卵めん(後編)

鐘の鳴る丘 というわけ(読んでない人は前編へ)でやっと江刺にたどり着いた、江刺は新幹線の駅ができるまで、煙で名物の米(江刺金札米)に影響が出てはと、駅がなかった。一面の雪だった、昔地理の時間東北の太平洋側の岩手県は雪は少ないと習った。岩手県の中南部に位置し北上山脈の麓の江刺は雪が多いのだろうか。もともと北上川の水運による物資の集散地としてひらけ、奥州藤原4代の祖、藤原清衡の生誕地でもある、大河ドラマ「炎立つ」のメインロケ地であるえさし藤原の郷が代表的観光地である。米の他リンゴ、牛が有名。
 卵めんは元禄のころ長崎から落ちのびたキリシタン松屋十蔵が、江刺岩谷堂でオランダ人から伝授された卵を使った麺を造り「蘭麺」と名づけて売り出したのが始まりと伝えられている。板垣退助も食し、昭和46年からJALの機内食にも採用されている。小麦粉と鶏卵のみを原料とする。
 
 なれない雪道を、卵めんを食べさせてくれるところを探して歩いた。江刺には蔵づくりの趣のある建物が多い、くらしきという蔵を改造してお食事どころになっている店に立ち寄った。「卵めんあります?」「あります」よかった、乾麺である卵めん食べさせてくれるところがなかったらどうしようと心配だった。稲庭にしろ氷見にしろ乾麺が名物のところは食べられる店は少ない。待つことしばし、黄金色したそうめんとは違う卵めんがやってきた。乾麺は必ず茹でたてということがいい。 
 少し歩いたところにある大衆食堂のウィンドウには見あたらず、また雪の中を歩き、いかにもそば屋とという風情のやぶ屋を見つけた。しばらく待って出てきたのはあふれるほどの量だったが茹でると増え、なおかつ延びにくいのだという。2軒で食べてとりあえず目的を達したので安心して土産用の卵めんを吉田製麺に買いに行った。バスでは近そうだったが遠かった。卵めんを食べに四国から来たというと社長さんは、コーヒを入れてくれながら、卵めんは延ばすのに力がいる。TVでよく紹介されるようになり、西日本のデパートかも注文が来たとか、卵めんを製造しているところは2社だけなので箪笥や羊羹のような(江刺の伝統物産)行政の後押し受けられないなど話をしてくれた、機械打ちですかと尋ねたらそうだということでうっかり確認し忘れたが、多分麺の細さと延びにくさからして素麺と同じ作り方だと思う(あくまで思うのである)。親切にもホテルまで送ってもらった。卵めんを食べることのできる居酒屋も2,3軒紹介を受けたが残念ながら祝日で休み。何か食べるものをとおそるおそる料亭の横 家へ。「卵めんだけでも食べられますか?」と確認し、豆腐(決して安いからではない、豆の産地とかで豆腐がおいしいから)を食べながら、卵めんを食べた。この後、吉田の社長が特に茹で方がうまいというスナックリーベでまた食べた。黄色くて細くてごわごわ、もごもごした感じ、そうめんみたいに、つるつるといった感じでは食べられない。

 うどんともそうめんとも違った歯ごたえ、お土産として買ってきた麺はなくなるまで毎日食べ続けた、店で食べるというよりは家で食べるものかもしれない。ただ機械打ちなのが残念。それにしても岩手県の乾麺組合の力の入ったパンフレットには脱帽。

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