取扱説明書の配慮

 

 ここまで順番に、部品のナンバリングと組立手順との関係を見てきたが、それらはすべて、組立やすさへの配慮からなされた事を理解していただけたと思う。

 しかし、組立やすさはなにも部品と組立手順だけで成り立つモノではない。ここまでずっとゾイドの取扱説明書を使って話をすすめてきたので、その関連として話を締めくくることにする。

 ビガザウロの説明書を見て違和感を持っていただけたであろうか。左は既に何度も見ているビガザウロのメインフレームを止める作業手順番号2の段階である。実は、ビガザウロの説明書は、ゾイドの説明書としては少数派に分類される構成によって造られている説明書なのである。改めて、マンモス、ゴルドス、ここにゴジュラスを加えた、4つの同じメインフレームを持つゾイドの同じ作業手順の部分を見てみることにする。

マンモスの作業手順番号2

ゴルドスの作業手順番号2

ゴジュラスの作業手順番号2

 

 こうして4つを並べると違いをわかっていただけると思う。

 ゾイドの取扱説明書は2色刷りである。ところがこの4つは上二つとした二つで配色の仕方が異なっているのである。上二つ、つまりビガザウロとマンモスでは、メインフレームに色が付いている。しかし、下二つ、ゴルドスとゴジュラスは、今の作業手順番号で新たに組み立てる部分に色が付いているのである。

 

 ビガザウロとマンモスでは、本体のメインフレームの色に準じた2色刷りであり、説明書の他の部分も、メインフレームと同じランナーに付いている、足部品尻尾銃座部品も同じように作業の手順に関係なく色が付いている。このような色の付け方は、少ない色を使いながらもカラー写真で造った説明書を意識したような作りであったことが推測される。当初、ビガザウロとマンモスでは、メインフレーム以外の部品は、白、黒、ライトグレー、ダークグレーのいずれかであり、メインフレーム以外は白黒で十分なモノだったからである。しかし、ゴジュラスとゴルドスでは、メインフレーム自体が、前者がグレー、後者が黒になってしまったため、それまでの配色による説明書を造ることができなくなってしまったのである。かえってそれが、良い方向に転じたのである。結果的に、現在の作業手順番号において、新たに組み立てる部分に色をつけることになり、組み立てることを考えれば、説明書上の見やすさが向上したと言えるのである。

 説明では上から、ビガザウロ、マンモス、ゴルドス、ゴジュラスの順番に並んでいるが、登場順は、ビガザウロ、マンモス、ゴジュラス、ゴルドスの順である。ゴジュラスは、ゾイドがはじまって1年後の登場である。このゴジュラス登場と同時に、ゾイドには「ゾイドストーリー」が設定され、新たに帝国軍という概念が加わってくることになる。その状況も含めると、シリーズの発展に向けてより多くのユーザーを獲得するために、1年間の実績をふまえ、造りやすさを考えた上での説明書の見やすさが考え直されてもおかしくないことである。

 以降の新発売のゾイドの取扱説明書は、現在の作業手順番号で新たに組み立てる部品に色の付いた構成のモノになっていく。ゾイドのメインターゲットを小学生とした上で話をすすめてきたが、そんな彼らでも簡単に組み立てられることをふまえた点では、普通のプラモデル以上に、細かい気遣いがあったのではないかと思われる。

 なお、一部のゼンマイゾイドでは、ゴジュラス以前よりこの方法が採用されていたを最後に添えておく。

 

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ゾイド取扱説明書より転載