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「桜の花」

「桜が咲いた」というフレーズで始まるスリランカの歌。バブル以前、世界を日の出の勢いで追い抜き掻き回していた頃の日本がスリランカの人にはどう写っていたか? この曲の感じからその雰囲気が分かりますか? 


 この歌はナンダー・マーリニの「サクラ・マル」、冒頭の一節です。騒がしくて、怪しげで、ただならぬ気分が伺えますか。
 歌が大御所ナンダー・マーリニなら、詞は彼女のパートナーと噂される、さるお方。彼がなかなか難解な歌を書いて,それをあっさりとナンダー・マーリニが受け取って歌ってしまう。シンハラ・ナショナリティを鼓舞して知的に,時にやさしく、力強く歌います。

 さて,この歌ですが,「桜,咲いた。すばらしい花よ。家の周りを明るくする花よ」
と、今お聞きになった部分をさらりと訳せば、何ともない普通の歌詞になります。でも、これでは“誤訳“と言われてしまいそうです。
 この冒頭の一節は,「桜が咲いた。 あれぇまぁ、ビックリ! 家の周りが明るくなっちゃった……」と、俗語で訳すほうが歌の趣旨には合っているようです。「あれぇまぁ、ビックリ!」というぞんざいな訳ふりは歌の中の「ハリ・プドゥマイ!」に充てたのですが、こんな下卑た言葉も彼女が歌うと立派な歌詞になってしまって、きれいに,また,美しく聞こえてしまうからたいしたものです。

 70年代のフォーク・モグラや岡林信康か高田渡の作る歌を、「一人上手と言わないで」の中島みゆきがうたったなら、この「さくら,咲いた」の歌の気分になるかな、そんな感じ。強烈なメッセージ・ソング。それが、このナンダー・マーリニの「さくら」の歌なのです。

 気になる全体の歌詞ですが,詳しくは『南の島のカレーライス』に掲載した全訳をご覧いただけるとうれしいのですが,要は,「日本が発展に成功した国としてスリランカに現れ輝いている。もう、だからこの国は大騒ぎ。みんな逆さま。みんな滅茶苦茶になってしまった。呆然!」というようなことを歌っているのです。
 シンハラ・ナショナリズムの中で、日本という国が見事に表現されている。なんて言ったら、なんだか分かった振りして解説しているみたいなのですが、実はこの歌詞,非常にシュールで、なんとも分かりづらい。難解。
 
 歌の世界が好いた惚れたで塗りつぶされて、子供向けの童謡やアニメ主題歌が大人の世界に蔓延する今の日本。そんな現代日本人がこの歌を聴いても理解不能かもしれません。