正座は日本固有の美風なり。
正座すれば心気自づから丹田に凝り、我、神と偕(とも)に在るの念起る。
正座は正心の現はれなり。
正座とは下半身に力を集め、腹腰の力、中心に一致するを云ふ。
下半身屈する時は上半身は伸ぶ。
上半身柔らげば五臓六腑は正しく働くなり。
正座せば頭寒にして足熱なり。
正座する時は腰強く、腹太くなるなり。(中略)
正座は正心正体を作る、正しく座すべし。
中心力自づから充実し、健康現はれ、全生の道開かる。
日本人にして正座を忘るゝもの頗(すこぶ)る多し。思想の日に日に浅薄(せんぱく)軽佻(けいちょう)となり行くは、腹腰に力入らざるが故なり。(中略)
腹、力充実せず、頭脳のみ発達するも如何(いかが)すべき。
理屈を云ひつゝ罹病(りびょう)して苦悩せるもの頗(すこぶ)る多し。
智に捉(とら)はれ情正しからず、意弱くして、専(もっぱ)ら名奔利走(めいほんりそう)せるものの如何(いか)に多きぞ。
先進文明国の糟粕(そうはく)を嘗(な)め、余毒(よどく)を啜(すす)りて、知らず識らず亡国の域に近づきつゝあるを悟らざるか。
危(あやう)い哉(かな)、今や日本の危機なり。