概念図
福岡におけるプロジェクトで、ヴォッヘンクラウズールは日本の教育問題をテーマにしました。
彼らは日本の学校と地域社会との間に相互交流がうまれることで、学校に発生している問題のいくつかは間接的に解消していくのではないかと考えました。
学校を社会に対して開いたものとすること、子供たちが社会を直接体験すること、そして学校における勉強が社会と密接に関わっているという事を知ることが大切であると考えたのです。
具体的には、学校にさまざまな専門家を講師として派遣し、授業のなかで先生や子供たちといっしょにプロジェクトをおこなうこと(プロジェクト型授業)を提案しました。彼らはいろいろなプロジェクト型授業のサンプルプランをつくり、それらの内容と専門家のリストをつくることを提案しました。
さらにこれを恒久的なシステムとするため、専門家と学校をつなぐコーディネート組織「エージェンシー(仮称)」の設立を呼びかけています。
ヴォッヘンクラウズールのアイデアに基づくプロジェクト型授業のプランは、2000年1月現在、福岡市内及び近郊の3つの小学校で採用され、滞在中に最初のガイダンス授業が実施されました。
実際のプロジェクト型授業は2000年春以降にも予定されており、これらはウィーン側のアーティストが帰国したのちに「エージェンシー(仮称)」によって運営されていく予定です。
実質的にはミュージアム・シティ・プロジェクトが暫定的に運営の窓口となり、エージェンシー設立及びコーディネーターの募集を同時に呼びかけていきます。
なお、日本では2002年度より学習指導要領が変更され、プロジェクト型授業とほぼ同じ趣旨の「総合的な学習」を導入することが決定しています。
「総合的な学習」は既に2000年度より段階的に進められる予定であり、プロジェクト型授業をコーディネートする組織の設立は現場の教師たちにとっても、たいへん有用であると思われます。
「エージェンシー(仮称)」は社会と学校との間のコミュニケーションをコーディネートする組織として有意義な成果をもたらすと考えます。
(1)商店街活性化プロジェクト授業
○趣旨および内容:小学校の生徒が実際に商店街に訪れ、店の人と話しながら店や地域の特色を知り、そこから街に活気を与えるような活動を展開させる。
○対象:箱崎小学校(福岡市東区箱崎)3年生[2000年度は4年生]
○導入:2000年1月14日にガイダンス授業を実施
○講師:南博文(九州大学大学院人間環境学研究科環境心理学教授)
○2000年度進行プラン[予定]
春頃まで いろいろな店を見学し、アイディアを準備
5月頃 生徒が見学してきたことをもとに、南教授と生徒が話し合い
南教授らによる地域環境や歴史などについてのレクチャー
6月頃 商店街の見学
店にあった宣伝方法を考え、ポスター等をデザイン
夏頃 実際に店頭にポスター等を掲示。マスコミを通じ広報。
(2)「私たちの新聞をつくる」(仮称)授業
○趣旨および内容:新聞製作の面白さを知り、現実の新聞に印刷する紙面を制作する。
○対象:舞鶴小学校(福岡市中央区舞鶴) 5年生[2000年度は6年生]
○導入:2000年1月12日に、「新聞がおもしろい」というテーマでガイダンス授業を実施
○講師:嶋村初吉 (西日本新聞社
編集局 文化部)
○2000年度進行プラン[予定]
春頃まで テーマについて議論し、アイディアを準備。新聞社と細かい点を相談
5月頃 紙面のテーマ決定
新聞社を見学し、実際の作業工程を学ぶ
6月頃 実際の紙面を作成するための作業にはいる
夏頃 現実の新聞に印刷
(3)「ぼくらの家をつくる」(仮称)授業
○趣旨及び主な内容:家の建造について段階的に学びながら、実際に自分たちの手でつくり、その家で時間を過ごすまでを、建築家と一緒に考え実現していく。
○対象:笠松小学校(福岡県鞍手郡宮田町) 6年生
○導入:2000年1月14日実施。家のイメージスケッチや場所選びなど。
○講師:佐藤俊郎(建築家)、おがたたかひろ(アーティスト)ほか
○進行プラン ※本授業は1999年度で終了。
1月中 設計図づくり、材料集めを行い、実際に「家」づくりを行う
制作過程で、算数や社会科、環境学習の要素を取り入れた授業を行う。
できあがった家で、こども達主催のパーティーを開催する。
卒業(3月)まで プロセスを記録した卒業記念の本をつくる。(予定)
インターネットのホームページ上で情報発信を行う。(予定)
○新聞社等の製作担当者 ほか
○南博文 九州大学 大学院人間環境学研究科 環境心理学教授
○南教授のゼミ等の九州大学学生 ほか
○佐藤俊郎 建築家・環境デザイン機構代表取締役
○おがたたかひろ 建築家・アーティスト
○馬越美佳 都市計画デザイナー・u
PLANNING & DESIGN代表
○松田明子 環境デザイン機構 ほか