転機としての「危機」(5)
   ーーアメリカの主要なメディアはすべて政府とお友達ーー ichi
                          (1992、8、22)
(内容)
国際戦争犯罪法廷  決議678号にはウラがある  国連は性格が変わった
クラーク法廷の提案  アメリカの報道はいま  反戦兵士がいた 
メディア対策が向上した   視覚と言語   戦争でのメディア対策はすごい
インナーサークルとはなにか  あのCNNもお友達   外務省はもう動いている
アエラではわからない  貢献は無責任を助ける

 いままで見てきたことは、軍事が絡むことは必
ず、情報が操作されているとみたほうがいい、と
いうことだ。特に、相手側の言い分は一体どうか
がはっきりせず攻める側の一方的な「大義名分」
だけしかないときは、要注意だ。また、紛争の背
景は一体何か、武器は誰が供給していたかが、特
に大切なポイントだ。
 
 
 
はじめに   
 PKO法が国会を通ってしまった。
 PKOで自衛隊が海外に行くようになれば、「ますます自衛隊に入隊する若者が減り、自衛隊自身が困る」との意見がある。私は、これに同意できない。確かに現在、自衛隊の社会的位置は中途半端で、高くはない。しかし、「国際貢献」をしなければいけないように、「国への貢献」が日本人としての基本的な態度だ、自衛隊は男女差別のない良い職場だ、国民のために命を捧げるというのはもっとも尊い仕事だ、とマスコミと教育が宣伝をすれば、案外たやすく自衛隊の社会的位置が高まることだろう。こうなれば、海外青年協力隊へ志願するような人々も自衛隊へ行く可能性がある。
 PKOの議論で私が気になったのは、国連と名が付けば、なんでも正しいのだろうか?という点だ。もうひとつは、強行採決や社会党などの牛歩を報道するマスコミの姿勢や論調だ。この二つについて考えてみたい。
 
国際戦争犯罪法廷
 去年、湾岸戦争が終わった後、新聞で米国の元司法長官のクラークという人が、アメリカがイラクに行ったことは、「国際法違反の戦争犯罪である」と告発していることを知った。エライ人もいるもんだなあ、と思った。その後、本屋で「被告ジョージ・ブッシュ有罪 国際戦争犯罪法廷への告発状」(柏書房)という本を見つけた。その本には、マスコミでは知らされていない事実が多かった。
 この国際戦争犯罪法廷は、その後どうなったのかなと思っていたら、雑誌「世界8月号」に「報告・クラーク法廷 湾岸戦争はこう裁かれた」(大川原百合子)という記事があった。私は記憶にないが、このクラーク法廷は、今年の2月にアメリカのニューヨークで開催されたそうだ。海外から33カ国の代表が参加し、ホールは1500名の聴衆で埋まったという。
 
決議678号にはウラがある
 この法廷で、多国籍軍に国連による武力行使の権限を与えたとされている安保理決議678号(’90年11月29日ーー賛成12、反対2、棄権1)についての内幕が暴露された。この決議は、米国が安保理の各理事国に強引に工作し、世銀、IMFを使った経済援助で票を買い、国連決議を戦争に利用したものだ。すこし、その買収の事例を見てみよう。
 中国・・拒否権を行使せず、棄権。
   →1週間後に世銀から1億1140万ドルの融資をうける
 旧ソ連・・賛成
   →翌日、ブッシュはソ連への食料援助と農業借款の政策を好意的に見直すと発表する
 トルコ、シリヤ、イスラエル、イラン・・賛成
   →軍事援助、経済援助対外債務の免除
 エジプト(90年には540億ドルの対外債務を持ち、アフリカ、中近東で最大の債務国)    ・・賛成
   →米国、サウジ、アラブ首長国から114億ドルの債務の免除をうける
 一方、この武力容認決議に反対票を投じたイエメンに対してはどうか。
 イエメン・・反対
    (安保理の代表の耳元で米国代表が「反対票がどれほど高いものにつくかわかっているのだろうな」とささやき、これが国連のマイクを通じて流れる)。
   →3日後、7000万ドルの援助が打ち切られる
 こういうのを、普通、「票の買収」とか、「飴とムチ」とかいうんだなあ。
 まだある。この678号の決議の後、アラブ・マグレブ5カ国(アルジェリア、リビヤ、モーリタニア、モロッコ、チェニジア)や、イエメン、ヨルダン、スーダン、キューバなどの国が、安保理開催要求を出していた。それに対して当時の安保理の議長国であったザイールは、この開催要求を無視し続けた。この見
返りとして、ザイールに対して、軍事援助と対外債務免除が与えられた。
 ここで起こっていることは一体なにか?
 
国連は性格が変わった
 マスコミは、冷戦の終結で国連が本来の機能を果たせるようになったと国連を持ち上げる。しかし、実際は、ソ連の解体、中国の低迷のもとで、アメリカを中心とした「北」の「豊かな」先進国が、貧しい「南」の国の弱みに付け込み、国連を意のままに利用し操作している姿だ。「社会主義国」の解体、混乱と、先進国に対する南の一層の地位の低下や従属が、国連を先進国の独断場にしている。
 「社会主義国」が健在だった頃、国連はこうもアメリカの言いなりではなかった。そのためアメリカは国連に対して、多額の未払金があった。しかし、この間の状勢の変化で、アメリカは国連に1億8700万ドルを支払い、未払金の額を減らしている。アメリカにとって、国連は以前は時にはじゃまな存在だったが、現在、実に使いがっての良いものになったというわけだ。
 
クラーク法廷の提案
 クラーク法廷では、湾岸戦争でのアメリカ大統領ブッシュに対して、有罪の判決を下した後、国連が大国の戦争を正当化するために利用されたことを重視し、次の勧告を行っている。
 【勧告】B米国によりあからさまに操作された国連安保理事会の権限を国連総会に付与すること、常任理事会の廃止、拒否権の廃止を求める。
 
アメリカの報道はいま
 このクラーク法廷に取材にきたジャーナリストは、ヨーロッパ、日本を含めて93名にのぼったという。ただし、驚くべきことに、地元アメリカのマスコミは一人も来ていなかったという。大川はこう記す。
 「聞いた話では、以前協力的であったジャーナリストも「今回は悪いけど身動きがとれない」と言って いるそうだ。国際戦争犯罪法廷について書くことは、「ジャーナリストとしての終わり」を意味すると会 社の上層部から脅かされているという」
 一体これは何だ!アメリカは自他ともに認める「自由の国」ではなかった。
 私は、なんとなくアメリカのジャーナリズムは、日本よりも政府に対して、強く振舞っているという感じを持っていた。例えば、アメリカのジャーナリズムは、ベトナム戦争では、お茶の間にベトナムの悲惨な状況を伝え、ベトナム反戦運動の基礎を作った。また、ウォーターゲート事件では、ワシントン・ポストを先頭に政府の圧力に屈せず、ニクソンを辞任に追い込んだ。しかし、湾岸戦争後1年を経ても、この戦争に対する情報統制はいまだ、続いている、あるいはもっと悲惨なことに、アメリカのマスコミはもはや政府に対しての報道の自由をもっていないのか。
 
反戦兵士がいた
 次の事実も我々に知らされていない。湾岸戦争への出動を拒否した兵隊は8000人もいたこと、そのうち2500名は減俸から投獄までの処罰の対象とされたこと。
 「軍の中で反戦の意志表示をすることは、・・・退役後も経歴について廻り、就職が困難になるため、一生を棒に振る覚悟が要るという。戦勝パレードに反対の意志表示をして逮捕された18名の市民の裁 判は係争中で、3年から8年の重い求刑がなされている」。
 湾岸戦争で、取材をプールシステム(代表取材)という形にし、情報を軍の統制化においたことは、すでに知られている。しかし、アメリカ国内での反対運動についても、ここまで統制がきいているとは予想外だ。一体どうなっているのだろう。
 
メディア対策が向上した
 そこで、共同通信社の記者、佐々木伸という人の書いた「ホワイトハウスとメディア」(中公新書)を読んでみた。
 そこで、歴代のアメリカの政権のメディアとの関わりがうまくまとめられている。ニクソン政権までのメディア対策と、レーガン政権以降のメディア対策とは根本的に異なる、と佐々木は指摘する。
 「ニクソン政権の担当者はいわばあからさまな操作でメディアをコントロールしようとした。情報の量を抑えたり、断片的な情報をメディアに与えることによる「力による操作」であった。
  しかし、レーガン政権の発想はこの点に関してはこれと全く逆であった。「メディアはホワイトハウスが与えるものはなんでも食らいつく。彼らは毎日ニュースを作らねばならないのだ。・・・ニュース がなければ、彼らは自分たちで独自のネタを発掘しようとする。だからこちらから材料を与え続けるのだ」(レーガン政権の報道担当官)ーーというのが基本的な発想だった。情報を抑えるのではなく、政府にとっておいしい料理(商品としてのニュース) ができあがるように、カロリーと栄養を計算した材料を三度の食事(ニュースの時間帯や新聞の締切)ごとに提供し続けたのである」。 
 しかも、ここでメディアとして特に意識されているのは、新聞ではなくテレビである。
 
視覚と言語
アメリカの大統領選でのテレビ討論(ディベート)は日本でも有名だ。1984年のレーガン共和党候補とモンデール民主党候補のテレビ討論は国民の半分以上の1億2000万人が見たという。全米に生中継されるそこでの受け答えが、選挙戦の行方を大きく左右することになっただろう。
 ニクソン政権の首席補佐官だったハルデマンが次のようなルールを作り上げたと言う。
 「視覚は言語に打ち勝ち、目は耳に勝り、景色は音を超える」。テレビ討論で言えば、候補者の話す内容よりも、目に見える話し方や表情が重要だと言うことになる。商品で言えば、商品の中身や機能よりも、商品の見かけ(パッケージ)が大切だとなる。テレビと新聞との関係で言えば、テレビ(視覚)は新聞(言語)に勝つとなってしまう。現状を見る限り、このルールはアメリカでも日本でもあてはまると言わざるを得ない。(テレビをあまりみない私は残念だ)。
 レーガン以降のメディア対策は、「絵」になりやすいもの、「絵」として映りがいいものをメディアに提供し続けるというだ。しかし、これは物事の一面に過ぎない。こと軍事が絡むと、話は一変する。
 
戦争でのメディア対策はすごい
ヴェトナム戦争後、アメリカは少なくとも3つの戦争を行っている。この時、メディアはどうだったか。
*83年(レーガン政権)ーー中米の島国グレナダへの軍事侵攻
 <名目>アメリカ留学生の救出
 <実際>キューバがグレナダに滑走路を建設中、キューバの影響力をつむため
 <メディア対策>記者の取材を3日間禁止する
*89年(ブッシュ政権)ーー中米パナマへの軍事侵攻
 <名目>アメリカ市民の保護、パナマ運河の安全確保、パナマの民主主義の回復
 <実際>麻薬に関して反米姿勢を強めるノリエガ体制の打倒、ノリエガ将軍の拘束をする 
 <メディア対策>侵攻後5時間以上、パナマ入りを禁止、現地入り後パナマの米軍基地に閉じ込める。テレビはアメリカ軍が撮影したビデオテープを放映。プール取材(代表取材)の実施
 このパナマへの軍事侵略の時、メディアは現地の戦闘現場の取材を規制されただけではない。アメリカ本土でも干渉を受け、これらは、アメリカのメディアの実状を物語っている。
 パナマ侵攻の翌日、ブッシュはホワイトハウスで、軽口をたたきながら、パナマ侵攻について記者会見をしていたが、ちょうどその時、侵攻作戦で死亡したアメリカ兵4名がデラウエア州に帰還した。ABC、CBS、CNNがこれを画面を2つに割って同時中継した。記者会見で冗談を言っていた大統領に抗議が殺到した。後で、この同時中継を知ったブッシュは、同時中継をするときは、事前に通告するようメディアに厳重に抗議した。メディアはこれに対し、「不手際があった」と謝罪している。
 さて、湾岸戦争はどうか。
*91年(ブッシュ政権)ーーイラクへの軍事侵攻
 <名目>イラク軍をクウェートから撤退させる
 <実際>??一体なんでしょう。色々な面があると思います。
 <被害>イラクの社会基盤(インフラ)の破壊。民間人を含む推定10万以上の大量虐殺。
 <メディア対策>プール取材の徹底(取材制限、検閲、情報操作)
 サウジで取材をしたニューヨーク・タイムズの記者は「プール取材はペンタゴンの無給職員だ」と述べたと言う。これは、湾岸戦争ではメディアが独自の取材ができず、軍事筋の宣伝機関に成り下がっていた事を示している。
 この情報操作が成功して、湾岸戦争は戦争から「血の臭い」がないものとなった。
 
インナーサークルとはなにか
 以上、アメリカの権力者側のメディア対策を見てきた。佐々木は「ホワイトハウスとメディア」でもう一つ重要な指摘をする。メディア側の問題点である。アメリカのマスコミには「階級」制度が存在し、それは太陽とそのまわりを取り巻く惑星に例えられると言う。
 「光り輝く熱源である太陽は政府や議会などのニュ ース・ソースであり、惑星はマスコミ各社だ。惑星 は太陽を中心に外に向かって3つのリング(輪)を 構成している。一番太陽に近い輪がインナーサーク ル、まん中がミドルサークル、そしてもっとも外側 がアウターサークルと呼ばれる」。
 このインナーサークルにはどんな特権があるか。
 「ホワイトハウスがなんらかの政策を発表した翌日 に・・・メンバーが呼び出しを受け、発表の目的や 大統領が国民に何を伝えたいかの詳しい説明を受け ることも多い」。
 「要人とのインタビューも彼らが優先的に選ばれる。 このほかインナーサークルの記者は高官を囲んでの 朝食会やパーティに招かれたりもする」。
 パーティなどで個人的に親しくなれば、時には特ダネも得れるだろう。人情として、何よりも親しくなった相手に批判的なことは言いにくくなる。
 このインナーサークルのメディアは、情報アクセスへの大変な特権を持っている。では、それ以外のメディアの記者ががなぜ抗議をしないのかといえば、「不満を言うのなら競争して勝ち抜き、インナーサークルの社に入ればいい」といった競争社会の原理が、ミドル、アウターサークルの記者の胸の内にあるからだろうという。うまくできている。「文句を言う奴は、弱い奴でうらやましがっている」というわけだ。システムに問題はなく、問題は個人の能力だ、という言い方だ。
 
あのCNNもお友達
 佐々木によるとインナーサークルに入っているメディアはつぎのようだ。
 テレビ・・・3大テレビ(ABC、CBS、NBC)
       CNN
 通信社・・・AP、UPI
 新聞・・・・ワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナル、ロサンゼルス・タイムズ
 週刊誌・・・ニューズウィーク、タイム
 何だこれは。要するに、アメリカの主要なメディアはすべて政府とお友達ではないか。湾岸戦争で名をはしたCNNも入っている。(最近いれてもらったようだ)。日本で発行されている週刊誌のニューズウィーク日本版は、湾岸戦争の時、ずいぶん戦争を煽るような事を書いていたが、これで納得した。
 
外務省はもう動いている
 日本のメディアはいったいどうなっているのだろう。私は、漫画のビッグ・コミックを定期購読(月2回)している。そのなかの「企画アリ」をもっとも楽しみにしている。
 「企画アリ」の背景は、「帝都」という巨大な広告代理店が、日本のメディアを支配しようとしている。それに対して、主人公の工藤が経営する小さな広告 代理店が抵抗する、というものだ。現実的にいえば、電通や博報堂が帝都に相当するだろう。これは、漫画の中での出来事だろうか?また、先にみてきた政府のメディア対策は、日本ではどうなっているのだろうか?
 次の記事は、日本でも政府のメディア対策が本格化し始めたことを示している。毎日新聞8月9日付の特集「平和の曲がり角」は、「外務省メディア攻勢」と題して電通と外務省との関係を伝える。
 「昨年度予算に『マスメディア広報対策費』約5千万円が盛り込まれた。以前からある費用だが、中身は電通とのコンサルティング契約という、まったく新しい経費だった。その『成果』というリストがある。・・・外務省は昨年、PKOがテーマの講演会を集中して地方で開いた。リストの地方三局は、この講演会を『ローカルニュース』の枠内で放送したところ。『電通がメディアにどう働きかけたか、我々には分からない。・・』と外務省職員は説明する。
  昨年2月、主要紙に作品を出す漫画家約20人に、・・・外務報道官名で前例のない『招待状』が送られた。7人が応じ、帝国ホテルのティナー席に着いた。湾岸戦争の最中。新聞には日本の戦費負担を皮肉る漫画がしばしば出ていた。報道官らは『日本の外交が大変苦しい時期だ。・・・』出席者の一人は 電通のアイデアだったと、後で聞かされた。政治風刺の漫画で知られる山田紳さん。『・・・情緒的な戦争反対一辺倒じゃ描きにくくなった。国際社会に何が協力できんだ、といつも突きつけられますよ』電通との契約は今年度も続いている」。
 

 いままで見てきたことは、軍事が絡むことは必
ず、情報が操作されているとみたほうがいい、と
いうことだ。特に、相手側の言い分は一体どうか
がはっきりせず攻める側の一方的な「大義名分」
だけしかないときは、要注意だ。また、紛争の背
景は一体何か、武器は誰が供給していたかが、特
に大切なポイントだ。
 
 
アエラではわからない
 PKO法の成立によって、自衛隊がカンボジアに派遣されようとしている。マスコミはカンボジアの国土を荒廃させ、多くの民衆を虐殺したとして、ポル・ポト派を非難する。
 朝日新聞社が出しているアエラが、8月25日号で「ポル・ポト派の秘密指令」と題して、カンボジア特集を組んでいる。この特集では、「ポル・ポト派はひどい集団だ」ということしか分からない。
 カンボジア四派とは、一体どういう歴史を持ち、国際状勢の中でカンボジア内線とは一体どういうものか、武器はどこから4派に流れたか、という基本的なことがわからない。私も、つい最近まで全くわけが分からなかった。
 しかし、次の文を読んで、ああなるほどな、と思った。これは、5月、PKO市民投票の事務局になった「ピースネットニュース」の第53号(7月10日発行)に掲載されていたものだ。 
 全文は資料として最後に載せますが、次のような事がわかる。
 1、カンボジアの内戦の始まりは、アメリカが絡んでいる。
 2、カンボジアの国土の荒廃はアメリカの爆撃によるものだ。
 3、カンボジアはアメリカ、中国、ソ連の代理戦争の舞台になった。
 4、武器がこれらの国によって提供された。
 5、冷戦の終結で、カンボジアの代理戦争の必要がなくなった。
 その結果、国土は荒廃し、ポル・ポト派は武器を持っているというわけだ。
 
貢献は無責任を助ける
 貢献という言葉の他に、責任という言葉がある。普通責任を果たさない人物が、他人に「貢献をしろ」といっても誰も聞く耳をもたない。しかし、政治、とりわけ国際政治は不思議だ。「武器を提供した国や企業が責任を持って戦火の後始末をしろ」という主張が出てこない。出ても黙殺される。武器提供とは無関係な国に「国際貢献で後始末をしろ」とマスコミの大合唱が聞こえる。
 私は、湾岸戦争の時、次のような主張に納得した。90年10月8日の日経新聞に、青山大学の小宮という人の「国際危機 貢献、非軍事面に限定を 武力不行使崩すな 軍事大国の武器輸出規制」という論文がある。
 「ソ連、フランス、中国などは・・・膨大な額の武 器をイラクに輸出してきた。国連安全保障理事会の 常任理事国である軍事大国が第三世界に武器を大量に輸出し、その中の独裁者が侵略戦争に乗り出して 国際危機が発生したときに、日本やドイツに後始末 のカネを出せというのは、公正ではない。湾岸危機処理のための費用の相当部分は、紛争国に武器を与え続けてきた軍事大国が負担すべきである」。
 カンボジアの復興には、現在、中国の工兵隊が活動しているのは、責任という点では当然の事だ。アメリカもUNTACに肩代りをさせるのではく、自らの責任を果して欲しいものだ。それが、品位のある国家と言うものだ。
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