頭寒足熱 腹八分

野口整体 気・自然健康保持会

主宰 金井省蒼

 

1、頭寒足熱 温めて体を整える

『月刊MOKU』2007年2月号
頭寒足熱 温めて体を整える
より

    

 古来より、健康法として「頭寒足熱・腹八分」ということが言われてきましたが、野口整体創始者の野口晴哉先生は、これを「気張ラズ・怠ケズ・欲張ラズ」と言い換えておられました。心のあり方と健康との関わりを象徴する言葉だと言えましょう。今回は、「頭寒足熱」のことを取り上げてお話しようと思います。

  

 頭(脳)と足は深いつながりがあり、特にアキレス腱はある人物の弱点について「あれが彼のアキレス腱だ」というほど体の急所でもあり、頭の状態が強く現われる場所です。からだ言葉で、そわそわして落ち着かないことを「浮き足立つ」と言いますが、心、頭の中が落ち着いていないと、アキレス腱が縮んで踵が上がってしまうのです。
 その反対は「地に足が着く」で、頭が落ち着いて働く状態であれば、アキレス腱が伸びてしっかりと足の裏全体で立つことができます。最近、論理や知識、情報分析ばかりの頭先行型の人が増えていますが、より生産的な頭の使い方をするためには、やはり「地に足が着いた」状態でなければなりません。

 

 頭の緊張は全身に影響が及び、都会に住む現代人が抱える疲労感、倦怠感はそれが原因となっていることがほとんどです。仕事内容も、体は使わずに頭だけを使い、パソコンなどで眼を酷使するという生活で、頭だけが疲れて「頭寒足熱」ではなく、「頭熱足寒」になっているのです。
 布団に入っても、足が冷たくて寝付けない時がありますが、アンカなどを入れて足が温まると寝付きが良くなります。足を温めて頭の緊張がゆるむと、神経が静まって全身がゆるみ、休まるようになるのです。
 最近、野口整体の方法ではなくても、足湯は注目されており、全国的に温泉地の駅では足湯コーナーが増えているようで、頭脳労働に偏る現代では、その気持ち良さを感ずる人が増えているのでしょう。
 今回ご紹介する部分浴は、頭の緊張が現われた体の部分を温めてゆるめ、その影響で全身に感じていた疲労感をなくすことができる、やさしい方法です。
 頭の緊張は、足首だけではなく、手先、肘、といった部分にも、冷たさやこわばりとして現われます。まず、その部分に触れて、自分の体がどんな状態にあるかを確かめてみてください。全身に疲労を感じている時は、体の感覚が鈍っているので、「意識して体に触れ、感覚を確かめていくこと」が大切です。

  

 野口整体では、風邪を自然経過させるのですが、風邪を引いて喉に来ている時は足湯、お腹に来ている時は脚湯をすると、効果があります。また肘湯は頭の切り替えにも役立ちます(→足湯・脚湯・肘湯
 部分浴をしている時間は、なにもかもから離れて、自分のためだけに過ごす時間にしてください。そして、「自分が体をどう感じているか」に、注意を集めて、体の部分と全体のつながりを感じてみてください。
 人によってさまざまですが、部分が温まってくると同時に、肩や頭が軽くなったり、全身が温まるなどするのが感じられます。部分浴をしている最中や直後にこんな感じが分からなかったら、次の日の朝、起きた時の体の感覚に注意してみてください。

 疲れている時は、部分浴をしただけでも、湯船に浸かったときのように思わず「はーっ…。」と息をつくでしょう。この時、「はーっと息を吐く」ということにも体の緊張をゆるめるための大切な意味があります。吸うことよりも、ゆっくり吐くことのほうに注意すると、より心が鎮まり、緊張がゆるみます。

 補足ですが、ストーブやヒーターなどを背中に当て、腰からお尻にかけてを温めると、じっくりと体の芯から温まって頭が休まります。寒気がする時や、女性の方は月経時に行うと体が楽になり、おすすめです。

 

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