8月4日 雨のち霧時々晴れ
テントを揺るがす強風で目が覚めた。1時だった。テント内は11.2℃。うーん、この風だと撤収に難儀しそうだ・・・と思いつつ再び眠りに落ちた。2時に本格起床、相変わらず風が強い。支度をしていると、2時半には、な・な・なんと雨が降ってきた。えー、そんな話聞いてないよー。テント内は14.0℃で気温はまずまずなのだが、いかんせん、雨はまったくの想定外だった。いつもは寝る前に「明日雨だったらどうしよう」「ガスだったらどうしよう」とあれこれ考えるのに、昨日に限ってまったくそういうことを考えなかった。とにかく晴れを信じて疑わなかったのだ。
待機
朝日小屋へのコースタイムは7時間30分。前日の栂池→白馬で、同じくらいのコースタイムのところを9時間かかっていることを考えると、テント場を遅くとも5時半に出発し、山頂を6時には発たなくてはならない。もちろん、テントを撤収する必要もあるわけで、この強風では1時間はかかるだろう。すると決断のリミットは4時半か。風は強く、雨も降り続いている。いつでも出られるよう準備して天候回復をじりじりと待つ・・・4時半になっても状況は変わらず。やむなく朝日岳縦走を断念した。5時半になってようやく明るくなった(夜明けは4:46なのに)。風は強いままで、雨は降ったり止んだり。
しかたなくテントの中で今後の行程を練り直す。明日中に帰宅したいので、下山コースを考える。雨の後の大雪渓を下りに使うなんて冒険はしたくないし、鑓温泉もかなりの残雪があるらしい。となるとやはり来た道を戻るのがいいだろう。今日のうちに少なくとも大池まで行けば、翌日は楽だ。一気に下山して蓮華温泉あたりに泊まるのもいいかも。
7時半になってようやく雨が止んだところで撤収作業を開始した。周りのテントは既に半分以上消えていた(みんなスゲー)。そして作業途中から結局また雨が降ってきて、6月の八ヶ岳から連続して雨中撤収となってしまった。テント山行を始めて20年くらいだが、それまでは雨中撤収は3回しかなかった。しかも最後は2001年で、つまりこの10年ほどはこんな目に遭ったことがなかったのだ。それが今年になって連続でぶち当たるとは。
8:39 テント場発(高度計:2690m)
出発するころには雨は激しくなってきた。風は相変わらずだが、夜中ほどではないように思われた。3時ごろに朝食をとって以来何も口にしていないし、この天候ではザックをおろして行動食をとるのもなかなか億劫なので、とりあえず白馬山荘に行ってレストランで腹ごしらえをすることにした。昨年夏に買った新しいカッパを、初めて雨具として使った。なわけで、フードの庇が視界確保のため透明になっていることを初めて知って、ちょっと感心した。稜線に出ると風雨は強くなったが、新しいカッパは快適だった。風も、耐風姿勢をとるとかいうほどのレベルではなかった。これなら歩けそうだが、白馬山頂から三国境にかけては名だたる強風地帯であり、油断はできない。
8:59 白馬山荘着(2795m)
白馬山荘ではまず天気相談所に。どうも予報が急変したらしい。今日は曇又は霧で一時雨、翌日は曇又は霧で一時雷雨(!!)ということだった。今雨を降らせている雨雲は、もう少しすると東に抜けて雨は止むもよう。レストランに行って相棒はコーヒー、かつりんはホットミルクを注文し、温まりながら行動食を食べた。レストランでぎりぎりまで粘ることにする。
9:35 白馬山荘発(2795m)
山頂を10時には出発したいので、レストランを出た。雨はまだ降っていた。なんだかカメラの液晶がおかしくなってきた。オリンパスE-M5は防塵防滴だが、『雨天でも安心』的なことがパンフに書いてあったので、雨ざらしのまま歩いていたのだ。小雨ならともかく、横殴りの雨ではさすがにヤバかったか・・・
9:52 白馬岳通過(2890m)
ガスガスの山頂は記念写真を撮ってそのまま通過。こんな中でも結構な人がいた。三国境に向けて歩き出すと、またまた結構な人数とすれ違った。白馬大池を朝出ると、ちょうど今頃なのかもしれない。
10:29 三国境着(2690m)
三国境に着く頃には、心なしか空が明るくなってきた。三国境では高校山岳部的なパーティが大勢でホットケーキを焼いて食べていた。なんだかとても楽しそうだった。こういうとき、大人数は心強い。かぶっていたカッパのフードをとり、ザックをおろして休んでいると、とうとう晴れ間まで見えてきた。しかしとうとうカメラの液晶がまったく映らなくなってしまった。レンズを認識しなくなり、写真が撮れなくなってしまった。ああ、カバーをしておけばよかった・・・とにかく、この先は相棒のカメラが頼りだ。
10:44 三国境発(2690m)
三国境からさらに下り、鞍部まで来るころには視界もだいぶ回復してきた。振り返ると歩いてきた道が見えた。鞍部を少し登りかえしたところで、みたびライチョウ発見。目の上が派手に赤く、また単独行動をしているところからして、オスのようだ。一度の山行で3度もライチョウを見たのは初めてだ。
とうとう日も差してきて肌がひりつくようだったが、そうかと思うとまたガスに包まれたりした。
11:23 小蓮華山(2730m)
小蓮華山頂は大勢の人で賑わっていた。ちょうど大人数のパーティがいたようだった。上空に晴れ間はあったが遠望はきかなかった。もう雨は降らないだろうと判断し、カッパを上下とも脱いだ。脱いだら涼しくて気持ちよかった。そんなこんなで20分程度休憩してから出発。天気はいまひとつでも、花の美しさは変わらない。小蓮華山頂の北側のさまざまな花を再び愛でながら歩く。アオノツガザクラ、コバイケイソウ、ミヤマダイモンジソウ、チングルマ、イワカガミなどなど・・・
12:32 船越の頭(2585m)
30分も歩くと、右下の谷底に、往きは雲海の中で分からなかった大雪渓が見えた。登山者の行列もわかった。船越の頭ではザックは背負ったままで石に腰かけて休んだ。登ってくる人が結構多い。小蓮華山の雲のかかり具合が、往きよりも『坂の上の雲』っぽかった。しかし、嗚呼、カメラが・・・
10分ほどしてから出発した。大池への下りも花が美しかった記憶があるが、下りで見るとなんだかあまりぱっとしなかった。
13:09 白馬大池着(2365m)
白馬大池の花畑は、大雪山なんかと比べると花の量はどうしても見劣りしてしまうが、楽園的な雰囲気がイイカンジだ。花は、池やテント場の周りよりは、蓮華温泉方面に広がる原っぱの方が多かった。ハクサンコザクラや、ハクサンイチゲや、アオノツガザクラの群落があった。結局この日は大池で終点とした。これほど美しい花畑に囲まれたテント場はなかなかないと思う。この日テントは20張りくらいで、学生と思しき大テントがいくつかあった。うるせーだろうなあと思っていたら、彼らはすぐに寝静まった。18時過ぎには弱い雨が降ってきた。明日は今日よりも予報が悪い。早めに山を下りるのがいいだろう。