(注:この物語に出てくる試合結果は架空のものです)
今世紀最後のオリンピックが開幕しました。
準は、お父さんといっしょにサッカーの試合をテレビで見ています。
「オリンピックって、いつも真夜中とかにやってるのかと思ったら、そうじゃないんだねえ」
準が言いました。
「ハハハ、アメリカやヨーロッパでやったら、時差でそうなるんだよ。シドニーは時差が2時間だから、日本では見やすい時間になるんだ」
「ふうん。そういや長野も見やすい時間だったねえ。長野って時差ないの?」
「……」
今一つよくわかっていない準くんです。
そうこうするうちに、試合はどんどん進行していきます。お父さんと準は、日本チームの活躍に一喜一憂です。時には大きな声で歓声を上げる二人です。
試合は同点のまま、後半のロスタイムに突入しました。しかし、決着が付かないまま、主審が試合終了のホイッスルを吹きました。
「ねえ、同点だけど、これからどうなるの?」
準が訊きました。
「延長戦をやるんだよ。日本じゃサドンデス…いや、Vゴールと言っているやつだ。先に点を入れた方が勝ちなんだ」
「へえ」
「オリンピックじゃゴールデンゴールと言うらしい」
「ゴールデンボール?」
「ゴールデンゴールだよ。…ゴールデンボールじゃ、日本語に訳したら放送できないだろ」
「えっ。キャハハハ、そうだね」
準はおなかをかかえて笑いました。
いよいよ15分ハーフのゴールデンゴールが始まりました。先取点を上げたら勝ちですが、逆に、取られたら負けです。準はやや興奮気味に、さっきより夢中になって見ています。
お父さんは、準がおしりをもぞもぞ動かしているのに気づきました。
「おまえ、トイレじゃないのか?」
「うん。でも、一番いいところを見逃したらイヤだし」
「早く行った方がいいぞ」
「…うん」
準は上の空で返事をすると、ソファの上に正座をしました。こうするとおしっこが我慢できると準は思っているのです。
そして、その時が来ました。後半残り5分で、日本選手が放ったキックが相手チームのディフェンスの頭上を越え、キーパーが差し出した手をかわしてゴールネットを揺らしました。
「わあい、やったやったーっ!」
準はぱっとソファから飛び降りると、バンザイをしました。
「いいぞいいぞ」
お父さんも手をたたいて喜んでいます。
「…あっ。ああーっ」
準の声のトーンが変わりました。
「どうした?。ああーっ」
…物語はこのページのどこかに、期待通りに続く(^^;。 |