花の横岳 2013年6月30日 - 7月1日 テント定着

6月30日 曇り

中央線は勝沼あたりは霧の中。甲信国境付近では雨まで降ってきた。
茅野着は8:20。雨は降っていなかった。日曜朝の美濃戸口行きのバスの乗客は、我々2人を含めて4人だけだった。バスに乗っている間に小雨がぱらついたが、美濃戸口では止んでいた。外のベンチなどは濡れていて使えなかった。

9:47 美濃戸口(高度計:1500m)

バス停の目の前の八ヶ岳山荘で準備をして、登山届を提出してから出発。
日が出ていないので涼しく感じられた。そのおかげで名物(?)のアブも少ない。だが念のためミントスプレーを振りまいておく。

10:39 美濃戸山荘着(1720m)

見覚えのあるヤマツツジの木を過ぎて、カーブを2回曲がるとやまのこ村に着く。そこから数分で美濃戸山荘だ。
ザックをおろして水を補給した。

10:52 美濃戸山荘発(1725m)

赤岳鉱泉へ向かう。北沢を歩くのは前回のツクモグサ山行以来、6年ぶりだ。堰堤広場まではダート道が続く。少し日がさしてきて、少しアブが出てきた。

11:33 堰堤広場(1945m)

桟道
桟道が設置されて歩きやすくなった岸(12:01)
30分ほど歩いて沢を右岸に渡り、それから10分もすると山小屋関係者の駐車場に着く。さらに3分ほどで堰堤広場に到着。ミソサザイがやたらと鳴いていた。
堰堤広場の立派な橋で左岸に渡ってからは山道となる。林床はキバナノコマノツメやらシロバナノヘビイチゴやらが美しかった。オサバグサはまだ咲き始めで、つぼみが多かった。急な坂もなく、歩きやすいよい道だ。
6年前は緊張して通過したスラブ状の川岸はそれから大きく変わり、桟道が作られていた。おかげで沢ドボンの心配なしに歩けた。橋もちゃんと整備されていて、いい道だ。

12:46 赤岳鉱泉着(2205m)

赤い沢
赤い色の沢(12:23)
赤い沢に到達した。この水の色は鉱泉の影響だろうか。そこから、ミソサザイがやたらと鳴きまくる道を20分ほどで赤岳鉱泉に着いた。この日の最高高度は2,205m、最低高度は1,485m、積算上昇は720m、積算下降は15mだった。涼しかったせいか、体力的にはまだ余裕があった。
赤岳鉱泉に来るのは6年ぶりだが、前よりもウッドデッキの面積が増えていた。その増えたところに小屋があって、中にはベンチがたくさんあった。

テント場にて

赤岳鉱泉
人気のなくなった夕刻の赤岳鉱泉(18:42)
テントを張ってもまだ14時にもならない。周辺散策を楽しんだ。小屋の直下のシロバナノヘビイチゴの群落が美しかった。ミソサザイがひとしきり鳴いたあと、飛び去って行った。枝をひょいひょいと飛び移るウグイスのような鳥はメボソムシクイだろう。
夕食はレトルトカレーを食べた。そうこうしているうちに弱い雨が降ってきた。テントに当たる雨滴の音も聞こえないような、ごく弱い雨だ。
テントは6張り。そのうち3張りは3人組がそれぞれソロテントを張ったので、実質4グループだった。夏至を過ぎたばかりで19時になってもまだ明るかったが、寝ることにした。

7月1日 曇り一時雨

3時半起床。テント内は14.4℃だった。雨は降っていなかった。夜明けのちょっと前から、ミソサザイが猛烈に鳴き始めた。
朝食にはエスプレッソ・リゾットを食べた。調理時間は5分と説明書きにはあるが、水気が引くまで10分かかった。

5:02 テント場発(2220m)

道
赤岩の頭への道は歩きやすい(05:19)
イワカガミ
イワカガミの群落(05:30)
サブザックに水筒やカッパなどの必要物を詰めて出発。まずは赤岩の頭を目指す。計画では、横岳を縦走して地蔵尾根から行者小屋へ下りることにしているが、天候によっては同じ道を引き返すことも考えた。
10分でジョウゴ沢。ミソサザイが賑やかだ。沢を過ぎてから本格的な登りにかかる。しかし道は歩きやすい。10分ほどするとハシゴ場があり、そのあとにイワカガミの群落が登場した。
どんよりと曇ってはいるが、上空は明るい。この感じならしばらくは天気は持つだろう。野鳥の鳴き声が楽しい。

6:22 赤岩の頭(2635m)

赤岩の頭
ガスガスの赤岩の頭(06:22)
ミヤマシオガマ
稜線に咲くミヤマシオガマ(06:38)
ミツバオーレンを見かけてから少しすると森林限界を突破して、それからすぐに赤岩の頭に着いた。稜線は超ガスガスだった。前回と違って荷物が軽い分、予定よりもずいぶん早く着いた。
ここからはイワウメの群落がそこかしこに。とにかくやたらと美しかった。イワウメの他にもツガザクラやイワヒゲやミヤマシオガマとか。イワカガミも、林の中だけかと思いきや、稜線でも満開状態が続く。写真を撮りまくりながら歩く。

6:50 硫黄岳(2740m)

道
岩塔を過ぎると山頂は近い(06:43)
火口
突如現れた爆裂火口(06:56)
写真の撮りすぎで中々進まず、赤岩の頭からコースタイム15分のところを30分近くもかかって硫黄岳に到着。ガスガスの山頂には誰もいなかった。このあたりは強風地帯だが、この日は幸いにも微風だった。
近くの硫黄岳山荘で休むことにして、ここはすぐに発った。すると、ほんの一時だけ霧が晴れて、爆裂火口がきれいに見えた。中々の迫力だ。

7:16 硫黄岳山荘着(2635m)

道
ケルンに導かれて進む(07:06)
電気柵
ソーラー電気柵(07:39)
しかし歩き始めるとまたすぐに霧に包まれた。だだっ広い石くずの稜線では、踏み跡もわかりにくい。ケルンが非常にありがたかった。このあたりは強風地帯だが、この日は幸いにも微風だった。
山荘前の稜線では数株のウルップソウが咲いていた。コマクサはほとんどがパセリ状態だったが、ほんのちょびっとだけ咲き始めのものもあった。その一帯は、なんと電気柵が巡らされていた。こんな山奥で柵なんかに電気使うわけないじゃん、と思ったら、ちゃんとソーラーパネルが付いていた。
山荘で腰を下ろして軽食をとってから、植物園を一周した。ウルップソウやオヤマノエンドウなどが咲いていた。シロバナコマクサはまだまだつぼみだった。

7:38 硫黄岳山荘発(2645m)

道
右は電気柵、左は網の登山道(08:03)
山
横岳が雲間からぬっと出てきた(08:05)
ガスの中を横岳に向かって進む。道は歩きやすい。その周囲にはチョウノスケソウやキバナシャクナゲが出現した。チョウノスケソウはもう花期が終盤に近づいていたが、まだ活きのいいのも少し残っていた。キバナシャクナゲの花はまだちらほらだ。数は少ないがハクサンイチゲもあった。
20分ほど行くと赤土の道になり、山荘前同様の電気柵が。柵の向こうはコマクサのパセリがたくさんあった。開花したらなかなか凄そうだ。

8:27 横岳登頂(2805m)

山頂手前のクサリ場で、対向者待ちをしている間にようやくツクモグサを発見。その崖の下には踏み跡がついていた。対向のおばさんは「巻道なんじゃないの」などと言っていたが、それくらいくっきりとしていた。曇っているせいか花を閉じているものばかりだったが、たった1輪だけ、それもごく近くにバッチリ咲いているのがあった。
このクサリを攀じると間もなく横岳最高地点の大権現に着いた。ここには山頂標識も立っている。

8:33 鞍部で休憩(2805m)

山頂はさして広くないので、少し南側の鞍部まで行ってから腰を下ろして行動食をとったりした。まったりしていると雲がとれて、短い間だったが佐久方面の景色が開けた。
この先の行程について考える。南は基本的には岩場で、しかもこの方向だとスラブ岩の下りになる。もし雨でも降ってきたらと考えるとちょっといやらしい。地蔵尾根の下りもそうだ。・・・というわけで、来た道を引き返すことにした。バスの時間から逆算して、遅くとも11時半までにテント帰着・撤収して、12時には赤岳鉱泉を出発しなければならない。意外と時間がカツカツだ。

8:55 横岳発(2805m)

道
ナイフリッジを佐久側(右)へ乗っ越す(09:02)
先ほどのクサリ場の途中のツクモグサを、今度はもっとじっくり見ることができた。やはり独特の雰囲気を持っている花だ。6年前に見たときは露たっぷりの姿だったが、今回は乾いていたので、また違う姿でよかった。
岩場の下りでは、よくよく見ると、キンロバイやイワベンケイもちょっとだけだが咲いていた。
硫黄岳山荘まではゆるゆると下っていく。

9:26 硫黄岳山荘(2640m)

ウルップソウ
ウルップソウはまだ咲き始め(09:30)
ガスはだんだん深く濃くなってきた。そしてとうとう、ぽつぽつ降ってきた。
山荘では休憩せずに通過した。ウルップソウをまたじっくり見てから、ケルンに導かれて硫黄岳へ登っていく。

9:48 硫黄岳(2740m)

稜線
雲がとれて硫黄岳山荘が見えた(09:57)
天気は変わりやすく、今度は雨が止んで視界が少し広がった。硫黄岳山荘の青い屋根が見えるくらいだった。しかしそれでも、往きはきれいに見えた爆裂火口は霧に包まれていた。
腰を下ろしてみかんを食べたりして休んだ。

10:07 赤岩の頭(2630m)

稜線
ケルンの道を横から見ると結構な斜度だった(10:03)
赤岩の頭は通過。樹林帯に入るとまたまたぽつぽつときて、やがては本降りになった。

10:59 テント場着(2215m)

イワカガミ
かわいらしいイワカガミ(10:41)
往きにも見て記憶に新しいイワカガミ群落を過ぎた。カッパを着ようかどうしようか。しかし沢音が聞こえてきた。ジョウゴ沢を渡れば、赤岳鉱泉まで10分だ。ここはスピードアップして小屋へと急ぐ。
小屋は閑散として、雨のウッドデッキはもちろん、屋根のあるベンチにも誰もいなかった。これを幸いに、テント内の荷物を全部移動させ、テントも屋根の近くまで運んでからポールを抜いて収納した。考えてみれば、雨中のテント撤収なんて2001年以来のことだ。撤収を終えてからベンチで行動食を食す。

11:54 テント場発(2215m)

道
雨の道を行く(12:12)
しかし出発するころには雨はずいぶんと小降りになった。ザックカバーはつけたが、カッパは着ないことにした。小屋を出て少ししてから振り返ると、大同心が雲の間から見えた。
雨だとすぐにモチベーションが下がってしまうという悪い癖が自分にはあるが、この日はどういうわけかそんなことはなかった。雨に濡れそぼった草花や苔が美しかった。ズダヤクシュとかオサバグサとか。

12:46 堰堤広場(1960m)

マイヅルソウ
苔の中のマイヅルソウ(13:01)
座るところもないし、ちょっとだけ休んですぐに出発した。雨はもうほとんど気にならない程度になっていた。

13:26 美濃戸山荘着(1740m)

余分な水を捨ててから出発。アブはほとんど見当たらないが、念のためミントスプレーを振りまいた。

14:13 美濃戸口着(1520m)

いつもは目もくれないショートカット歩道が、この日はどういうわけかよく目について、しかもよくよく見ると結構踏まれているようだったので、思い切って使ってみた。かなりの時間が短縮されたんじゃないかと思う。14:15までに着いたら八ヶ岳山荘で風呂に入ろうと思って歩いていたが、これでなんとか間に合った。
この日の最高高度は2,810m、最低高度は1,520m、積算上昇は785m、積算下降は1,485mだった。
帰りの14:45発バスの客は10数人だった。車中で、帰りのあずさをケイタイで予約した。茅野に着いたら空は晴れ。駅で酒とつまみを買って、あずさ車中で乾杯した。あずさは月曜昼ということもあり、自由席もがらがらだったようだ。中央線からの眺めは、八ツはもちろん南アも全滅だったが、どういうわけだか茅ヶ岳だけはすっきりと晴れていた。
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