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トップページ> > 『雨鱒の川』
雨鱒の川
川上健一
川上健一は油断できない作家である。
彼はスポーツ小説作家だという印象が強い。
と、安心していると『雨鱒の川』のような作品を書いたりするから
油断できない。
これはなんと初恋小説だ。
しかもど真ん中のストレートだ。
これにもびっくりする。

『雨鱒の川』は、部屋の中で読むべきだ。
電車の中で読み始めるとやめられなくなり、
そのうちに涙があふれてきて
あぁしまったと後悔することになる。

(北上次郎さん解説文より引用)
わたくしの大好きな作家のひとり、川上健一さんの
14年ほど前の作品になります。
川上さんといえば、バスケ、マラソン、テニスなどなど
スポーツ青春ものが多く、その爽快感と甘酸っぱさと
わかりやすさがすばらしくて、とても楽しく読めるんですが、
この『雨鱒の川』は、ちょっと色が違います。

舞台は東北地方。時代設定は現代より少し古い感じかな。
絵が天才的にうまく、それ以外のことはまったくダメな少年と
小さい頃に耳が聞こえなくなってからというもの、
その少年としか心を通わすことができなくなった少女の
10年にわたる初恋物語となっています。

この物語は、めっちゃマジメで、めっちゃ純粋で、
山奥の清流のように透き通る純粋さで埋め尽くされています。

描かれる風景、川のせせらぎ、魚の模様、
空の色、風の勢い、
水の冷たさ、人の暖かさ、世間の冷酷さ、
子供の純粋さ、大人になることの重み、意志を貫く強さ、
かけがえのない誰かを想う気持ち。生きるということ。

生きる上で知っておきたい、大事な大事なことが
たくさんつまってるような、そんな気がしてなりません。
その「大事なこと」って
たくさんあるわけでもなければ、
理解するのが難しいわけでもない。
ただ、それをやりとおすのが難しいだけなんですよね。

なんつうのか、ものすごく切実、でした。この小説は。

p.s.
最近、小説の映画化が
ものすごく増えてるような気がするのですが、
この映画も例外ではなく、2004年秋に公開されるそうです。
磯村一路監督の作品で、
(こういう素朴な田舎を舞台にした映画ばかり撮ってない?)
玉木宏くんと綾瀬はるかさんが主演。
(綾瀬さんはイメージがぴったりっぽい。
 玉木くんは少々かっこよすぎ?丸坊主にするのかな?)
全国でロードショーされるのかなぁ?
っていうか、この小説が持つ「透明感」を、
はたして映画で表現できるんだろうか?
期待と不安が入り乱れます…。
posted on 2004.05.08
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