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2006年12月9日

生井英考『空の帝国 アメリカの20世紀』(講談社)

生井氏の著書 『ジャングル・クルーズにうってつけの日──ヴェトナム戦争の文化とイメージ』 (ちくま学芸文庫版)が面白かったので、手にとった。

戦争における「空」に絞って取りあげた、俯瞰図。
戦略的爆撃という言葉のもつ力と実態との距離。 ひとりの人間が、爆撃する側とされる側の両方を経験しても、 「かれ」のなかで2つの行為が結びつかないということ。こういったところが面白い。

近況

仕事で終電を逃すなんて何年ぶりだろう、という程度の忙しさ。


2006年12月10日

ピーター・ストラウブ/ 近藤麻里子 訳『ヘルファイア・クラブ』(創元推理文庫)

幻の作家の代表作に秘められた謎/それに魅入られた彼女に迫る魔手!

(以上、上巻の帯より)

「彼女はその『夜の旅』のファンなんだろうな」と思って読み始めたら全然違った。 彼女は、『ヘルファイア・クラブ』の上巻では『夜の旅』を読んでいない。 謎だけが勝手に押しかけてきて、彼女は迷惑している話、とも読める。

彼女を理解していない年下の夫、すぐに理解して「くれた」夫の知人、 昔の恋人、夫の家に雇われている使用人(というのだろうか)、警官、 いろいろな男との出会いは、 話の筋だけを見るとまるでメロドラマかハーレクインロマンスのようだ。 けれど読んだ印象はまるで違う。爽快ではないが、かなり笑える。3度も続けばギャグだ。

約束は守るが望んだことは行う方法(何度か出てくるので意図的なのだろう)が、 屁理屈みたいで、おかしかった。

買った時はそれほどいいとも思わなかったのだが、 繰り返し聴くうちに馴染んで好きになった。 少しだけ懐かしく、能天気に明るい音が、聴いていて気持ちいい。

track3(Get Closer)、track4(Freedom to Win)が特に好き。