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 森ノ宮医療学園附属診療所  院長 田中 邦雄
 「老 化 と 水 分

人間のカラダは、その体重の約70%が水でできています。この水は、ほとんどは細胞の
中にあります。植物も、動物も区別なく、生き物は老化すると細胞に水を貯えらる力が
低下します。つまり枯れてくるということです。


 人間が「枯れてくる」と、どのような症状がでるのでしょうか。

 皮膚の水分が減るので、皮膚がカサカサになります。

空気を肺に吸い込みますと、空気と一緒に吸い込んだ空気中のゴミは肺の分泌物と一緒に
なってタンとして肺から出てきます。ところが肺の水分が少なくなりますと、分泌液が十分
に出ず、結果としてタンが十分に作れず、カラ咳ばかり出るようになり、吸い込んだゴミが
なかなか外に出なくなります。

 ダ液が出ないのでノドが渇きます。

 胃の分泌液(胃液)が少なくなりますので、食べ物を消化する力が低下します。

 腸の分泌液(腸液)が少なくなりますので、腸の中がカサつき、便を軟らかくすることが
できなくなって、便が硬くなり、便秘になります。

 

 年をとると、夜におしっこに起きるのが面倒くさいということで、寝る前の水分を制限
される方がおられますが、そんなことをしてはいけません。寝ている間にも、汗をかいたり、
小便が作られたりして身体の水分が減ります。そうすると 血液が濃くなり、血管の中で
血球がラッシュアワーのような状態になって、詰まりやすくなります。
脳の血管が詰まると脳卒中(脳梗塞)ですし、心臓の血管が詰まると心筋梗塞です。
いずれも運が悪ければそのままあの世行きですし、助かっても完全に病気前の生活には戻れません。

肺の水分が足らなくなると、さきほどお話したように、肺の分泌液が十分に出ず、結果として
タンが十分に作れず、カラ咳ばかり出るようになります。風邪でもないのに朝にセキがよく出る
というのがこれです。


 このような病気は、幸いなことに、寝る前に水をコップに一杯飲むだけで予防できることが
多いのです。
夜中のトイレがいやだと、夜半から水を飲むのを制限するのはやめましょう。
夜中にトイレに起きたら、ついでに台所にいって水を一杯飲むようにしましょう。

 カラダの水が極端になくなる状態を「脱水状態」といいます。脱水状態になりますと、意識が
なくなり、暴れたり、昏睡になったりします。むかし、私が病院に勤めていた頃、大学生で、
真夏の炎天下にテニスをしていて急に暴れ出してかつぎこまれた人がいました。脱水でした。
夏に高熱で病院にかつぎこまれる寝たきりのお年よりなかには、寝たきりなので自分で水が飲めず、
脱水になってしまった人がよくおられました。このような場合、一杯の水が命を助けることも
あります。   
            
                         文責 田中邦雄


 

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