20[小雪]しょうせつ 11月23日頃
まだ雪もまばらに降るということで、小雪と呼びます。秋は深まり、 冬到来です。寒さはそれほどでもないのに、遠い山々の嶺には白い雪が眺められます。白銀と天高い青い空のコントラストが、ことのほか美しい季節でもあります。京都では千枚清を清けこみます。

コートが出番
この時期、山合いの街に出かけると、芒が白く輝いている風景に出会い、宮沢賢治の描く銀河鉄道を想い出したりします。
 芒と一緒に風にゆれていた秋桜が姿を消し、山奥にひっそりと咲いていた高山植物も、次のシーズンまでお休みです。
 この小雪の前までが、東京では虫干しに最適な時期です。乾燥した空気を室内に入れて絹のきものの呼吸を助けます。風にあてて、一枚ずつ、ていねいにたたむとき、きものと対話をしてほしいものです。
 夏から秋にかけて着たきものを、もしそのままたたんで仕まっていたなら、汗じみの点検をしましょう。絹はタンスに入っていても、呼吸をし続けていますから、たくさんの空気を送ってあげることで元気になります。
 艶のある緞子地は秋にふさわしい生地だと思うのです。陽の光が足りない分、きものの光沢でそれをおぎなうという考え方。戸外での催しが滅って、シャンデリアの下でのパーティーや会合が多くなるこの季節は、光沢のある生地の方が、着ている人を優雅に優しく見せます。
 それと同時に、古代縮緬などのシボの高い縮緬ものも、おっとりした輝きを持っていますので捨てがたい生地です。
 あでやかな色、こっくりとした深い色、そのどちらもこの季節には映えます。
 下着類はぼつぼつ紅花染めの肌着や湯文字にして暖かく身を包みたいものです。

◇きものは緞子地仁宮沢賢治の銀河鉄道をテーマ仁した、銀色に輝く芒を染めました。帯は銀を主体にした古代文様の袋帯を合わせ、格調の高い装いです。
◇きもの制作/寺田恵美子
◇着る人=藤田みどり
◇帯/同文 小物・草履/秋櫻舎

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