2001.8.2 / 8.6, 8.11 追加 / 2002.8.4 追加
以下は福井県内の最近の事例である。
考えられている原因は次のようである。 海でも、たとえば、2000年10月の東京湾でのアオヤギ (バカガイ) の大量死滅のような例がある。海底層での細菌などの酸素
消費で生じた無酸素水塊が沿岸近くに流れたためとされている (青潮)。
私が直接見て遺骸を数えた例として、2000 年の冬
に発生した日本海沿岸 (若狭湾周辺)のハリセンボン Diodon holacanthus (フグ目ハリセンボン科) の大量死がある。
その冬の暖流に乗って流されてきた彼らが日本海の低温にやられた、というものである。しかし ...
中小河川などでとりわけ夏に多く発生する魚の大量死 (斃死、へい死) は現在のところ、確かな (決定的な) 原因は不
明のようである。河川水の分析・死んだ魚の調査などからはそれらの要因は特定されていない事例が多いからである。
原因調査は公的機関 (役所や各地の環境・水産関係研究機関) により為されてはいるものの、その後の確定的発表はほと
んど (というよりまったく) ない。原因の明白な事例は主として有毒化学物質 (この表現も範囲が広すぎて曖昧ではある) の流出である。
いずれの例も水と死んだ魚が県の環境科学センター
に送られている。もっとも、水の採取のし方 (sampling) には問題がありそう (分析化学等の専門家ではなかった)。
このうち、A. とB. について、県の環境科学センターのホームページで
問い合わせてみたが、1年以上たったいまでも何の返答もない。新聞にも続報として載っていなかったし、テレビやラジオ
でも私の見聞きする限り何も伝えられていない。はっきりした原因はわからなかったのだろうか。付近の住民も一般の県民
も知る権利があるし、公的機関はその調査研究を支える住民に対し説明し伝える義務があるはずである。
C: 北陸油化の工場排水 (これは明白だった)
大規模な毒物汚染による魚の大量死の代表例としては2000年1月30日に発生した東欧ルーマニアの金精錬工場からのシアン化合物
と重金属の河川への流出がある。ヨーロッパを流れるドナウ川へとつながる広い流域で大規模な汚染を引き起こしたものである。
D: J: 高温で水量減少の上に酸欠
E: 武生市北府二丁目の化学工場の排水 (大量)
・少し違うが、貧酸素水塊の発生機構
赤潮の発生と有毒渦鞭毛藻類 [北海道大学堀口健雄助教授]
(プランクトン) などの大量産生による魚介類の大量死についてはよく知られているように事例が多い。
・たとえば、ヘテロカプサによる二枚貝の斃死
K. 2000年2月1日計数:午前10時頃、松原海岸と久々子海岸の境目の海岸道路の曲がり角から久々子の
弁天山下の岩礁までの約1300m の区間で 2593 匹の死骸を波打ち際から砂浜全体にわたって確認
した。背はネズミ色、腹は白で大きいものは体長 20cm 、小さいものは 7cm くらいであった。岩礁域から始めて、ジグザグにな
るように歩き、重なりや二度数えをしないようにした。藻や漁具 (網の切れ端など) に埋もれた魚体やあったかもしれない見落と
しを除くとかなり確かである。この日一日の記録である。これ以前に死んで波に再びさらわれたもの、この後打ち上げられたもの
を加えると相当な数に及ぶであろう。さらに、若狭湾全体、近隣沿岸などでの数を加えると少なくとも数万と見積もっても間違い
ではないと思う。
これも、近年の暖冬異変や寒暖の急激な変化などに安易に帰するのはどうかと思っている。県の水産試験場に一部送られたとの
ことだが、その後何の発表もない。
夏の高温・低雨量で川の水量が極端に減少し、水かさが減り (〜10cm 以下) 水温が上昇しやすくなる。魚以外の水草・藻なども 含めた種々の生物も呼吸などの活動を行うため溶存酸素の消費量は増大する。温度が高いほど水に溶ける気体 (酸素) の量は一般 に少なくなるため、夏場の気温の上昇で急激に酸素量が減って体内消費も併せて生物活動のための呼吸ができずに死んでしまう、 というものである。E、の 8月11日付けの福井新聞の記事にもあるように、酸素欠乏へと導かれる 要因に窒素化合物やリン化合物の増加があげられる。そのためにいわゆる「富栄養化」 (各地の湾岸や湖などで深刻) が起こり 、河川の水中、土壌中の微生物を含めた生物数の急激な増加が引き金となる。同記事で、『県環境政策課は「直接の要因とは考 えにくい」としている』 と最後に付け加えているのだが、そんな的はずれでのんきな話ではないと思う。それにより感染症への 抵抗性 (免疫力) の低下が起こったり種々の病原体の発生や増殖を引き起こしていたりするとすれば、「直接の要因」になる原 因だからである。
・ひとつの例: オイカワの生存率に与えるアンモニアの影響環境科学センターからは調査分析結果の発表・公表がないので判断・考察のしようがないが、上記のような簡単な推察が裏付け られるのかはたまた別の要因なのか、早く知り対策を講ずべきである。J、に関して、8月1日の18時40分頃のローカルニュース (福井テレビ) での原因への言及は滑稽であった。『魚が生きていけないような 環境となったため死んだ』 といったものなのである (福井放送も同様 そのニュースの抜粋はこちらに)。 アホか。今時の子供でもそんな間抜けたことは言わないだろう。聞かれたらもう少しましな言い訳や言い逃れをしそうなもの だ。だから、どうして大量に死に至ったのか、頻発する大量死は水や死んだ魚体の分析調査等から何がわかって何がどのくら いで、多数の事例を比較して (2000年以前もかなりあるはず) どういったことが知られているのか、それらを関係づける要因 はなんなのか、なぜその時期にその場所で起こったのか、等々を原因を知りうる事実を数値をすべて挙げて公表すべきなので ある。現在、誰もそういった問いに答えてくれていないのが問題なのである。
上記の福井放送の報道にあるとおり、(水質) 分析結果からは言えないのに、安易な「酸素欠乏」で片づけてしまう県などの姿 勢には疑問を感じる。他に斃死原因としてしばしば言及されるのは、海水と淡水の混ざり合う汽水域で多いとされる病原性バク テリアによる伝染病や似たものとして、急速な環境変化に伴うストレスで弱ったところへの細菌感染、といった疾病がある。 これらも、しかし、その発生原因となると明確ではないようである。ましてや、(G)、H、のように何らかの原因により「酸素欠 乏」となったというおきまりのことばは証明はまずされない状況もある例は多いのだから、わかったことだけでも発表すべきで ある。
有毒な化学物質の流入以外の有力な、そして衝撃的な原因がわかった事例がある。米国 (アメリカ合衆国、USA) での dinoflagellate (渦鞭毛虫類、または、 渦鞭毛藻類[法政大学]) の一種、Pfiesteria piscicida の発見である。その実体は、簡単には、 たとえばここにある (日本語ではもっと簡単に、ここ)。 詳細は
Rodney Barker: "And the Waters Turned to Blood", Touchstone, 1998, reprint paperback, $14.00に書かれている。 Pfiesteria piscicida プフィエステリア・ピスキキダ (フィエステリア・ピシシーダは英語読み) についての詳細は以下のリンクにある。
(渡辺政隆訳:『川が死で満ちるとき』, 草思社, 1998, \2500)
A、C、H、の例では気になる「白濁」の原因がわかっていない。川底の土壌等の採取分析も必要ではない か。日本国内あるいは福井県内特有の要因があるかもしれない。
河川では、たとえば、冷水病 (では大量死はないという) ではないアユのへい死で、
・養殖アユ大量死の原因ウイルス特定などがある。公表される調査結果は数少ないが、ささやかな例として、
・神奈川県のささやかな調査報告1を示すこともできる。現実問題として、海域で発生するような「わかりやすい」原因よりも、中小河川の身近なしか し直接的な環境変化やあるかもしれない疾病の病原体について不安と疑問をすこしでも解消させるべく、徹底した科学的な調査と それらの結果の公表が不可欠である。
・神奈川県のささやかな調査報告2