奥の悪阻道歩き旅番外編 鳥海山に登る

ミヤマキンポウゲ
小さくて黄色い花をみるとキンポウゲかキンバイだと思うのだが、その違いがよく分からなかった。どうやら葉の形が違うようだ

ハクサンフウロ
花は薄いピンクで、高山帯の草地によく見られる。花は比較的小さいが群れて咲くことが多いので目につきやすい

イワギキョウ
高山帯の砂礫地に生育する。花は青みの強いコバルトブルーで、岩陰から顔をのぞかせているのを見るとハッとする

チョウカイフスマ
鳥海山と月山にだけ生育するという貴重な花だ。砂礫地に群生することが多い。「花の百名山」(田中澄江著)にも紹介されている

鳥海山頂御室から鉾立へ

新山頂上をきわめた後、御室小屋付近で昼食とする。昼食後、12:00に出発。下りは雪渓に降りず、尾根筋を歩いて七五三掛まで下る。この尾根筋からは鳥海山の全貌がよく見える。途中、伏拝(ふしおがみ)というところがあった。鳥海山が噴火で登れないとき、ここから遠望して拝んだのだという。文殊岳を経て七五三掛に戻ったのが13:35。ここから御浜小屋までは往路を戻る。

鳥海山・新山頂上(2236m)
山頂には5,6人しか立てないので、写真を撮ったらすぐに降りる

鳥海山・新山山頂付近
鳥海山新山は、1801年(享和元年)の噴火によってできたものである

大平山荘から鳥海山方面を望む
鳥海山吹浦登山口はここから車で5分くらい先のところにある

大物忌神社中の宮
鳥海山頂には大物忌神社があるが、山荘の横にはその中の宮がある

国民宿舎大平山荘
海抜1000mの地点にある。酒田から鉾立行きバス大平山荘下車

吹浦(ふくら)口登山道入口から御浜小屋へ

8月5日、3:40に起床。身支度を整え朝食を済ませ、5時には山荘を出発した。5分くらいバスに乗ると、吹浦口登山道入口に着く。ここでストレッチ体操などをした後、5:15いよいよ登山のスタートである。
登山口からいきなり伝石(つたいし)坂という急坂が続く。体調を整えながらゆっくりと一歩一歩登ってゆく。40分くらい歩くと見晴台に着き、ここで小休止する。大平山荘は遥か下になり、霞んではいるが吹浦方面の海岸線も確認できる。ただ、海と空の境は霞んではっきりしない。

見晴台から日本海方面を望む
少し目を転じると、吹浦方面の平野と海岸線が見える。海と空の境ははっきりしない

見晴台から大平山荘を望む
40分の急登でかなり高度を稼いだ。眼下には山荘が小さく見える

見晴台から先の登りはこれまでよりは緩やかになり、周りの花々にも目を向け、時々は立ち止まって写真を撮ることもできるようになった。鳥海山は高山植物が豊富である。現地ガイドの人にもらったプリントには、鳥海山の花として90種類の花々が列記してあった。夏の間にこれらの花がいっせいに咲きそろうのだから次から次に新しい花が出てきて、ガイドさんが名前を教えてくれるのだが、次から次に忘れてゆくことになる。
次の休憩地「とよ」には標高1500mの標識があった。「とよ」を過ぎると河原宿となり、この辺で鳥海山ではじめての雪渓が現れる。時期によっては雪面トラバースになるようだが、この時期には縮退して登山道にはかかっていない。

河原宿の先は愛宕坂という坂になる。坂を登り詰めると御浜小屋がある。ここからは、眼下に青く澄んだ鳥海湖(鳥の海)が見える。これは旧火山口で、周りを取り囲むのは外輪山である。

御浜小屋から鳥海山頂へ

御浜小屋を過ぎると鳥海山の山頂が姿を現す。旧火山口の外輪山の尾根道をたどってゆくと御田ヶ原に出る。この辺りもお花畑がきれいだ。更に尾根道を行くと七五三掛(しめかけ)に到着する。ここで小休止。七五三掛からは外輪山をいったん下り、大雪渓を経て鳥海山に登りなおす形になる。
雪渓はこの時期でもかなり長く残っている。トラバースにアイゼンをつけるほどではないが、ゆっくりと慎重に進む。雪面上は風が吹くとさすがに冷たい。

七五三掛からいったん谷筋に下る

七五三掛(しめかけ)でしばし休憩

文殊岳より鳥海山を望む
尾根筋では、鳥海山をいろいろな角度から見ることができる

伏拝より鳥海山を望む
噴火で鳥海山に登れなかったとき、ここから拝んだという

奥の細道歩き旅 第2回

鳥海山を彩る花々

御浜小屋近辺には色とりどりのお花畑が広がっている。ここで少々長めの休憩になったので、皆、思い思いにシャッターを切っている。この先の御田ヶ原などにも広いお花畑はあるが、ここで鳥海山を彩る花々を一挙に紹介しよう。ただし、写真があって名前の分かるものに限定するので、鳥海山の花のうちのほんの一部だけである。

芭蕉は羽黒山を発った後、鶴岡、酒田を経て象潟(きさがた)へ向かった。象潟は芭蕉が敬愛する能因、西行法師が歌を詠み、景勝の地として知られていた。酒田から象潟への道は海岸沿いの道で、晴れていれば右手には鳥海山がその秀麗な姿を見せていたはずだが、このときはあいにく雨だったようだ。象潟見物の後、1泊した芭蕉は帰路は酒田まで船に乗っている。このときは快晴で、浪越しの鳥海山が見られたはずだ。
私のこの部分の街道歩きは来年あらためて行うこととして、今回は奥の細道歩き旅・番外編として鳥海山登山の様子を記しておこう。

羽黒山から鳥海山四合目大平山荘へ

8月4日、羽黒山参詣を終えたのち再びバスに乗り、鶴岡、酒田市街を通って吹浦(ふくら)から鳥海ブルーラインに入る。立派に整備された山岳道路で、鳥海山の四合目にある国民宿舎大平(おおたいら)山荘まで一気に上る。ここはちょうど海抜1000mの地点である。ここには鳥海山山頂に祀られている大物忌(おおものいみ)神社中の宮がある。
山荘には16時頃到着し、16:30頃には夕食。風呂に入り、19時過ぎには床に入ってしまった。明朝は5時には宿を出発する。

御浜小屋に着いたのは14:30.ここで小休止した後、下山を開始する。御浜小屋から道が分岐している。我々が朝登ってきたのは吹浦口登山道だったが、復路はここから鉾立口登山道を通って鉾立に出る。
途中、賽の河原というところで最後の休憩をとり、そこから先は道も整備されているので自由に自分のペースで歩いてよいということになった。到着地点にはバスが待っており、レストハウスもあるという。我々5人組は、ビール、ビールと心の中で唱えながら飛ぶがごとく山道を下った。16:10、鉾立に到着。冷たい缶ビールのうまかったこと。本当に生き返ったようだった。
朝5時から16時まで11時間、一人の事故もなく19名のメンバー全員が到着したのは、我々が1本目のビールを飲み終えた後だった。皆様お疲れ様でした。



  



鳥海山・新山頂上を望む
頂上小屋から新山頂上まで往復1時間近くかかる

鳥海山頂上、御室小屋付近
ここには大物忌(おおものいみ)神社がある。月山神社に比べると質素な造りだが、昔から信仰登山者が多かった

雪渓をトラバースした後は、頂上までかなり厳しい登りが続く。頂上に近づくにつれごつごつした岩場になり、段差も大きくなる。ここで私は不覚にも太ももがつってしまった。少しじっとしていたら収まったが、山登りと平地歩きでは使う筋肉が違うのだなと痛感した。頂上御室小屋には10:30に到着した。鳥海山・新山頂上はここから更に20分くらいかかる。ここから先は自由行動になり、しばらく休憩した後、ザックをおいてそれぞれのペースで山頂を目指すことになる。
新山は1801年の噴火によりできた山で、山の歴史から見ればまだ新しい。ごつごつした岩山であるが、コースには岩にペイントが塗られているので、それを忠実にたどれば標高2236mの頂上に達することができる。

雪渓トラバース
アイゼンを必要とするほどではないが、慎重に歩く必要がある

千蛇谷雪渓
山の北斜面になるため雪渓がかなり長く残っている

ミヤマセンキュウ
ミヤマトウキと同じ花の形である。葉の形が違うようだ。独特な葉の香りはない。全体として白い花が大きく見えるので、目につきやすい

鳥海湖(鳥の海)をバックに記念撮影
今回のツアーに参加した5人の仲間たち。平均年齢は61.2歳となる。高年齢といわれる年代だが、自分ではそう思っていない人たちばかりだ

河原宿付近の残雪
時期によっては残雪が登山道にかかってトラバースする必要があるが、このときは縮退していた

「とよ」で休憩
「とよ」は樋で、昔ここから水を引いたのだという。ここに標高1500mの標識があった

御浜小屋
愛宕坂を上り詰めると御浜小屋がある。入口には御浜参籠所という看板がかかっていた。これも信仰登山の名残だろう

愛宕坂を登る
鳥海山は昔から信仰登山が盛んで、この吹浦口登山道は昔からよく使われた。それで昔からの名前がいろいろと残っている

鳥海山を望む
御浜を過ぎると鳥海山・新山がその全貌を現す。頂上は荒々しい岩峰だ

コバイケイソウとクルマユリの群落
いずれも花が大きく、よく目につく。目立つもの同士が群落を作っていた。御田ヶ原付近にて

御浜のお花畑A
やはりミヤマセンキュウ、ハクサンシャジンなどが目立つが、その他の小さい花も見える

御浜のお花畑@
白いミヤマセンキュウ、薄紫のハクサンシャジン、、黄色のウサギギクなど色とりどりの花々が咲き乱れる。

ミヤマトウキ
白い小さな花がたくさんつき、全体としてよく目立つ。葉にはセロリのような香りがある

ハクサンシャジン
薄紫色で鳥海山では比較的よく見られる。群生して花も大きいのでよく目につく

チングルマの花柱
チングルマは高山植物を代表するようなポピュラーな花である
花は白い小さなものだが、花が散った後、長い花柱が残り風に乗って飛び散る