03[啓蟄]けいちつ 3月9日頃
長い間、土の中でゆっくりと冬眠をしていた虫が、陽気に誘われてぼつぼつ地上にはい出てきます。
 穴を啓いて虫が出てくるという意味で啓蟄と呼びます。この虫が驚くのが春雷。寒冷前線が南下し、南の暖気と合わさって雷が鳴りひびきます。
綸子が春めいて
蝶の柄は一年中用いますが、この時期にその柄に手を通すのは、とても洒落ています。 昔から、日本の衣裳は自然界の生きものをいろんな形で柄にしました。どんな小さなものにもエネルギーがあることを知っていたからで、そのエネルギーを与えてほしいと思ったのです。
それと同時に、生きものの生命の尊さを、きちんと形に遣すことも考えたのだと思います。ですから、生きものを柄にしたものは、古代からたくさんあります。
 また『吉事記』にも、「どんな小さな虫にも、神が宿っている」と書かれております。世の中不必要なものはひとつもないということでしょう。
それぞれの命を大切にした私たちの先人たち。その細やかな愛情と感性をこの時代にさらに奥深いものとしていきたいものです。
 この時期のきものの素材は、紬や古代縮緬、綸子や朱子といったもの。そして長襦袢は単衣(袖は無双)にしても季節的には大丈夫。
 半衿は、東雲や明雲がいかにも春の空のように優しさを表わしてくれます。 染め色も春がすみのようなやわらかい色がこの時期にふさわしいようにも思います。 ぼつぼつ桜の花のつぼみもふくらみはじめますが、まだ寒い日や雪の降る日もある天候です。下着類は暖かいものを。

 長い間、上の中でゆっくりと冬眠をしていた虫が、陽気に誘われてぼつぼつ地上にはい出てきます。 穴を啓いて虫が出てくるという意味で啓蟄と呼びます。この虫が驚くのが春雷。寒冷前線が南下し、南の暖気と合わさって雷が鳴りひびきます。

◆きものは総鹿の子の絞りに、蝶の柄を刺網で表わした振り補。帯は古典文様の袋帯。 着る人=大鳥加奈子
◆赤い長襦袢は女性の憧れ。一度は手を通してみたいもの。選び方のコツは、黒っぱい赤を選ぶと、どんなきものにも合います。つまり「京染の紅」。

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