がんばれ…なかった準くん(^^;
第49話:シドニーオリンピック(続き)
 「ほらー、早く行けって言っただろ」
 お父さんが、ちょっとあきれて言いました。
 「だ、だって。一番いいところだったんだもん…」
 「その気持ち、わかるけど。しょうがないやつだなあ」
 「……」
 その時、準にも「その時」が来てしまったのでした。興奮のあまり、おもらししてしまったのです。もう限界だったので、ちびった程度ではなく、派手にもらしてしまって、カーペットに大きなシミをつくってしまったのでした。

 準はよたよたと、ややがにまた気味に、お母さんのところに行きました。サッカーに興味のないお母さんは、寝室で別のテレビを見ています。
 「お、お母さーん」
 準は、消え入るような声でお母さんを呼びました。
 「どうしたの?。あらっ、まあ!」
 お母さんは、準を見てびっくりした声で言いました。
 「どうして早く行かなかったの?」
 「…だって。サッカーがゴールデンボールで、ぼくは…」
 準は言い訳しようと思いましたが、しどろもどろになって上手く言えません。うちでおもらしするなんて、なんだか自分が情けなくなって、涙が出てきました。
 「もう、いつもぎりぎりなんだから。パンツ出してあげるから、早く着替えなさい」
 準は涙を拭くと、こくりとうなづきました。

 準が、濡れたズボンとパンツを脱いで洗濯機に入れようとすると、お母さんが言いました。
 「ついでだから、着替える前におふろに入りなさい」
 「はぁい」
 「準は一番最後だぞ。おふろがおしっこ臭くなるからな」
 お父さんが来て、ちょっとからかうように言いました。
 「えーっ、そんなぁ」
 「ハハハ、冗談だよ。いっしょに入るか?、きれいに洗ってやるぞ」
 「い、いいよー。自分でやるから」
 準は照れ笑いを浮かべて答えました。

 …この出来事は、「準の伝説」として家族の間に長く語り継がれることになり、話題が居間のカーペットに永久に残ってしまったシミに及ぶたびに、準はほっぺを赤らめてうつむくのでした。