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司法試験にむけた論点学習の仕方
司法試験論文答案作成のポイント
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リリーフ法律事務所
 弁護士 松本 治
(東京弁護士会所属)
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 論文答案作成のポイント

 1 心構え

 たった1通の答案を通して、その問題の理解、その科目全体の理解を示すというのが重要です。1科目わずかな問題数ですが、試験委員は、その答案を通じて、その科目全体の理解、ひいては法というものの考え方を見ようとしているのです。

 2 事例問題

 一般に、問題提起、規範定立、あてはめ、結論のブロックを積み重ねていきます。中でも重視されるのは問題提起とあてはめです。なぜこれらが重視されるかと言えば、事前に準備のしようがないところだからです。
 まず、問題提起は、事案のポイントを抜き出し、結論に向けてなぜその論点が問題となるのかを端的に指摘します。思いつきで論点を書いているのではなく、必然性があるから書くのだということを示します。問題を理解していなければできないことです。もし、ここで出題者の想定していない論点を書いても、理由がしっかりしていれば大きな減点はされないでしょうし、場合によってはある程度の点が乗ります。
 あてはめについては、法的に意味のある事実を抜き出すのが第一歩です。その上で、それぞれの事実が法的にどう評価されるのかを論述していきます。ごく常識的にやっていけば大丈夫です。極端に言えば、姓名判断ではないのだから、「甲」だからどうだとか、「乙」だからどうだというふうになってなければいいのです。
 具体的に言うと、「甲はシェパードを飼っていたのだから、丈夫な鎖でつないでおかなかった点に過失がある。」としたのでは不十分です。これをペットショップの人に見せると、シェパードは安いのだから、鎖にお金をかけなかった点に過失があると読まれてしまいます。例えば、「甲は大型犬で力の強いシェパードを飼っていたのであるから、その力に耐えられるような丈夫な鎖でつないでおかなかった点に過失がある。」と書けば、ライバルに差を付けることができます。
 ただ、最近はあてはめができる人が多くなってきていますから、むしろ差を付けられないようにする意味で重要と思われます。

 3 一行問題

(1)整理問題
 多数の制度を整理していく問題です。
 まず総論で一定の視点を示し、それにそって各論を並べていきます。視点は、奇抜なものでは独りよがりに終わってしまうので、その科目全体の理解が示せるものを選びます。各論では、定義・趣旨・要件・効果を書いていきます。
 答案構成の順序としては、まず思いつく制度をできるだけ多くあげてみます。そして、それらを眺めながら総論を考えます。もし、その中の1つだけどうしても総論に当てはまらないものがあれば、それをあえて落とすというのも1つの戦略です。
 こういう順序で作ると、よく言われる「総論と各論のリンク」は必然的にできています。

(2)比較問題
 よく似た制度、あるいは全く違うように見えて共通点がある制度を比較する問題です。これもまず総論で視点を示し、それにそって各論を構成します。比較の項目も、定義・趣旨・要件・効果です。
 3つ以上の比較の場合は、原則として、よく似た2つはまとめて他の1つと比較した上で、まとめておいた2つを比較していくという構成になります。

 4 答案全体のバランス

 その問題における各論点の重要度は、一般的には論述の長さで示します。このバランスを欠くと、得意なところを長く書いて、苦手なところはごまかそうとしているととられてしまいます。全ての問いに正面から答えるという意味でも、論点の重要度の理解を示すという意味でも、バランスは重要です。

 5 学説について

 学説の選択で迷った場合は、判例の見解を採用しましょう。例外として、判例の規範がわかりにくく、通説が反対している場合には、通説の見解を採用した方が書きやすいです。
 判例の見解を採用するメリットは、
・論点を落としても判例を前提にしていればダメージが少ない。
・判例の理解・知識が示せる。
・細かい論点は理由を書かなくてよい場合があるので短くまとめることができ、(判例に同旨)と書ける。
・実務は判例をベースに運用されている。
といったところでしょう。
 学説は判例をいろいろと批判していますが(それが仕事ですから)、判例の見解・結論には一定の合理性があるものです。
 判例について深く押さえたい場合は、事案も含めて押さえておきましょう。実務では、この判例はこういう事案でこういう判断をしたから、本件にも当てはまる、あるいは当てはまらない、という議論をします。答案で判例を引用するときにも、事案のポイントを含めて書けると確実に点が乗ります。

 6 条文の重要性

 法律家の議論の出発点は、何と言っても条文です。条文が自在に使いこなせなければ法律家とは言えません。
 ここで注意していただきたいのは、条文を挙げるときは、〜項〜号、前段・後段、本文・但書まできちんと挙げるべきだということです。例えば、よくあるのは併合罪で(刑法)45条としか書いていない答案です。45条前段の併合罪と、45条後段の併合罪(試験に出ることはまずないでしょう。)は全く別の類型ですから、きちんと区別する必要があります。もっとひどいのは、強盗致死あるいは強盗致傷で240条としか書いていないものです。これは立法の不備もありますが、前段と後段は全く別の類型ですから、これを明示しない答案は減点を覚悟しなければならないでしょう。

 7 答案の分量

 一般論としては、典型的な問題、得意な問題については多く、よく分からない問題については短くということです。人それぞれのスタイルがありますから、一概にどれくらいとは言えません。ただ、難しい問題はウソを書かなければ受かります。1ページ半で終わった答案があったけれど合格したという話を聞いたこともあります。

 8 問いに答えるということ

 答案を採点していると、問いに答えていない答案が意外と多いです。論点自体は拾えているし、論述も正しいのだけれど、その形式が問いに対応していないというものです。
 試験は、その「テーマ」で論文を書けというものではありません。あくまで問いに答える中で、論点にふれる必要があるから論点を論述するのです。
 私は、問いに答えていない答案は厳しく採点していますし、本試験では0点がついても文句は言えません。
 要は心がけ次第です。

 番外 裏話(寄らば大樹の陰)

 予備校の発表しているヤマというのは、あながち無視できません。というのも、ヤマが当たったときは、皆それなりのことが書けるので、相対的に沈まない答案を書く必要があるのです。
 司法試験の答案では、迷ったら皆が書きそうなことを書いておくというのをお勧めします。皆で間違う分にはダメージが少ないのです。出題者の意図と違う論点を書いたとしても、それが間違いでなく、その数が多ければ、採点基準すら見直されるという噂もあります。これは、起こるとすれば、ヤマがらみでしょう。
 とはいえ、ヤマはえてしてはずれますから、振り回されてはいけません。