獣鏡は舶載(輸入)品である」ことが十分に検証されていない。今までに発見されている三角縁神獣鏡のうち良質の物は舶載(輸入)とみなされ、粗製のものは倣製(真似て作った)と見なされてきた。このような分類が適切であるかどうかの議論が尽くされていないのである。
そこで仮説検証法により、いわゆる舶載鏡の三角縁神獣鏡が卑弥呼の鏡であるかどうかを検証してみた。
仮説検証法において「良い仮説」は単純明快な仮説である。「悪い仮説」は複雑不明快な仮説である。極力単純明快な仮説に還元して真偽判定を容易にするべきである。
「三角縁神獣鏡卑弥呼の鏡説」を次の三つの仮説に分解する
倣製:倣の字は通常のテキストでは「にんべん」に「方」の文字が使われているが、第1・第2水準の漢字表にはない。