第３章 判定
１） 一般行為判定
クリームパンをおいしく焼く、見事にギターを弾く、保護者に変装する、といったほとんどの行為の正否は【一般行為判定】のルールで判定します。順序は逆ですが、アプローチ判定や論撃で扱わない行為判定が一般行為判定のカテゴリーになると理解してください。
ＲＰＧを少しでもかじったことのある人ならお約束ですが、一般行為判定では「誰でも絶対に失敗せずにできる行為」や「どんな人でも絶対にできない行為」は判定を要せずに成功／失敗になります。前者の例では自転車で駅まで友人を迎えに行く、後者では道具を使わずに空を飛ぶ、などです。特に前者については、急ぎすぎて転ぶ可能性や、交通事故にあう恐れもあると言い募る人もいますが、セッション中の任意の局面でこうした普段は起きない事象が起きるのは、判定というランダム要素に依拠するのではなく、ＧＭの作為であるイベントという形で処理すべきでしょう。
一般行為判定の達成値は次の判定式で求められます。
達成値＝【一般能力カード】＋【関連属性】
達成値が高いほど、その行為はうまくいったということになります。
明確な成功／失敗のある行為の場合、それぞれの判定の際に、行為の難易度の目安としてＧＭが設定する【目標値】について、次のようになります(＝目標値判定）。
【達成値】≧【目標値】…成功
【達成値】＜【目標値】…失敗
また、「急いで家に帰る」のように、単純な成否ではなく、行動の結果に度合いが求められる場合は、達成値の大きさで判断してください（＝達成値判定）。
なお、目標値判定の場合、ＧＭは目標値を事前にプレイヤーに提示するかしないかを選択できます。本作では判定にランダム性のあるダイスではなく、行為者が達成値をコントロールできるトランプを使用するため、ほとんどの局面では目標値を明示しない方がよいでしょう。目標値を明示した場合、その時点で成功が不可能になるＰＣが出ることも想定され、プレイヤーとしては、どうせ成功しないならと低い値のカードを切ることにつながりかねないからです。
また、ＰＣ同士やＰＣとＮＰＣが張り合う場面での判定、いわゆる【対抗判定】では、基本的には達成値の大きい側が勝ちになります。達成値が同じ場合は互角ですが、適合属性を使って判定したキャラがいれば、そちらの勝利になります（より範囲の狭い＝レベルの高い属性を使っている方が優先されます）。なお、対抗判定の場合、判定に用いるカードは裏向きにして場に出し、ＧＭの合図で同時に表にします。
判定はＧＭ、プレイヤーのいずれの側からも求めることができます。
判定に用いる能力はプレイヤーが申告し、ＧＭが適否を判断します。同じ行為の判定を求められても、自分の得意な能力を前面に押し出して判定することが可能です。例えば、「クリームパンをおいしく焼く」という判定なら、「てきぱきと作業する」＝【機敏】とか、「レシピで確認しながら」＝【知性】といったように、ＧＭの認める範囲内で好きな能力で判定できます。
また、判定に属性を用いることができるかは、プレイヤーが申告し、ＧＭが最終判断します。前記の場合、「料理１（知識・実践）」、「調理２（実践）」、「パン作り３」、「クリームパン作り４」は文句無しに適用できますが、「お菓子作り３」や「アンパン作り４」などの近似属性は判断が難しいところです。原則としては、属性のレベルと適用範囲には逆相関関係がありますから、適用できないとしてもよいでしょう。
適用する場合は、属性レベルをそのまま適用するのではなく、マイナス修正がかかります。基本的な考え方としては、「判定内容に最適と想定される属性」と「判定に用いようとする属性」をそれぞれレベルを下げていって（＝適用範囲を広げていって）、共通となったところのレベルから、さらに１下げた数値を適用します。前記の最適属性である「クリームパン作り４」は前述の通り、レベルを下げると「パン作り３」、「調理２」となりますが、「アンパン作り４」も「パン作り３」に下げることができます。「お菓子作り３」であれば、「調理２」に下げられます。このため、それぞれ−１の修正をかけて、「パン作り２」、「調理１」として判定に適用できます。
近似属性のルールが分かりにくい場合、ＧＭの独断で修正をかけても、完全に適合しない属性の適用を認めなくても構いません。
原作第１話で、撃退したはずのクラッシャー・アイアン関がアパートに押しかけてきたシーンを、一般行為判定のルールで再現してみましょう。
アイアン関は「肉体で勝負」と力づくで愛美を連れ去りに着たので、アイアン関の張り手と主人公の耐久力の対抗判定になります。
アイアン関は【体力４】＋【相撲：張り手４】。体力のスートである♣Ｑを出して、１２＋４で達成値は１６になります。一方、主人公は【体力２】で適当な一般属性もなく、♣の手持ちは８が最大。ダブルスコアで敗退し、あえなく気絶してしまいました。