尾瀬沼テレマークツアー 2003年4月26日-29日 山小屋利用

4月26日 曇り

沼田から大清水へ

沼田駅からのバスはまだ戸倉止まりで、大清水行きは翌日から運行するという。念のため、バスの運転手に大清水への道は開通しているか確認し、戸倉から大清水へはタクシーで行くつもりであることを伝える。
バスは鎌田で少々の休憩となった。運転手は営業所に入っていったが、しばらくすると戻ってきて戸倉にはタクシーはないことを教えてくれた。シーズンオフは戸倉には待機していないのだそうだ。このままバスで終点戸倉までいってからタクシーを呼ぶこともできたが、この鎌田でバスを降り、すぐそばに待機中の関越交通のタクシーで大清水へ行くことにした。6000円でお釣りがきた。

水芭蕉

ミズバショウ
大清水のミズバショウ
ザゼンソウ
大清水のザゼンソウ
物見小屋・大清水小屋のすぐ裏手がミズバショウの群生地となっている。例年GWには見ごろになるというが、まだ早いのか数はあまり多くない。しかし芽がにょきにょきと生えていて、盛時はすばらしい眺めとなるだろう。

宿

宿は物見小屋。昼間は売店・軽食をやっている。山小屋なのだろうが、部屋は相部屋にはしないという。部屋にはカメムシがごろごろしていた。カメムシキンチョールなるものを初めて見た。
食事は山のものが中心。軽食メニューにもあった岩魚の塩焼きや山菜の天ぷらなど。ギョウジャニンニクやクレソンの天ぷらなんて初めてだ。おいしかったのは鹿の刺身。あまり臭くなく、それでいて野性味たっぷりであった。
1泊2食ひとり6500円は、部屋のマイナス面を差し引いても安いと感じた。

4月27日 曇りのち快晴

宿の窓からは大勢の人が入山していくのが見えた。これなら道に迷う心配はなさそうだ。空はどんよりと曇っているが、ときおり日も差してくる。昼ごろから晴れるという予報だ。

8:00 大清水発(高度計:1125m, 温度計:12.2℃)

林道を行く
林道を行く
一ノ瀬まではスキーを担いで除雪された林道を歩いていく。道路脇にわずかに残った雪にクロカンらしきトレースがついていたが、ちょっと前のもののようだ。案の定、途中で雪は途切れてしまった。

8:59 一ノ瀬着(1345m, 10.0℃)

9:13 一ノ瀬発(1345m, 10.8℃)

雪の斜面
板を担いで夏道に戻ろうとする
一ノ瀬でスキーを履く。登りなので最初からシールをつけ、しばらくはピンクの目印のついた夏道を行く。10分ほど快調に登ると冬路沢の右岸に渡り、斜面をトラバース気味にすすむ。夏道が細くうねって急坂になってきたので川原に下りた。クロカンマップのモデルコースでは沢をそのままつめるようになっているのだ。しかし川原は凹凸が激しく、とてもスキーで登れるとは思えない。しかたなく、スキーを脱いで夏道に戻ることにした。板を履いていたのはほんのわずかの時間だった・・・
板を担げば担いだで今度は木に引っかかるので難儀したが、急登はさほど長くは続かず、稜線に出た。稜線からはスキーを履いて登っていった。

10:53 三平峠(1670m, 11.1℃)

三平峠
雪に埋もれた三平峠
斜面
伸びやかで明るい斜面
峠から、地図では道のない北西に入り込む。そこを選んだのは、ひとつは三平峠から三平下への急な下りを避けるため。沼尻へ向かう稜線はとても緩やかなのだ。もうひとつは、やはり積雪期でなければ入れないところだから。
シールをはがし、左前方に滑り込む。道は緩やかで、木は適度な間隔で生えており、明るい。おそらく誰もいないだろうと思っていたが、数人分のシュプールがついていた。ちょっぴり残念なような気もしたが、でも誰かが通っているという安心感もある。

11:43 大清水平(1635m, 11.4℃)

大清水平から燧ヶ岳
大清水平から燧ヶ岳
コンパスで確認しながらシュプールを追っていくと、すぐに林がぽっかりと開けた。大清水平だ。あたりは静寂そのもの。そして右(つまり北)を見ると燧ヶ岳が意外なほどに大きく見えて、しかもそれが突然だったので感動した。
シュプールが錯綜している。訪れる人は意外に多いのかもしれない。しかしツボ足の跡はさすがにないようだ。

曲り田代

曲り田代
曲り田代
大清水平の北西は急斜面が立ちはだかっている。そこを避けるように北に回り込めば治右衛門池に達することができると考え、スキーを滑らせる。等高線沿いに歩いているつもりだったが、徐々に登り始めていることに気づき、方向をやや右に修正。するととうとう三方を雪の壁に阻まれた袋小路にはいってしまった。シュプールはいろいろな方向に伸びていてあてにならない。とにかく北に進もうと登りやすそうな斜面を選んでジグザグに登っていくが一向に乗り越える気配はない。2万5千図には反映されない細かい起伏が複雑に入り込んでいるようだ。
このまま登りつめるとヤバそうな気配。先行者のシュプールもいつの間にかなくなった。やむを得ず北西の谷状の地形を下る。すると突き当たったところで、東に真っ白な尾瀬沼が見えた。かなり沼に寄ってしまったようだ。しかしこれで現在地に確信が持てた。突き当たりを左に曲がるとすぐに開けた場所に出た。曲り田代に到着だ。

12:40 小沼(1600m, 14.4℃)

小沼
小沼にて
タソガレ田代に寄りたかったが、ちょっと時間が足りないように思えたので止めた。
曲り田代からは沢状の地形が北に伸びている。無雪期には水が北に流れて小沼にそそぎこんでいるのだろう。我々もその流れにしたがって北に滑り込む。最後に5mほどの急坂を降りるとそこが小沼になっていた。曲り田代からはごくわずかの距離だった。
小沼は南北に細長く、北半分は氷が融けかかって青くなっており、水面も見えた。右(つまり東)を見ると、夏道の通っている林越しに尾瀬沼が見える。もうこのあたりは沼との標高差はほとんどない。沼に出ることにした。

尾瀬沼を滑るが・・・

融けかかった尾瀬沼
融けかかった尾瀬沼
沼岸は雪に覆われており、どこからが沼なのかさっぱりわからない。ふと見るとシュプールが一筋、長蔵小屋のある東岸へと向かっている。どうやら沼を横断して行った人のものらしい。我々もそのシュプールを追いかけることにした。
が。怖いのだ。途中、すぐ両脇から水面が顔を覗かせているところを通っているのだ。水没事故も過去には起きているという。すっかりビビって沼尻へと逃げたのだった。

13:06 沼尻着(1580m, 13.6℃)

沼尻休憩所
ようやく雪から出てきた沼尻休憩所
沼尻の丘の上でクロカンの5人ほどのパーティが休憩していた。今まで見たシュプールは彼らのものだったのだろうか。そういえば三平峠から沼尻までは人に会わなかった。
休憩所の南側のテラスが雪から出ていたので、チョコパイを食べ、ココアを飲んでしばし休憩。他には誰もいない。静かな尾瀬である。

13:38 沼尻発(1585m, 18.6℃)

沼を渡る
沼を渡る
東岸へ向かう。夏道は林の中を通るので、岸辺を行くことにした。少し歩くと、なんと岸辺の氷が融けて水面で水鳥が遊んでいる。林の中は歩きたくない。しかたなく沖へと歩を進めた。なんだか氷の薄そうなところや、すでに割れ始めているところを通る。スキーを履いているのだ、沼に落ちたら這いあがれっこないと思うとどきどきした。
が。慣れてしまうと全然平気。逆に、沼からの眺めなんてそうそう見られるもんじゃない、そう思うとなんとも気分がよいのだ。
快調にスキーを滑らせていくと、大入洲半島の先端あたりがだいぶ融けてきていた。そのまま大回りして半島を迂回して長蔵小屋に直行しようか迷ったが、もし渡りきれないと再び戻らなければならないので、半島から上陸して岸を進むことにした。

14:38 長蔵小屋着(1595m, 19.5℃)

燧ヶ岳
長蔵小屋近くからの燧ヶ岳
浅湖あざみ湿原を通過して長蔵小屋に到着。案の定、大入洲半島に上陸せずにそのまま沼を渡るとたいへんな遠回りだった。
小屋の前では思い思いに散策をしている人が多かった。我々は、小屋には遅くにチェックインしたほうが部屋割りで得なのではないかと考え、まだ閉鎖中のビジターセンターの壁でシールを乾かし、写真を撮ったりクッキーを食べたりしてから、16時ごろようやく小屋に入った。

長蔵小屋

長蔵小屋の2階
長蔵小屋の2階
混雑を心配していたが、この日は12人の部屋に我々ともう1組の夫婦だけだった。男女組なら男女組同士の部屋割りにするのだそうだ。どうも部屋割りも最初から決まっていたようすで、わざわざチェックインを遅らせる必要はなかったようだった。乾燥室もちゃんとあった。
廊下や階段などもよく磨かれていて美しいのに驚いた。こんな立派な小屋に泊まったのは初めてだ。トイレはなんとウォシュレット。山小屋なのにそんな、と思ったが、これなら浄化槽の天敵・紙ごみが減る。尾瀬なら水も豊富だし、納得。風呂もある。洗剤が使えないので湯につかって浴びるだけだが、ありがたい。食事もおいしくいただけた。ありがたい。

情報収集、予定を変更

翌日は御池に出るつもりでいた。閉鎖された林道は我々のスキーのレベルにちょうどよいだろう。御池まではすでに車が入れるのでタクシーを呼んで桧枝岐に下りようと思っていた。温泉やそばなどが楽しみだ。また、御池の近くには有名なブナ平がある。ブナ原生林もスキーで味わいたかった。
が。桧枝岐にはタクシーはないのだそうだ。呼ぶとなるとはるか下の会津田島からとなり、莫大な金額がかかるのではないかという。長蔵小屋の公衆電話はまだ調整中で使えず、小屋に予約を頼むとしても無線でやりとりすることになるのでたいへんだ。尾瀬沼はもちろん、御池も携帯電話は通じない。というわけで、下山口は大清水に決定。ブナ平に行けないのは残念だが、しかたない。
で、明日はどこに泊まろうか、という話になったのだが、聞けば小屋は今日よりも空いていて、個室になりそうだという。一も二もなく連泊に決め、明日は周辺を周って、明後日の朝一番で下山することにした。
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