★大曲指向のなかで






 1980年代の前半からは、オーケストラが団員の急激な増加とともに膨張していき、大曲に次々と挑戦していった時代だったと思います。それまで、せいぜい2管編成のチャイコフスキーくらいが限界だったところから、シベ2、巨人、ロマンティック、幻想そしてマラ5(90年)まで上り詰めて行きます。当時は、何とか全員がステージにのれるように、アンコールにまで選曲に工夫を凝らしていました。たとえば、メインがブラ1で、金管セクションが十分出演できないときは、「星条旗よ永遠なれ」を演奏したほどです。意外ですが、不思議とお客様には大受けだったのです。金管セクションは、当時、金沢大学アカデミアブラスアンサンブル(KUABE)として、アンサンブル・コンテストで何度も全国制覇をしており、オケの一つの大きな特徴をなしていました。堤俊作氏をして「1番うまいのは金管セクションだね!金管はうまいよ」と言わしめたほどです。しかし、オケの中での立場は、やはりそれなりのものでしかありません。


 「エロイカ」はこのような時代のなかで、第7回サマーコンサートとして行なわれたものです。久しぶりに古典派のシンフォニーに回帰した演奏会でした。学生指揮者には、この「エロイカ」の山口氏や花本氏など、大変な才能の面々が活躍しており、オケとしても成長過程の真っ最中でした。この演奏が行なわれたのは石川厚生年金会館でした。音響の酷さで有名なホールなのですが、この演奏では、録音段階でエコーを加えたため、かなり聴きやすい音に録れています。ホールのエンジニアが気を利かせて入れてくれたようです。その当時は、勝手なことをしてくれたと憤慨した記憶がありますが、今聴いてみるとこれで良かったと思います。金管のバランスがかなり強く、当時のオケ特徴が出ています。山口氏の熱演です。


  近く作成が計画されている金大フィル復刻CDのライナーノートとして指揮者の山口氏が執筆されたえぴそーどが登場しました。ご覧下さい。
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第7回サマーコンサート 82/06/27 
厚生年金会館 指揮:山口泰志 コンサートマスター:四条隆幸

ベートーヴェン/交響曲第3番 変ホ長調 作品55
「英雄」フィナーレより

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