（ゆうしめいやくぶんしょ）
１９３４年（昭和９）夏に勃発した国粋新報事件に端を発して、管長金光家邦の辞職退任を求める信奉者の全教運動の中核であった金光教有志盟約とその声明・陳情・宣言及び決議等の文書を、その成立順にしたがって掲げる。
（Ａ）有志盟約成立までの文書類
① 小林教監の管長宛の覚書 ② 支部部長の進言書 ③ 議員有志の声明書
① 金光教有志盟約 ② 金光教青年会連合本部の宣言・決議・申合 ③ 金光教信徒団の宣言・決議・自決理由書
（Ｄ）諭告及び教監通牒
覚書
一、大教会所広前奉仕ハ御神業タレバ神聖ニシテ犯スベカラザルコト
一、大教会所会計ハ道ノ浄財トシテ金光家総事務所ニ於テ厳正ニ取扱ハシムル
コト
一、教監輔佐ノ責任ヲ明ニシ公正ナル教政ヲ行ハシムルコト
管長職印ハ教監ニ於テ保管セシムルコト
一、金光家々憲ヲ速ニ定メ教門教族一心同体ノ実ヲ挙ゲシムルコト
以上
昭和九年十月七日
進言書
拙職等ハ国粋新報記事其ノ他ニ関連シテ図ラスモ曝露セラレタル今次ノ重大問題
処理ニ関シ慎重熟議ノ上別紙二案ヲ決議シ両者中其ノ一ヲ採択セラレ速カニ本教
ノ時患ヲ匡救シ克ク積年ノ禍根ヲ裁断シ以テ吾人使命ノ達成ニ邁進センコトヲ期
ス
幸ニ苦衷ノ存スル所ヲ賢察セラレ之ガ素志貫徹ニ御尽力相仰度右進言候也
昭和九年十月十二日
（各支部正副部長連署１６名～略す）
金光教本部教監 小林 鎮 殿
（別紙）
一、 管長ハ事態ヲ今日ニ誘致スルニ到リタル責ヲ痛感シ速カニ現職ヲ退キ教
ノ内外ニ亘リテ人心ヲ安定シ以テ神明霊鑑ニ対シ奉リテ畏謝ノ至誠ヲ明カ
ニセラルベキヲ至当ニシテ緊要ナリトス
一、 管長ハ事態ヲ今日ニ誘致スルニ到リタル責ヲ痛感シ教ノ内外ニ亘リテ人
心ヲ安定シ以テ神明霊鑑ニ対シ奉リテ畏謝ノ至誠ヲ明カニセラルゝガ為メ
速カニ左ノ事項ヲ決行セラルベキヲ至当ニシテ緊要ナリトス
（イ）現管長ハ其ノ職名ヲ存続スルニ止リ職務権限並ニ大教会所ニ関スル
教務ノ全部ヲ挙ゲテ之ヲ教監ノ職ニアルモノニ代行セシメラルゝコト
（ロ）現管長ハ大教会所ノ御神勤並ニ御神務ニ対シテハ一切之ニ関与セラ
レザルコト
（ハ）現管長ハ大教会所会計ニ関スル規程ヲ承認セラルゝコト
当該規程ハ正副管長両家ノ代表者各一名、教監専掌、支部部長並ニ三
級以上ノ教師ヲ以テ組織スル会議ニ於テ決定セラルゝコト
（ニ）現管長ハ右三事項ヲ確保スベキ覚書ヲ作製シ副管長及教監之ヲ連署
シテ各々其ノ一通ヲ所持セラルゝコト 以上
声明書
一、 昭和九年十月八日小林教監ガ拙職等ニ言明セラレタルガ如ク本教信仰ノ
中心ヲ傷ケテ一教ノ信仰ヲ攪乱シ本教ノ柱石ヲ誣ヒテ全教ノ生命ヲ毀損セ
ントセシ今回ノ不祥事件ガ現管長並ニ其周囲ノ陰謀ニ基因スルモノナル以
上カゝル不信不義ノ徒ヲ一教々務ノ首長ト仰グハ神人共に許サヾル所ニシ
テ他方管長自身其ノ罪ヲ内外ニ謝シ将来更正ノ余地ヲ存セシムル為本部当
局ハ速ニ管長ノ職ヲ辞セラルゝヤウ処断セラレンコトヲ要望ス
二、 非常時局ニ際会シ国家ノ前途倍々多難ナラントスル今日信忠一本ノ教義
ヲ奉ズル本教ハ当ニ全力ヲ挙ゲテ奉公ノ至誠ヲ效スベキ秋ニ在リソ今日ノ
事態ヲ惹起シ一教ノ布教活動ノ元気ヲ阻碍シツゝアルハ真ニ国ト道トニ対
シテ相済マザル所ナリ本部当局ハ速ニ此空気ヲ一掃シ全教ノ廓清ヲ期シ上
下各自清明ナル意気ヲ以テ其ノ本務ニ奉仕シ得ルヤウ万全ノ措置ヲ講ゼラ
ルベキコトヲ要望ス
三、 本部当局ニシテ理義明白ナル今日ノ事態ニ対シ尚徒ラニ狐疑逡巡ヲ事ト
センカ内外ノ情勢ハ更ニ悪化スベク真ニ一日ノ遅滞ヲ容サザルモノアリ若
シ吾等ノ要望ニシテ聞カレズンバ吾等ハ最早本部当局ヲ信任スルヲ得ズ道
ノ為暫ク恥ヲ忍ヒテ主務大臣ニ陳情シ政府ノ裁断ヲ仰クノ途ニ出ヅベク而
モ其ノ責任ハ本部当局ノ自ラ負フベキモノナルコトヲ予メ覚悟セラレタシ
右声明ス
昭和九年十月十二日
金光教議会議員有志
和 泉 乙 三
関 口 釣 一
福 田 源三郎
以上の３通の文章は、小林内局総辞職に至った経緯を、『本教に於ける不祥事件の真相と其経緯』と題して全教会長に配付された冊子に、掲載されているものである。
一、金光教有志ハ金光教本部ニ於ケル多年ノ積弊ヲ根本的ニ革正シ御礼信行
会ノ精神ヲ更ニ発揚シテ一教ノ浄化ト各自ノ更正トヲ期センガ為メ本盟ヲ
ナス
二、金光教有志ハ前項ノ主旨ニヨリ昭和十年一月以降文部大臣陳情書ニ署名
調印セル各教会長ヲ以テ其ノ同志トス
三、金光教有志ハ其ノ結束ヲ確保シ其ノ運動ヲ敏活ナラシメンガ為メ東京市
神田区和泉町一番地ニ中央連聨絡事務所ヲ各教区枢要ノ地ニ地方聨絡事務
所ヲ置ク
四、聨絡事務所ニ委員ヲ置キ諸般ノ事務ヲ処理ス
五、中央委員ハ常ニ各地ノ情勢ニ注意シ其ノ聨絡統一ヲ図ルト共ニ文部省並
ニ金光教本部ニ対スル折衝ノ任ニ当ル
六、地方委員ハ地方ニ於ケル同志相互ノ聨絡統制ヲ図リ中央委員ノ指示伝達
並ニ中央委員ニ対スル情勢報告ノ任ニ当ル
七、金光教有志ハ所期ノ祈願達成ヲ待チテ本盟約ヲ解ク
八、本盟約遂行ニ要スル経費ハ金光教有志ノ任意醵出ノ金品ヲ以テ之ヲ支弁
ス 以上
昭和十年一月三十一日
金 光 教 有 志
宣言
我等金光教信徒ガ仰イデ以テ信仰ノ淵源トナシ我ガ金光教団ガ拠リテ以テ存立
シ得ル中心生命ハ実ニ教祖立教以来厳然トシテ存続セル大教会所神勤奉仕ノ事
実ナリ コノ神勤奉仕コソ深遠ナル神慮ノマニマニ世々相承ケ相伝ヘテ永恒渝
ルコト無カルベキ教祖ノ神業ソノ儘ノ姿ニシテ正ニ本教霊徳ノ輝キ出ヅルトコ
ロマタ全教尊信ノ帰着スルトコロタリ 即チ救世ノ大業是ニ依リテ初メテ顕現
セラルゝトコロニシテ凡ユル人為ト俗意トヲ超越シ何人ト雖犯スベカラザル絶
対神聖ノ御業ナリ
然ルニ測ラザリキ 此聖業ニ対シ私情ヲ以テ之ヲ冒シ俗心ヲ以テ之ヲ害ハント
スル者アラントハ コノ事已ニ痛恨ノ極ナリ 而モソノ冒涜者ガ本教教政ノ首
班タル人其人ナラントハ 教祖ノ霊光為ニ掩ハレ教団成立ノ本義将ニ傷ケラレ
ントス 我等奉教者タルモノ如何デカ座視スルニ忍ビン 乃チ同信相率イ同志
相携ヘ心魂ヲ尽シテ神霊ニ祈願シ益々信心ノ興隆ヲ計リ以テ教団ノ浄化粛正ニ
寄与セントス
而モ今ヤ国家ノ非常時局ニ際会シ奉教護国ノ赤誠ヲ抽ヅベキ秋ナリ 全教一致
立教ノ神意ヲ畏ミ一日モ速ニ所願ヲ達成シ以テ教祖ノ霊鑒ニ奉答セン事ヲ期ス
決議
一、現管長ノ所為ハ教祖立教ノ神意ニ背反ス 仍テ速ニ管長ノ職ヲ辞スベシ
一、大教会所神勤奉仕ノ神聖ヲ明徴ニシソノ尊厳ヲ確保スベシ
一、大教会所浄財ノ帰属ヲ明カニシ以テ会計制度ヲ確立スベシ
一、教治ハ全教ノ公論ニ基キテ之ヲ行フベシ 背信的独断専行ヲ絶対ニ排ス
一、教務ノ公明ヲ期スルタメ教治ノ機関ニ信徒ノ代表者ヲ参加セシムル道ヲ
拓クベシ
昭和十年四月
申合
一、本宣言及決議ノ精神ニ則リ青年信徒ハ祈ヲ一ニシ行ヲ倶ニセンコトヲ宣誓
ス
一、教団粛正祈願ノタメ来ル四月廾一日ヲ期シ大教会所ニ参拝シ霊地ニ於テ金
光教全国青年信徒大会ヲ開催ス
昭和十年四月
宣言
靜思センカ。夫レ昨秋我ガ光輝アル教団ニ、妖火ノ揺ギテヨリ約半歳、日ヲ逐
ウテ拡大セシ今次ノ紛糾ハ、内ニアリテハ教祖立教以来百年ニ垂ントスル聖史
ヲ汚辱シ、外ニ於テハ本教存立ノ真意義ヲ疑ハシメ、其ノ声誉ヲ失墜セシムル
ニ至レリ。コレ実ニ教長ノ職ニ在ル者、不明且ツ不徳ニシテ、有徳ノ士ハ徒ラ
ニ之ヲ斥ケ、奸佞ノ徒ハ阿ネテ以テ之ヲ招キ。教治ニ当リテハ独断専行ヲ事ト
シ、而モ尚、夫等ヲ以テ足レリトナサズ、更ニ進ミテハ、我等ガ信仰ノ最高目
標タリ至大ノ憬仰ヲ捧グル「大教会所御広前」ノ神聖ヲサヘ、冒涜セントスル
ノ虐戻ヲ企テシ結果ニ外ナラズ。即チ其ノ責ハ、挙ゲテ以テ自ラ負フ可キヲ然
リトナス。
然ルニ管長金光家邦氏ハ、未ダ迷夢ニ弄惑サレ、全カラザル教則ニ藉口シテ、
恋々其ノ職ニ止マリ、囂々タル信徒ノ声ニ聴カズシテ、其ノ言行ヲ改メザルナ
リ。
稽フルニ、教祖伝編纂委員会ノ設ケラルゝヤ之ヲ葬リ、或ハ制度調査委員会ヲ
抂ゲ、或ハ教祖四十年祭ヲ紕リ、又大教会所復興造営事業ハ、既ニ炎上後十有
余年ヲ閲スルモ未ダ其緒ニ就カズ、献納セラレシ百数十万円ノ浄財ハ、其ノ使
途明示ヲ憚リ、又近クハ本教時局ニ対スル、上監督官庁ノ切々タル勧告ヲモ擯
ケテ其ノ指示ヲ蹂躙セル等、批政ヲ行ヒ不信ヲ犯シテ恬然タル、其他数フルニ
遑ナキ非行ヲ観テハ、実ニ我等痛憤ヲ禁ズルコト能ハズ。
斯クテハ何ゾ管長タルノ威ヲ持シ、我等全信徒ノ尊崇ヲ聚メ得ンヤ。
其昔、教祖立教ノ聖域ト誇リシ木綿崎山ニ燿々タリシ教旗、今ヤ暗雲ニ蔽ワル
ゝヲ眺メテハ、速ニ之ヲ掃払センコトヲ欲ス。
乃チ我等ハ立教ノ精神ヲ耀シ、聖史ノ矜持ヲ確保センガ為メ、敢テ本大会ヲ開
キ、其ノ決議ニ邁進シ、以テ所願ヲ達成センコトヲ期ス。
右宣言ス。
昭和十年四月二十八日 金光教全国信徒大会
決 議
一、我等ハ一教ヲ統率スルノ徳能ナキ現管長ヲ絶対ニ信任セズ。仍テ金光教参
百萬信徒ノ名ニ於テ、管長ノ即刻辞職ヲ求ム
一、「大教会所御広前」ノ神聖ヲ誓ヒ、其ノ尊厳ヲ永久ニ保持スベシ
一、教治ハ全教ノ総意ニ基キテ之ヲ行ヒ、独断専行ヲ絶対反対ス
一、速ニ教規教則ノ整備ヲ図リ、特ニ会計制度ノ確立ヲ期スベシ
一、教祖立教ノ大精神ニ則リ、教団粛正ノ実ワ挙グベシ
右決議ス
昭和十年四月二十八日
金光教全国信徒大会
我ラハ一教ヲ統率スルノ徳能ナキ現管長ヲ絶対ニ信任セズ仍テ金光教参百萬信
徒ノ名ニ於テ即時辞職ヲ求ム
自 決 理 由 書
抑々本教ハ教祖金光大神ノ道ニシテ、ソノ御様ハ今猶御広前御結界御奉仕ノ御
姿ニ仰ギ、ソコニコソ我ラハ信仰ノ中心生命ヲ見出シ、現身ニ我々ハ教祖ノ御聖容
ヲ拝シ御声ニ接スルノ感激ヲ代々相承ケ給フ御広前金光様ニ於テ見出シ能フ。
翻ツテ考ヘンカ、管長金光本家妾腹ノ出ナルニ不拘、位、一教ノ首位ヲ極メ、富、
巨万ヲ築ク、而ルニ何ヲ以テカ全国信徒ノ総意ニヨリ自決ヲ求メラレ、又教師ニ背
カルルヤ。
徒ニ信徒ノ浄財ヲ私シ、奸佞ノ徒ヲ駆使シ、ソノ生活タルヤ実ニ本教信仰ニ反スル
コト多シ。先ニ六萬円事件起ルヤ塵一ツダニ出資セズシテ冷淡氷ノ如ク、背信行為
ヲ敢テ行ヒ、偶々国粋新報事件アリテ大教会所御広前ヲ冒涜シ、自己ノ非行暴戻ヲ
暴露セルノミナラズ、後ニハ監督官庁ノ熱誠ナル理解ヲモ蹂躙シ以テ是ヲ煩ハス事
一再ナラズ、加フルニ百萬信徒ノ苦衷ヲ嘲笑シ、教団ヲ私有視ス。ソノ罪条挙ゲテ
数フベカラズ。コレ不信不忠ニアラズシテ何ゾヤ。信忠一本ヲ生命トスル本教教是
ニ背クモノ是ニ過グルモノ無カランヤ。斯クテハ教祖ガ百年ノ後ニ残シ給ヒシ聖典
ニモ悖リ、教賊ト譏ラレ、或ハ又管長狂ヒタリト世ニ喧伝セラルゝモ又宜ナル哉。
何ゾ苦ンデソノ職ニ恋々タルヤ。我ラハ徒ニ徒党ヲ組ミ事ヲ構フルモノニアラズ、
朝ニ國ヲ思ヒ夕ニ道ヲ憂フルニ切ナルノミ。管長モトヨリ一世管長ノ庶子ト雖モ、
血ヲ教祖ヨリ分ケ与へラレタルモノニ非ズヤ。然ルニ何スレゾ教祖ノ御徳ニ背キ、
父ヲ辱シメ、教団ヲ潰滅ニ帰セシメントスルヤ。宜シク其罪ヲ先ズ教祖ニ謝シ而ル
後天下国家ニ謝シ、速ニ職ヲ辞シ自決セラルベシ。
右勧告ス。
昭和十年四月二十八日 金光教全国信徒大会
金光教管長
金 光 家 邦 殿
この「自決理由書」の文中にみえる六萬円事件とは、御蔭橋の架橋工事費を本教関係者が負担するに就いて、管長は自らが関与しなかったことであるとの理由で、拠出をしなかった。したがって、金光町と教団本部との仲介者であった佐藤範雄は困惑し窮地に立ったが、副管長金光攝胤が資金を拠出して、本教の面目を保つことになった経緯を指すものと思われる。
管長金光家邦の辞職・解任を求める陳情に対して、紛争解決の指令を発し、岡山県知事多久安信に委任して調停に当らせた。以下にそれらの文書をかかげる。
① 金光教内紛ニ付指示セル制度改善案
一、大教会所ノ収支ヲ明ニシ会計制度ヲ改善スルコト
（註）大教会所ノ収入ハ凡テ一旦之ヲ財団ニ受入レ、財団予算ノ定メル所
ニヨリ大教会所ノ費用、大教会（所）復興資金、金光教本部ノ費用
及一般ノ布教興学ノ資ニ充ツルモノトス
二、教監ノ責任制度ヲ確立スルコト
（註）専掌以下ノ職員ハ教監ノ具申ニ基キ任命スルコトトシ教監ヲシテ教
内ニ対スル教務上一切ノ責ニ任セシム
三、管長ノ肉親ノ者ハ教派ノ要職ニ就カサルコト
（註）世襲管長制ノ下ニアリテ管長ノ肉親者要職ニアルトキハ累ヲ管長ニ
及スノオソレ多キヲ以テナリ
この宗教局長の指示事項は、１９３５年（昭和１０）１月１９日に教監阪井永治・専掌今田周吉・同片島幸吉・同濱田幾治郎を文部省宗教局に招致して指示したものであるが、すでに１月１７日に阪井教監は総辞職の辞表を管長に提出していたので、教内一般は周知しなかった。
更に同年５月１３日に至って、有志盟約代表の交渉過程で、次ぎの「管長ノ肉親ノ範囲」についての文部当局の補足指示の回答があった。
② 管長ノ肉親ノ範囲ハ左ノ如シ
一、管長ノ子及兄弟
二、管長ノ姉妹ノ配偶者ニシテ金光ノ姓ヲ冒セル者
三、管長ノ叔伯父及甥ニシテ金光ノ姓ヲ冒セル者
③ 文部大臣より調停を委任された多久安信知事は、有志盟約代表の意見聴取の後、同年４月１１日に管長を岡山県庁官舎に招致して、折衝の結果、次のごとき覚書を管長との間に交換し、紛争解決の具体策を示した。
覚書（第一号）
一、金光文孝教監ハ四月十三日迄ニ之ヲ解職スルコト
ニ、佐藤宿老ノ栄称辞退書ハ四月十三日内ニ返却スルコト
三、後任内局（教監専掌等）ノ組織ニツイテハ佐藤宿老ノ意見ヲ徴シ之ヲ行
フコト
四、金光教改革ニ就キ文部省ニ於テ指示セル事項ハ新内局ノ成立ヲ待チ速ニ
其ノ具体案ヲ樹立スルコト
五、人格上非難アル人物ハ教務ニ関与セシメサルコト
六、昭和十年四月七日付諭告及通牒ニ因ル人事ニ関スル処分ハ之ヲ行ハサル
コト
七、前記ノ事項ハ管長ニ於テ速ニ誠意ヲ以テ解決ニ当リ其実現至難ナル場合
ハ責ヲ負ヒ職ヲ辞スベキコト
右各項ハ昭和十年四月十一日岡山県庁知事室ニ於テ岡山県知事及ビ金光教管
長合議ノ上決定シタル事項ヲ実行スル為メ覚書トシテ認メタルモノニシテ両
当事者署名各一通保管スルモノナリ
昭和十年四月十一日
金光教管長 金光家邦 印
岡山県知事 多久安信 印
覚書（第二号）
来ル四月十四日知事官舎ニ於テ管長宿老其他重ナル関係者会合ノ上円満解
決ヲ図ルコト
昭和十年四月十一日
金光教管長 金光家邦 印
岡山県知事 多久安信 印
以上の２通の「覚書」を認め、両者の間で交換されたが、管長金光家邦が期日を過ぎても実施しないので、岡山県知事は、抗議の意味でこれを公表し、その履行を求めた。なお、第一号覚書の六項の「諭告・通牒」は、次ぎの如くである。
諭 告
今ヤ本教ハ未曽有ノ難局ニ逢着ス。立教ノ神意那辺ニアリシカヲ疑ハレ教義ノ
実修空弦ニ過キサリシカヲ危マルゝニ至ル。
教治ヲ妨ケ統制ヲ害ヒ尚之レヲ信者ニ及シ一教依立ノ根基ヲ覆スニ非スンハ底
止セサルカノ観アラシム。今ニシテ大ニ粛正ノ方途ヲ講セスンハ其ノ趨ク所竟
ニ拯ヒ難キニ至ランコトヲ懼ル。偶々此ノ渦中ニ立チテ年次教績ヲ奉告スヘキ
恒例大祭ヲ迎フ。何ノ面目アリテ教祖ノ神霊ニ対面センカト恐懼慚愧極マリナ
キモノアリシモ本ヲ執テ道ヲ開ク者ノ責任ヲ自覚セシメラゝルト共ニ深夜神裁
ヲ仰キテ奮然決意スル所アリシナリ。
然リト雖モ平和円満全教一家ハ教祖以来矜持スル所ノ教風ナリ。今モ尚反省自
重ヲ望ミ正道ノ復軌ヲ祈リテ止マサルモノナルカ改ムルヲ知ラス帰ルヲ忘レテ
背馳ヲ継続スルニ於テハ教規ノ命シ教則ノ定ムル所ニ従ヒテ暫ク処断スルノ外
ニ途ナカラン。
如何ニ奉教至誠ノ激発スル結果ナリト雖モ事自ラ分アリ度アリ為ニスル所アラ
ントスルモノハ別トシ眞ニ教祖立教ノ神意ニ奉答ヲ期シ道ノ将来ヲ憂ヒテ止マ
ル者ハ本教者タル平素ノ信念ヲ喚起シ確信以テ道ニ処シ至誠以テ教ヲ奉シ同信
相激マシ率先範ヲ示シ神皇ノ大恩ニ奉答スルト共ニ百年ノ教基建立ニ邁進セン
コトヲ期セヨ。
昭和十年四月七日
｜◯監第五号
曩ニ再次通牒ヲ発シ本教目下ノ時局ニ対シ当面善処ノ急ナルヲ告ケ意ヲ尽シテ
正道ヘノ復軌ヲ希望致置候ニモ拘ラス殆ント其ノ実ノ挙ラサルノミナラス日ヲ
経ルニ従ヒテ中正ヲ失イ常軌ヲ逸スルコト益々甚シク本教者トシテハ固ヨリ世
間一般ノ通義上ヨリモ許ス可ラサル言動ヲサヘ敢テスル者アルナト憂慮措ク能
ハサル所ニ有之今ニシテ之カ適当ノ措置ヲ講スルニアラスンハ終ニ教基ヲモ危
クスルモノアランコトヲ恐レ候就テハ反省ヲ求メテ之ヲ肯セス出頭ヲ促シテ之
レニ応セス若クハ依然統制ヲ紊シ教治ヲ妨ケテ改メサルモノニ対シテハ平和円
満ヲ旨トスル教風上遺憾此上ナキコト乍ラ予テ教制ノ定ムル処ニヨリ処断セシ
メラルゝヤモ計リ難キニ付御了知置相成度尤モ右手続後ト雖モ反省ノ実認メラ
ルゝ場合ハ即時之レヲ取消サルゝ様取計可致此段通牒候也
昭和十年四月七日
金光教本部
教監 金 光 文 孝
金光教各教会長殿