百花繚乱・十勝連峰縦走(富良野岳・十勝岳・美瑛岳) (3ページ目)

7月17日 晴れのち曇り

美瑛富士
早朝の美瑛富士
本日も3:30起床。テント内は13℃もあり暖かかった。外に出ると、雲が多いものの空は晴れていた。本日は下るだけなのでゆっくりと準備をする。しかしだんだん雲がとれてきて、展望が期待できそうな気配。ベベツ岳まで行こうとかいろいろ考えたが、まだ十勝岳をきちんと見ていないということで、美瑛岳に登って十勝岳を眺めてから下山することに決定。

5:58 テント場発(高度計:1650m, 温度計:17.7℃)

美瑛岳
エゾイソツツジの道と美瑛岳
美瑛岳
雪渓と美瑛岳
昨日の道を戻る。刈り払いの道はエゾイソツツジに囲まれていた。昨日はこんなことにも気づかないくらい焦っていたのだなあと思った。20分ほど歩き雪渓に到達。ここで水を補給し、ついでに休憩をとる。

6:46 美瑛富士分岐通過(1735m, 18.3℃)

道
美瑛岳を目指しガレ場を登る
雪渓で休憩をとったばかりなのでここは通過。それにしてもこんなに美瑛岳の眺めのいいとこだったのか、とあらためて思う。山頂標識も見えてるじゃん。しかし山頂までは標高差300m、コースタイムで1時間かかる。そして、昨日同様の強風が吹いていた。
無言で登る。風にあおられ、耐風姿勢をとることもしばしばだ。お互い会話を交わすにも近くによってから叫ばなければならないほどだ。

7:36 美瑛岳への分岐(1990m, 15.3℃)

美瑛富士
美瑛富士をバックに登る
美瑛岳
イワヒゲの道と美瑛岳
激しい風だったが空はきれいに晴れており、目の前の美瑛富士はもちろん、大好きなトムラウシもオプタテシケの後ろからひょっこりと頭を出していた。はるか彼方には旭岳や忠別岳も見えた。行く手の美瑛岳はどっしりとしていて風格のある山だと思った。
昨日はあまり見る余裕がなかったが、登山道の周辺はなにしろイワヒゲだらけで、米粒をまぶしたように白い点々が広がっていた。

7:55 美瑛岳登頂(2060m, 17.7℃)

十勝岳
美瑛岳山頂から十勝岳と富良野岳(右)、鋸岳のクリオネ雪渓も見えた
美瑛岳より
美瑛岳山頂からオプタテシケとトムラウシ(奥)
分岐からほぼ真西に進む登山道は、尾根の北側についている。南は岩稜に阻まれて見えないが、その岩に切れ目があったので覗いてみると、彼方に十勝岳がすっきりとした三角形でそびえていた。そしてこの切れ目のあたりから急速に風が減衰していった。昨日とまったく同じパターンだ。山頂でこの風じゃ休憩どころじゃないなと思っていたが、やはり西風をあまり受けない地形なのだろう。それから数分で登頂。おそらく本日の山頂一番乗りだ。

8:42 山頂発(2055m, 16.3℃)

道
噴煙を眺めながら稜線の道を下る
道
ガレた道を振り返る
登り道ほどではないにしろ、そこそこ風は吹いていて、Tシャツ・ウールシャツでいたが寒くなって、カッパを羽織った。山頂の岩陰で湯を沸かしてコーヒーを飲みながら、北の表大雪・南の十勝岳の眺めを存分に満喫した。そろそろ下ろうかというころ、下から登山者がやってきた。下りは稜線のガレ道。道をずっと見下ろすことができ、登山者が間隔を開けてぽつんぽつんと見えた。辺りは、すでにおなじみとなったイワヒゲが咲き乱れていた。

花の中を下る

道
えぐれた道の周囲にも花がいっぱい
道
ハイマツとウコンウツギとエゾツガザクラとエゾコザクラとチングルマ
最初南西に向いていた道は、稜線のカーブとともに徐々に北西に向きを変え、尾根を離れ谷地形の斜面となる。すると潅木が混じってきた。この谷が凄い。雪解け跡から花がわんさか咲いていた。面白いのは植生だ。ハイマツとウコンウツギとエゾツガザクラとエゾコザクラとチングルマが入り混じるといった、珍しい光景が続く。
ガレ道は終わり、人ひとり分の幅しかない、えぐれた土の道となった。

9:37 美瑛岳分岐(1665m, 22.0℃)

そんな道が続いて分岐に到着。かなり斜めだが広場状になっていたのでザックを降ろして休憩した。当たり前のようにエゾコザクラなどの花が咲いている。
すれ違いの登りの人が「ガスになっちゃいましたね」と言うので振り返ると、山頂は雲の中だった。花に夢中になりながら下りていたので気づかなかった。山頂よりも雪渓の際がピンク色に染まっているのが興味ぶかかった。
山頂では寒さに震えていたが、この下りで急に蒸してきたのでカッパとウールシャツを脱いでTシャツ1枚になった。

10:24 ポンピ沢(1450m, 23.2℃)

道
エゾイソツツジの道を行くと間もなく急降下が始まる
分岐から90度左に向きを変えて再び尾根上に出る。尾根の道はさながらエゾイソツツジのプロムナードだった。ここを数分行ってから、急斜面の下りとなる。激しい段差が多く手を使う場面もあって気を抜けなかった。ポンピ沢の大きな谷の対岸には、このあと歩く道も見えた。渡渉点まで200mを下ったあと、再び100mほどをトラバース気味に登る。なんだかうんざりだ。
心配だった渡渉はほどよい間隔に石があって難なくクリアできた。渡ったところでいったん休憩。
じりじりと登り始めると、斜面がえらいことになっていた。花で埋め尽くされていたのだ。北東に面した小さな谷で雪がたまりやすいのだろう、その雪解け跡に大量の花が咲いている。花園は凸地になると終了するが、次の凹地でまた現れる。エゾツガザクラだったり、エゾコザクラだったり、ピンク色で実に華やかだ。

11:00 函状の渡渉点(1510m, 22.8℃)

渡渉点
函状の渡渉点の周りにも花がいっぱい
次々と出現する花畑に見とれてしまいなかなか進まなかったが、20分ほども登ると難所の函状渡渉点。雪に埋もれていたのでまったく問題なかった。これから雪解けが進むとスノーブリッジになって踏み抜きが怖くなるのだろう。
この渡渉点の周りにもエゾコザクラやイワヒゲがどっさりと咲いてきれいだったが、渡ったあとの斜面がさらに凄かった。斜面を見上げても、見下ろしても、延々と花が咲き続いているのである。例によって凸地でいったん途切れるものの、次の斜面でまた出現。しかも凸地には地味ながらイワヒゲがびっしりと張り付いていたりする。そんなのが何度も繰り返されるのだ。2日間花を見つづけてきて、ちょっとくらいきれいでもそれが当然と思うくらい感覚が麻痺してきた我々だが、ココの花畑には正直参った。

12:01 雲ノ平分岐(1315m, 24.5℃)

道
あたりはメアカンキンバイの道となり、望岳台への歩道が見えた
登りきって下りに差し掛かると望岳台からの歩道が見え、さしもの花畑も終わりとなった。石ゴロの道の周囲はハイマツの向こうにエゾイソツツジが見えるようになり、道端にはメアカンキンバイが多くなった。普通ならきれいだと喜ぶところだろうが、先ほどの花畑にノックアウトされてしまった我々はさほど感動もせず、足元に集中して黙々と下るだけだった。
下りきって最後に小さな沢を渡るとようやく分岐に到着だ。人通りも多くなり、「歩き終えた」という感がした。

12:49 望岳台着(1015m, 26.1℃)

望岳台
望岳台に着いたときは十勝連峰はすっかり雲の中
望岳台への道は上から見下ろしたときの印象と違って、たいへん歩きにくかった。石ゴロゴロ、砂ズリズリ。観光気分でふらふら歩けると思ったのに、ずっと足元ばかり見ながら歩いた。なんというか、林道歩きの気分だった。だが一般的な林道と違って林がないので不思議な気分だった。また、山は曇っているのにここだけ日が照りつけて暑かった。木がないので日陰もないし、砂が白いので照り返しも厳しい。
立ち止まって左右を見渡すと、エゾイソツツジが猛烈に咲き誇っていた。この花に限って言えば、今まで歩いた中ではここが一番多かった。
望岳台へは分岐から30分ちょっとで着いた。満杯の駐車場とツアーバスを見て、一気に現実に引き戻された。

望岳台歩道

白金温泉までは望岳台歩道を歩く。これで登山は終了、整備された歩道を鳥の声でも聞きながらるんるん気分でのんびり歩こう・・・と思ったら、とんでもない道だった。
歩道の入り口は車道の脇にあった。こぶし大の石ゴロゴロ。歩きにくいことこのうえない。道の左側には照明灯があるので、こんなとこに夜散歩に来るヤツがいるのか? と疑問に思ったが、よくよく考えてみれば、スキー場の林間コースなのだろうと思った。ということは、少なくとも登り返しはなさそうだ。
誰かが最近歩いたような気配はない。そんな酔狂なヤツはいないのだ。モチベーションが下がりきっているので辛い。集中して、捻挫をしないようにということだけを心がけて歩く。足元ばかり見ていると爆音が。なんと前方からオフロードバイクがやってきた。ここ歩道じゃねえのかよ、と思ったが、そういえばどこにも歩行者専用の標識はなかった。
白金温泉には14時ちょうどに着いた。45分かかった。終盤、雨までぱらついたときには泣きそうな気分になった。この道は絶対、二度と歩きたくないと思った。

白金温泉

この日は旭川のホテルを予約してあった。
往きに泊まった白金温泉ホテルの風呂に入ってリフレッシュ。1時間ほどものんびり入浴した。それでもまだ15時で、旭川行きのバスの時刻まで1時間半もあった。そんなに時間をつぶせるようなところもないので、タクシーで美瑛駅に出て、電車で旭川に向かうことにした。
タクシーを待つ間、近くの商店でサッポロクラシックビールとジュースを買って乾杯し、観光センターに下山の届け出をした。
美瑛駅までのタクシー代は5,000円ちょっとだった。旭川行きの列車は2両編成でやってきたが、意外なことに観光客で満席だった。

旭川

旭川の宿は旭川グランドホテル。ちょっと高かったが、出発前に近ツリで宿を予約したとき、旭川はここしか空きがなかったのだ。行ってみて値段が高かった訳がわかった。山帰りの我々はちょっとヘビーデューティーすぎた。
夕食は2年前にも行きそこなった大雪地ビール館に行きたかったが、電話をしたら満員ということだったので、結局ホテルの和食レストランに行った。地場産の素材を使った懐石コースを注文した。あぶら蟹が美味く、地酒の国士無双にぴったり合った。

7月18日 雨

旭川は朝から雨模様。雷まで鳴っている。山でこの天気だったら大変だったろうなあとぼんやり思う。
空港行きの8時のバスに間に合うように早めにホテルの朝食を食べた。バスはなんとホテルの目の前が始発だった。途中、旭川の駅前から大勢の人が乗ってきて補助席まで出すほどだったので、始発で一番後ろの席が確保できたのは幸いだった。ただ、バス料金が駅前乗車よりも30円高い。そういえば、旭川駅前のバス乗り場の場所が2年前と違っていたような。
空港で土産を買って飛行機を待つ。大好きなふらの地ビールのスタンドは9:30開店で今回もお預けとなってしまったが、土産物店で大雪地ビールを買って飲んでみた。自分の好みの味ではなかった。
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