King's Cafe 2号店
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タイトル「キーケロカーの冒険」
[第5章]

森のなかでそれぞれに奇妙な体験をしてきた三人が、ようやく森を抜けて、再会した。

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森の出口の大喧嘩

それぞれに奇怪な体験をしたキーとケロは、その後も森のなかを歩きつづけた。いいかげん疲れて、おなかもすいたころ、ようやく、それまで、空を隠していた木々の枝が消え、夕焼け空がみえ始めた。
 最初に森を抜けたのはケロだった。
「ふぅー。疲れた疲れたケロ。キーは大丈夫かな。だいたい、俺たちを案内するといったカーの奴はどこへいったんだっ。おーいカーどこにいるんだぁー。まっ黒けのカラスのカーを知りませんカーってんだケロ」
「やい、いまなんていったぁっ」
 カーがケロの頭めがけてすごい勢いで飛んできた。ケロは危うく頭に穴があくところだった。
「なにいってんだケロ。おまえの道案内がなってないから、おいらはもう少しでクマに食われるところだったんだケロ。いままでどこで油を売ってやがったまっ黒カラスめっ」
「あっ、またいったな。あたしがいちばん気にしていることを」
「おまえがあやまらないなら何度でもいってやるケロ」
 ケロはボムと白い煙を上げて、カーそっくりのカラスに化けた。
「あーーーーー。わたしはそんなに黒くないぞカー」と、カーは顔をまっ赤にして(いるのだが、わからない)、ケロに飛びかかっていった。山の上の広々とした草原でケロとカーは喧嘩を始めてしまった。
 カーが太いくちばしでケロの頭をヅンヅンとつついているころ、キーがようやく森からでてきた。
「わーひろいところだな。おいらは森は好きだけど、ずうっと森にいるとなんだかこう自分が猿じみちゃっていやんだよなぁ。たまには原っぱもいいねキー」
 曲がった腰をポンポンと叩いて、一息いれている。
「なんだぁ。ばたばた騒々しいあの黒い固まりは」
 近寄っていくとそれは二羽のカラスだった。
「ははぁーん。カーの奴が、ほかのカラスのなわばりにはいって、喧嘩にでもなったんだな。助けてやるとするか。でも、どっちがカーなのか。そっくりだねぇこりゃ」
 のんびり眺めているキーをよそ目にケロとカーは喧嘩をつづけている。いまでは、カーもどっちが自分なのかわからなくなってきていた。
 キーは黒い固まりに近づいていくと声を掛けた。
「まっ黒けーのカーさん」
「なんだってっ」
 黒い固まりが突然ふたつに割れた。
「あれま、ほんとに似ているキー」
「なんだぁ。キーじゃないカー」
「無事だったのかケロ」
「あっ、おまえはケロか。なんでそんな格好で喧嘩なんかしているんだ」
「なんでもかんでも、こいつがいきなり飛びかかってきたんだケロ」
「おまえがいやなことをいうからじゃないカー」
 また、喧嘩を始めそうなケロとカーのあいだにはいって、キーはのんびりとした声でいった。
「そんなことより、おいらは、森のなかで、しゃべる石にあったんだキー」
「しゃべる石かい。わたしゃおしゃべりな木にあったよ。それでね、話を聞いてやったら、これをくれたんだカー」といって、サンゴ玉をだしてみせた。
「えっおまえもかい。おいらは石の奴にこれをもらったぜ」と、キーは黒い球をだした。
「ずいぶんとのんびりとした道中だったんだなおまえら。おいらはクマに食われそうだったっていうのにぃっ」
「おまえなんか食われちまえばよかったんだカー」
「なにおぉっ。ケロケロ」
「まぁまぁケロ。無事だったんだからいいじゃねぇか。それにクマをやっつけるなんざ、さすがにケロだ」と、おだてられて、ようやくケロも機嫌を直したようで、「おいらはそのやっつけたクマからこいつを取り上げたケロ」といいながら、黄色い球を取りだした。
「なんでもこいつ一粒で一冬なにも食わないでも生き延ることができるそうだケロ」
「ふーん。おいらのこの黒い球は、絶体絶命ってときに飲むと効く薬らしいキー」
「あたしのこのきれいな紅い球は魔除けだって話だよカー」
「ま、とにかく先を急ごうぜキー」


(第5章完)
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