7月16日 快晴のち曇り
3時に起床。テント内の気温は16℃。テントの結露はゼロ。頭痛はまったくしなかった。トイレに行こうと外に出た。超快晴。北岳は黒々とそびえていた。山の右に満月が輝いていて、月明かりでライトは要らないほどだった。明け方の空の、濃い青からオレンジへのグラデーションがなんともいえないほどイイ。
前夜の残りご飯に味噌汁をかけて朝食とし、テントの入口を開けて明けゆく空を眺めながら食べた。今日は農鳥小屋までの短距離なので、あまり急がなくてもいい。食べ終わり、パッキングを始めた頃にはかなり明るくなってきて、小屋からも人が大勢出てきて、日の出を楽しんでいた。居ながらにして眺めを楽しめる稜線上の一等地にテントを張ったはずなのに、わらわらと出てきた人たちがみんな我々のテントの前に立ちはだかってしまって、結局我々も外に出て見るハメになってしまった。
ご来光劇場が終わると、人々はさっさと小屋へ帰って行った。みんな、その後のオレンジ色が美しいのを知らないのだ。もしかしたら、朝食の時間が迫っているのかもしれない。
5:53 出発(高度計:3000m)
我々が肩を出発する頃は、ちょうど朝食の時間とバッティングでもしたのか、山頂に向かう人はあまり多くはなかった。6:08 両俣の分岐(3090m)
両俣分岐のチョウノスケソウの群落は相変わらず素晴らしかったが、時間が早すぎて花畑はまだ全体が日陰に入っていて、美しさは半減といったところだ。ミヤマキンポウゲの花が増えてきた。6:37 北岳登頂(3170m)
山頂も意外に空いていた。大快晴で、大展望360度。雲海も美しい。快晴で、もうこれ以上はないというほどの晴れかただった。しかしその分、夏の陽射しが照りつけ、もの凄く暑いのだ。座って、担いできたケーキなどをのんびりと楽しむ。
7:37 北岳発(3170m)
続いて間ノ岳を目指す。下り始めて少しすると、何人かが道をはずれて写真を撮っていた。なにかと思ったら、咲き残りのキタダケソウだった。踏み込まなくても写真は撮れそうなものだが・・・7:59 分岐(3075m)
それにしても暑い。西風が吹いていることを考えると稜線を歩いた方が涼しそうだが、花はトラバース道の方が多そうだ。暑いのはガマンして、トラバース道を行くことにする。8:12 八本歯の分岐(2990m)
ザレッザレの悪路をぐぐっと下り、八本歯への分岐で右に入ったところがトラバース道だ。残念ながらキタダケソウは見つからなかったが、花の多さは予想通り。特にハクサンイチゲが素晴らしかった。いくつもの桟道やハシゴを伝って北岳山荘に近くなると、シナノキンバイが混じってきた。この道は、花も美しいが、その花を前景にした間ノ岳の姿が美しいのも好きなところだ。
9:03 稜線コースに合流(2965m)
山荘の手前で稜線の道と合流するので、稜線に進路を変更した。するとこれが大正解で、西側斜面に凄まじいほどのハクサンイチゲの大花畑が広がったのだった。9:30 北岳山荘着(2885m)
北岳山荘で給水がてら、大休止。暑いが、日陰は夏山診療所の軒下にわずかにあるだけだった。北岳山荘でサイダーを買って飲みながら受付脇の掲示板を見ると、なんとトラバース道にもキタダケソウは残っていたらしかった。まあ、知っていても見つけられなかったと思うけど。10:02 北岳山荘発(2880m)
中白根へは最初緩やかに登っていく。なにしろ、昨日からずっと花がきれいなのだ。ここにきてミヤマキンバイの黄色が目立つようになった。10:39 中白根(3025m)
中白根からの北岳の眺めは素晴らしい。反対側の間ノ岳の眺めもなかなかのもの。左右にどでかく広がった山容は、南アルプスの山らしくて大好きだ。中白根から先は、結構登る。ニセピークから後がかなり長い。しかし何度も繰り返すが、とにかくなにしろ、花がきれいで歩くのが楽しいのだ。西側斜面が、ずっと花畑なのである。この日はハクサンイチゲを中心に、多くの種類の花が咲いていた。
12:07 間ノ岳登頂(3165m)
間ノ岳の山頂に近づくと、イワウメが増えてきた。登頂したころにはだいぶ雲が広がってきて、遠方の山はもとより、近くの山も甲斐駒などは見えなくなってしまい、残るは北岳と仙丈くらいとなっていた。12:37 間ノ岳発(3160m)
間ノ岳は山頂付近に遅くまで雪が残るためだろう、咲いている花もこれまでの道とちょっと違っている。農鳥小屋へはまず東側の斜面をトラバースしながら下っていくが、ここに雪田植物が多くて、イワウメやアオノツガザクラやチングルマなどが咲き誇っていた。道はかなりザレている。雲は湧いたり、消えたりを繰り返していた。東側から雲が湧き上がってくるが、それを西風が押し返していて、稜線の東は真っ白な雲で、西は見事に晴れていた。
見覚えのある岩塔の脇を過ぎてちょっとすると幾分か道はなだらかになった。
13:35 三国平への分岐(2825m)
ほぼ高低差がなくなった道をしばらく行くと三国平への分岐点がある。もうここまで来れば農鳥小屋は近い。13:44 農鳥小屋着(2805m)
三国平への分岐から農鳥小屋へは最後にちょっとだけ登り返して到着だ。この日の最大高度は3170m、最低高度は2790m、積算上昇は550m、積算下降は685mだった。
農鳥小屋テント場
受付を済ませてテントを張ったあと、とりあえず水汲みに行く。水場はテント場のはるか下で、往復30分かかる。水場への道の上部はシナノキンバイなどがきれいだったが、水場じたいはカンバの林の中で花も眺めもなく、おぢさんたちが上半身裸で体を拭いたり足を水につけたりして喜んでいた。水を汲みおえてテント場に戻っても、前日同様、やはり暑くて中には入れなかった。17時を過ぎてようやく中に入れるようになった。
この日の夕食はレトルトカレーだ。水を使わないので、水場の遠いココにはうってつけのメニューだ。スープは牛乳で作る粉末のビシソワーズにしたが、山中で牛乳が手に入らないことを考えて、パックの豆乳を担いできた。これなら常温保存可能だし、ちょうどいいと思ったのだが、味はやっぱり牛乳の方がいいかなあ。
この日もブロッケン現象が見られた。日が暮れると、異様に赤い月が東から昇った。テントは全部で20張くらいだったろうか。20時頃に眠りについたが、プロトレックの気温を見ると、16℃ほどに下がっていた。しかし、午後の陽をたっぷり浴びてシュラフが温まっていたのか、前日よりも暖かく感じたほどだった。
翌日は奈良田まで下るが、過去は2回とも10時間かかっている。14時のバスに乗るために、4時出発に決定。そのため、翌日は2時に起きることにした。