うどんツアー

裸のまま

 不思議だったのはうどん店の数すら確かめず3千軒あるといい文化歴史を語った人たちの存在。もう一つ不思議なのは、香川のうどんはおいしいと自慢する人々、何故香川のうどんがおいしいと自慢するの?確かめたの?他県で食べてまずかったから。それは1軒?2軒?香川にだってまずい店少なくとも300軒はあると思うが。
 根拠のない自慢、その結果としての自信のなさ、金子・大平以後はうどんを否定的にとらえてきたと指摘した反論が「業界は讃岐うどんのブランドイメージを高めるのに努力してきた」と、讃岐うどんの普及に尽力はされたことは認める、その結果、香川県はうどんの年間生産量が全国一位になった、これも事実である。でも何か違う。文化歴史を百回語るより山越の1杯食べさせる方がうどんを好きになってもらえるだろう。またイメージを高めるとは単によそ行きに着飾っただけだったのではないか、私が否定的と指摘したのはこの点である。何故裸のままではだめだったの?

四国新聞とアエラ

 長田と小縣家を梯子したことが、懐かしい思いで、こんな記述が印刷板『うどんグルメの旅』の三訂版(平成3年4月1日)の前書きにあるが、そんなことをする人間は珍しかった。それがいつの間にか、うどん屋巡りがブームになっているらしい、四国新聞が讃岐うどんツーリズム(1999年5月17日朝刊)として、アエラが讃岐うどんを極める(1999年5月24日号)で同時に取り上げた。ブームの原因はさとなお氏、手軽なドライブ、宝探しやオリエンテーリング的要素、生活そのものの再発見、いろいろ理由はあろうが、最大の理由は味が支持されたのだろう。でもこの現象情報に踊らされただ有名店を追っているだけのような気もするのだが。 

麺聖おすすめルート

 実は私うどん屋の食べ歩きをしたことがない(土曜日曜の昼食は2軒で時には3軒で大を食べるが)。また山越にだって5回くらいしか行ったことがない(県内のうどん屋800軒÷4軒÷50週=4年つまり県内一回りに4年はかかるから)。四国新聞に頼まれ山越を出発し宮川に至る製麺所を7軒回る「麺聖おすすめルート」を作り自画自賛していたが、責任上取材の翌日7軒を食べ歩いた(蒲生は駐車場の舗装中で休みだったので実際は6軒)、経費850円(山越では釜玉とマヨネーズを食べたので都合7玉)、所要時間約2時間半、土曜日はこれに行列に並ぶ時間がかかる。日曜はほとんどの店が休み。このルート初代うどん王の盛の大将にしか喜んでもらえないような気もする(何故かと思う人は確かめてください)。

山越の秘密

 駐車場ができたと思うと、すぐ第2駐車場ができた。ふつうこれだけはやると味がかなり落ちるのだが何故か落ちない。その理由を考えてみた。元々機械化された製麺所だった。これくらいの量の玉を作る余力はあった。和風カルボナーラと称される釜玉をはやらせた。釜玉はだしが不要である、客のかなりが釜玉を頼むのだから客がいくら増えようが卵を買ってくるだけでいい。おばちゃんがいろんな店に行って研究している。こんなの基本だと思うが自分の店以外のうどんを食べたことがない(ひょっとすると自分の作ったうどんも食べていない)としか思えぬどうしようもない店が多い。

ANAルート

 麺聖おすすめルートのストイックさのもう一つはさとなお氏が本で紹介したルートを避けたことにある。山越を出発店にしたのは、9時頃高松空港に着く東京発のANA631便をかなり意識している。このルートを一般向けにしたのがANAルートである。空港でレンタカーを借りてまず山越で釜玉を食べる。次に長田に行き、釜上げを。その後谷川へ、谷川到着の目標は11時。谷川では冷たい麺をしょうゆを食べ、この後山内へ、山内ではひやあつを食べる。そして宮川へ、宮川の到着目標13時前、ここでセルフらしさを味わい、最後に山下(善通寺市)でぶっかけ。このルートの長所は、いろんなうどんが食べられることと午後を観光にも回せること。

JASルート

 JASの391便で着くと10時になるこの場合は、山越に行くここまでは同じだがこの後すぐ県道府中琴南線で谷川に向かう。これがJASルート。そして山内、長田、山下と回る。このルートの利点は行程に無駄がない上、途中でお腹がいっぱいになるとこんぴらさんの石段で腹ごなしができること(長田山下は昼過ぎでも充分おいしい)。欠点はさっきのルートより1軒少ないこと。
 (この記事を読んだANAかJASの機内誌担当の方、讃岐うどんの記事書きますのでご連絡を、私の文章力に不安を感じる方には田尾団長著、麺聖監修でも引き受けます、もちろん冗談です)

県民へ告ぐ

 有名店ばかりに目を向けないでください、紹介したルートを信じないでください。疑ってかかって途中に行ったことがないうどん屋があれば入ってください。もっとおいしい店があるはずだ。私はそうやっておいしいうどん屋に巡り会ってきた。
 実はうどん屋巡りのルートを以前にも作ろうと思ったことはあった。でも香川県人は梯子しても3軒くらいだろうし、「自分の足で歩き、自分の舌で確かめる」こともおろそかになるのではと避けてきた。が、ここまでブームになると避けることは罪であると思い作成はした。本当はこんなのに頼らず名もないいい店をたくさん見つけて欲しいと思っている。  

うどん屋さんへのお願い

 私は常においしいうどんを求め、探しおいしい店を発見した、そしてその何倍ものおいしくない店に出会った。よく出来立てはおいしいに決まっているというが、これは誤りである。昼のラッシュ時にさえおいしくない店はいっぱいある。営業時間いっぱい平均以上のものを提供するのがプロの仕事と思うが、それ以前、最高点が低く平均点も低い、そんな店が多いのだ。早さ、安さと味は難しい関係にある。普段着の店、よそ行きの店も必要だ。いろいろなサービスも必要だが、味を忘れて努力をしてしても誰もほめてくれない。
 客の好みは様々と逃げないで欲しい。(時間が経って)β化した麺が好きか、出来立てが好きかは、好みの問題であろうが、β化した麺が好きならそんな麺を提供することに努めるべきであろうし、出来立てが好きなら常に出来立てを提供するべきである。出来立てが好みなのに時間が経ってもおいしい麺を追求するのは邪道だと思う。
 製麺所とかセルフの店が讃岐うどんの特徴と言われるが、香川のうどん屋の大半を占めるのは一般店、一般店が讃岐うどんの顔であり未来を決めるものだと思っている。付加価値はあくまでも付加価値である、飲食業の最大のサービスは「味」であり、味こそ最大のもてなしである。妥協だけはしないで、ブームなんてはかないものですから。