ピコ通信/第86号
発行日2005年10月24日
発行化学物質問題市民研究会
e-mailsyasuma@tc4.so-net.ne.jp
URLhttp://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/

目次

  1. 9月17日/国際市民セミナー報告 (下)
    どうなるEUの新化学物質政策−REACHをめぐる議論と展望−

  2. なぜ日本でREACHセミナーを開いたのか/2005年国際市民セミナー閉会の挨拶から
  3. 第39回富山県公立学校事務研究発表会/シックスクール アンケート調査結果報告
  4. 海外情報/ビスフェノールAの低用量での影響に関する広範な論文が新たなリスク評価の必要性を示す
  5. 海外情報/欧州委員会プレスリリース/ナノテクノロジー製品のリスク評価に関するQ&A及びパブリック・コンサルテーションについて
  6. 化学物質問題の動き(05.09.23〜05.10.23)
  7. お知らせ・編集後記


9月17日/国際市民セミナー報告 (下)
どうなるEUの新化学物質政策−REACHをめぐる議論と展望−



REACHの現状と将来
パール・ロザンダーさん(国際化学物質事務局代表/ウェーデン)

Mr. Per Rosander (The International Chemical Secretariat)
http://www.chemsec.org/

(1)はじめに
 私が所属する組織、国際化学物質事務局(ChemSec)は2002年に、スウェーデン天然資源保護協会、WWFスウェーデン、地球の友スウェーデン、スウェーデン青少年自然保護協会によって設立されました。
 その目的は、市民団体やNGOsとともに有害化学物質の削減を、西ヨーロッパだけではなく世界の他の場所においても推進することです。
 私どもは立法を促進するために政策プロセスに関与しています。また、積極的に産業界とも対話を図っています。それは個々の会社の自主的な取り組みを支援するためですが、有害な化学物質汚染を削減するための国内及び国際的な取り組みに参加するよう働きかけるためでもあります。

(2)REACHは現在どうなっているか?
 1998年に各国の環境大臣による最初の討議が行われて以来、改革案は徐々にはっきりとしたものになってきました。規制案は欧州委員会によって2003年に正式に発表されました。現在、政治的なプロセスとしての共同決議手続きが、欧州議会(全てのEU加盟国の市民の中から普通選挙で選ばれた議員からなる)と欧州閣僚理事会(加盟25カ国の閣僚からなる)の間で行われています。
 欧州議会と閣僚理事会は数ヶ月間、この規制案を議会委員会と特別部会でそれぞれ検討しています。議会はこの規制案を本年11月末には採決し、その数週間後に閣僚理事会が意見表明するであろうと予想されています。そして最終の合意は2006年の中頃になされ、その数週間後に立法化されることが期待されます。
 REACHは、段階的登録期間を持つよう設計されているので、REACHの導入は11年かけて徐々に行われることになります。大量に使用される化学物質、及び有害な特性を持つ化学物質は優先的に登録されます。しかし、現在使用されているほとんどの化学物質にとっては、REACHに対応できるようにするための長い猶予期間があると考えられます。

3)議会での主要な論点
■どのくらい多くのデータが生成されなくてはならないのか(そしていつまでに)?
 REACHの核心は我々の周囲にある化学物質についての知識を増大することにあります。現在、9割の化学物質についてはほとんど情報がないので、人間や野生生物に深刻な脅威を及ぼす化学物質を指摘することは不可能です。REACHは年間1トン以上製造される全ての化学物質に対して、データの基本セットを提出するよう求めています。化学物質のデータが示されない場合には"データのない物質は市場に出さない"("No data - No market")という原則にしたがって、その物質はEUでは許されないということです。
 生産量が1〜10トンの化学物質(REACHが対象とする全化学物質の3分の2を占める)に対するデータ要求は、初期の提案に比べ、非常に低くなっています。それなのに欧州化学工業連盟は、テストは産業界、特に中小企業には対応できないと強く主張してきました。

■非常に有害な物質の代替は必ず行わなくてはならないのか?
 当初のREACH(訳注:2001年白書にあるREACHの概念)のもう一つの要は"代替要求"です。もし化学物質が非常に有害な特性を持つことがわかったなら(REACHでは発がん性・変異原性・生殖毒性物質(CMRs)及びそれに相当する懸念のある物質として定義)、それらの物質の使用は、より有害性が低い化学物質が存在しない、又は社会経済的理由で代替物より有害な物質の使用が正当化される場合にのみ、認可される−ということを意味します。
 この原則は2003年のREACH提案ですでに損なわれていますが、この原則の奪還を目指して論争が続いています。代替が最終文書で強化される可能性があるようにも見えます。

■輸入製品はどのように扱われるのか?
(略)

■生成される情報に誰がアクセスできるのか?
 REACHの目的の一つは、情報がサプライチェーンの川下の会社や廃棄物管理プラントにまで、そして、その情報を知りたいと望む誰に対しても確実に行き届くようにすることです。情報へのアクセスは労働者保護のためだけでなく消費者の保護のためにも重要です。
 しかし、多くの化学物質製造者は、データの多くは機密として扱われるべきであると要求してきました。NGOsはデータの開示の結果、企業にダメージを与えるということを企業が証明した場合に限り機密を認め、情報への一般的なアクセスができるようにすべきであると要求しています。

■製造者は一般的に彼らの製品に対してどのような責任を持つべきなのか?(注意義務)
 REACHは市場にある約30,000種の物質を対象とします。しかしREACHの対象外となる物質、あるいはREACH要求とは直接的に関連しない物質から生ずる結果に対して、産業側にはどのような責任が求められるのでしょうか?一般的"注意義務"条項は、当初のREACHに含まれていましたが、その後のREACH案からは削除されました。NGOsといくつかの加盟国は"注意義務"は安全確保の条項であると主張しています。

(4)議会での最近の議論
■登録の優先をリスクベースとする提案
 議会の域内市場委員会(IMCO)の修正提案の核心は、登録テスト要求は、その化学物質の製造量・輸入量に基づくという現在の提案とは異なり、健康と環境に及ぼすリスクに基づくという方向にもって行こうとするものです。この"リスクに基づく優先度"は、化学産業界によって最初に提案されたものです。
 環境団体はこの考え方に非常に批判的です。REACH を開発することとなったもともとの引き金は、化学物質のデータの欠如でした。健康と環境へ及ぼす影響への特性についての基本的なデータを持たずに、我々はどのようにして優先順位をつけることができるのでしょうか?

(5)利害関係者の立場と活動
 まとめとして、様々な関係者によって表明された主要な論点を示します。

環境団体・NGOからの主な要求
■非常に高い懸念のある化学物質の使用の認可は、他により安全な代替がなくその使用が社会にとって本質的である場合にのみ与えられるべき。代替は必須でなくてはならない。
■1-10トンの物質の登録から削除されたテストと化学物質安全報告書は、危険、曝露、安全使用を評価するのに十分な情報を提供できるよう、登録要求に含まれなくてはならない。
■輸入成形品に使用される化学物質は、欧州域内で製造される成形品と同様な情報要求を持たねばならない。
■サプライチェーンを通じて川下ユーザー、小売業者、消費者が、購入する製品に含まれる化学物質について知ることができるよう公衆の知る権利が確保されなくてはならない。

欧州労連(ETUC)からの主な要求
■"注意義務"は全ての化学物質に対して再度、導入されるべきである。(他はNGOとほとんど同様であり省略)

産業界の立場
 産業界は、REACH改革に対し、しばしば敵として(あるいは少なくとも非常に疑わしものとして)認識されています。しかし、"懐疑派"だけでなく、REACHは化学物質を管理する上でより効率的で経済的であるとしてREACHを積極的に推進する企業も増えてきました。
 "懐疑派"のほとんどは、欧州化学工業連盟又は産業分野の連合である"REACH連合"によって代表される化学物質製造者です。
 "推進派"はしばしば大きな小売業者です。彼らの化学物質への関心は主に彼らの製品ができるだけ有毒性がないようにすることです。他の産業分野でよりよい化学物質管理に大きな関心を寄せているのは建設業です。
" 推進者"らによる主張は、多くの企業が意見を表明しているケムセックの出版物『REACHの中で我々が必要とすること』に見ることができます。
(訳注:当研究会日本語訳 http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/reach/ChemSec/chemsec_reach.html

(6)REACHの影響を予測する
 欧州委員会の見積りによれば、もしREACHが化学物質によって引き起こされる疾病の10%を削減するなら、それは毎年約4,500人の死を防ぐことを意味するとしています。この見積りから、欧州委員会はREACHの潜在的な利益は30年間で約500億ユーロ(約6兆5,000億円)であると計算しました。
 欧州委員会と連携を取りながら産業界自身が実施した最近の大規模な調査では、産業側には特に重大な影響は認められず、むしろコストは既存の枠組みの中で十分に吸収できることを示しました(KPMGによる調査報告)。  興味深いのは、化学物質製造者がREACHを実施するための年間コストは、EUにおける彼らの総売上高の約0.05%に過ぎないということです。また、REACHのためのコストは年間市民1人当たり1ユーロ(約140円)以下です。健康と環境に対する大きな利益をもたらすなら、これは間違いなくEUが負担することができる金額です。
(文責:化学物質問題市民研究会)

※当日の資料集(A4判 75頁)は1部500円(送料別)でお分けします。当会事務局へFAX、メール等でお申し込みください。


なぜ日本でREACHセミナーを開いたのか
−2005年国際市民セミナー閉会の挨拶から−


安間 武(化学物質問題市民研究会)

 REACHに関する国際市民セミナーは昨年に引き続き、今回が2回目であり、スウェーデンからお招きしたインガー・シェーリングさんとパール・ロザンダーさんにREACHとは何か、そしてREACHの現状と展望についてお話をしていただきました。
 この場をお借りして、なぜ私たちがEUのREACHに関し、日本で市民セミナーを開催したのか、その理由を簡単に説明させていただきます。
 人の健康と環境を守るという目的のためにREACHが基づいている基本理念、例えばデータのない化学物質は市場に出さない、予防原則、立証責任の移行、代替原則、一世代目標、情報公開、市民参加、こういった高いREACHの理念を頭に描きながら、日本の化学物質政策の現状を見た時に、日本の状況は、新しい化学物質政策REACHを必要としたヨーロッパと全く同じ状況であることに気がつき、日本の化学物質政策を変えさせていかなくてはならないと考えたからです。
 そのためには日本の市民のみなさんに、ぜひREACHの理念を理解していただき、そして日本の化学物質政策を変えさせていく大きな力となっていただきたいからです。化学物質汚染のない地球を求める東京宣言の賛同・署名を求めるキャンペーンもその一環でした。
 日本では現在の化審法が1973年に施行されましたが、EUと同様にこの化審法が施行される以前の既存化学物質については、30年以上経過した現在でも、ほとんどの化学物質について安全情報がなく、したがって市場に出ているそれらの安全性が確認されていないのです。
 国はREACH等の動きにあわてたのか、既存化学物質について30年間以上放置しておきながら、今年になって急遽、厚生労働省、経済産業省、環境省の3省が合同で推進会議を2回開き、5月中旬にわずか2週間のパブリックコメントにかけただけで、6月1日付けで「官民連携既存化学物質安全性情報収集・発信プログラム(別名ジャパン・チャレンジ・プログラム)」を立ち上げました。このプログラムは、アメリカ会計検査院(GAO)がうまくいっていないと指摘しているアメリカの高生産量化学物質(HPV)に関する自主的収集プログラムを真似したもので、全くお話になりません。
 REACHに対する日本政府の対応は、2003年7月にREACHのインターネット・コンサルテーションにおいて、また2004年6月には世界貿易機関(WTO)に向けて、経済産業省が全く産業界保護の立場だけからのコメントを表明しました。REACHは人の健康と環境を守るための化学物質規制案であるにもかかわらず、環境省はREACHについて一言も公式な発言をしていません。
 一方、REACHにあれほど反対しているブッシュ政権のアメリカにおいてさえ、今年の6月13日にアメリカ会計検査院が「EPAの化学物質管理の能力を改善する必要がある」という内容の勧告書を出しました。この勧告書は、アメリカの化学物質政策の状況がEU及び日本の状況と非常によく似ていることを示しています。この勧告を受けて、1か月後の7月13日に、REACHの理念を織り込んだアメリカ有害物質規制法(TSCA: Toxic Substances Control Act)の改定案(別名:子ども安全化学物質法 Kid Safe Chemicals Act)が民主党のジョン・ケリーやヒラリー・クリントン、エドワード・ケネディら5人の有力議員により提案されました。
 残念ながら、日本では政府や議会の中にこのような動きは全く見られません。したがって、われわれ市民が政府や議会に働きかける必要があるのです。
 市民のみなさん、日本の化学物質政策を産業保護のためだけではなく、人の健康と環境を守るという本来の化学物質政策に変えさせていこうではありませんか。


参考資料
米会計検査院(GOA)報告書 2005年6月/化学物質規制/健康リスクを評価し、化学物質検証プログラムを管理するためのEPAの能力を改善する選択肢がある

2005年7月13日米上院提出/米子ども安全化学物質法案/子ども、労働者、及び消費者の有害物質への曝露を低減するための有害物質規制法(TSCA)を修正する法案


第39回富山県公立学校事務研究発表会
シックスクール アンケート調査結果報告


 学校で使われるワックス、文具、洗浄剤、農薬などによって健康を害する子どもたちが増えています。
 このほど、富山県公立学校事務職員協会がシックスクール問題について県内小中学校45校を対象にアンケート調査を実施し、その結果を8月25日に開かれた第39回富山県公立学校事務研究発表会で発表しました。
 その概要を紹介します。(資料:同発表会研究紀要 文責:化学物質問題市民研究会)

1.シックスクールの認知度について
■シックスクールという言葉を知っているか?
 知っている:60%、知らない:24%、聞いたことがある:16%
■何で知ったか?
 新聞・雑誌:40%、テレビ・ラジオ:22%、研修会:24%、インターネット:14%
■シックスクールについて興味・関心があるか?
 ある:53%、ない:9%、どちらでもない:38%
■シックスクールの原因と疑われる物は?
 建築用接着・防腐剤:43校、ペンキ:33校、ワックス:29校、除草・防虫剤:23校、塩ビ製品:20校、洗剤:14校、文具:9校、衛生用品:7校

2.原因となる物の使用状況
ワックス
■ワックスを塗っているか?
 塗っている:100%
■教室に塗るのは誰か?
 教職員:58%、児童生徒:33%、業者:6%、知らない:3%
■廊下に塗るのは誰か?
 教職員:48%、児童生徒:25%、業者:23%、知らない:4%
■体育館に塗るのは誰か?
 教職員:37%、児童生徒:23%、業者:40%

〔考察〕
 児童生徒がワックス掛けしている割合は多くないようだ。しかし、その理由が作業効率や仕上がりが悪いからという学校があった。

〔原因・問題点〕
・油性タイプ:トルエン、キシレン、PRTR法該当物質を含むものがある。
・樹脂タイプ:架橋剤として重金属、可塑剤として環境ホルモン疑惑物質を含むものがある。(編集注1)
・シックスクール対応品:有機リン剤がより多く含まれているものがある。(編集注2)

〔対策・代替品〕
その1 天然成分を主体とした製品を使う
 蜜蝋(ミツバチの巣)、木蝋(ハゼの実)、カルバナ蝋(カルバナヤシ)、シェラックワックスなどの天然成分のワックス。耐久性、光沢の点で石油製品に劣るが、安全性を優先したい。
その2 成分の確認をする
 メーカーに法規制該当成分、環境ホルモン、有機リン系化合物、重金属などが含まれていないか問い合わせる。気になる成分の含有率を聞く。(製品安全データシートでは、成分や含有率が詳しく書かれていない場合が多い)。

〔事例紹介〕
・体育館に蜜蝋ワックス(水性ウレタン塗料)を使用。摩擦に弱いので、新築当初は年3〜4回塗る必要があった。2年後の現在は年2回。
・全館新築されたので、天然成分の水性ワックス使用。ほとんど光沢がないので、物足りないという声もあった。原液を水で薄めるタイプで後始末などは楽。
・室内濃度指針値策定物質、環境ホルモン疑惑物質、PRTR法該当物質、有機リン酸エステル類(トリブトキシエステルフォスフェートTBXP)が含まれていないことをメーカーに確認した水性ワックスを使用。安全性の確認が十分とはいえないので、次回はシックハウス対策に定評のある会社の植物性ワックス兼クリーナーを使ってみたい。

マジック
■何を使っているか?
 油性のみ:7%、油性・水性の両方:93%

〔原因・問題点〕
 油性:溶剤 約70%(キシレン、アルコール等)顔料 約10%、樹脂 約20%(ダンマル樹脂など)
 水性:溶剤が水(エチレンングリコールを15%含有するものあり)

〔対策・代替品〕
 教室で全員がいっせいに油性ペンを使うのはやめる。耐水性に優れ、ガラスや金属に描ける水性タイプのものを使う。

消石灰
■何を使っているか?
 消石灰使用:33%、グランドマーカー使用:67%

〔原因・問題点〕
 消石灰の成分は水酸化カルシウム。強アルカリ性で皮膚・粘膜に炎症を起こす。また、飛散しやすい。

〔対策・代替品〕
 炭酸カルシウムが成分のグランドマーカーに替えたい。

消臭剤
■トイレ用消臭剤を使っているか?
 使っている:59%、使っていない:41%

〔原因・問題点〕
 芳香剤:成分(両性界面活性剤系消臭剤、界面活性剤、色素、香料など)
 消臭剤:成分(両性界面活性剤系消臭剤、界面活性剤、植物抽出物、吸水性樹脂)
 小便器置きタイプ(尿石防止剤、界面活性剤、腐食防止剤、着色剤)
 防臭剤:成分(パラジクロロベンゼン)
芳 香剤、消臭剤ともに、無害という言葉を鵜呑みにはできない。狭い空間での使用なので十分な換気必要。パラジクロロベンゼンは有害物質なので、使用は控えよう。

〔対策・代替品〕
その1 クエン酸:コップ1杯の水に小さじ1のクエン酸を溶かしクエン酸水をつくる。
・消臭のみ:小便器にクエン酸水を毎日コップ半分流す。尿石が少しずつ取れて、2週間ほどで匂わなくなる。
・消臭+芳香:ハッカ油をクエン酸水に数滴たらし、便器の中へスプレーする。
 注意:揮発しないので、錆びるところへかけないように。
その2 酢酸:市販品の酢酸(30%くらい)を6倍程度に薄めて、クエン酸水と同様に使用する。ツンとした酢の匂いがするが、時間とともに消える。揮発するので室内噴霧も可能。クエン酸、酢酸、ハッカ油は薬局で買える。
 芳香剤を使う消臭方法は、悪臭を匂いで誤魔化しているだけ。便器や床を洗っても悪臭がする時は、小便器やパイプ内についた尿石等の原因を取り除く必要がある。

トイレ用洗剤
■使っているか?
 使っている:79%、使っていない:21%

〔原因・問題点〕
 一番危険なのは塩酸を含む洗剤。合成界面活性剤が含まれる。

〔対策・代替品〕
 洗剤を使わずに、ブラシと水だけで掃除をしよう。汚れが取れにくい場合は、酸や重曹を使って掃除してみよう。
その1 クエン酸、酢酸(作り方は消臭剤に同じ)
 軽い汚れ:便器内にスプレー  こびりついた汚れ:汚れにトイレットペーパーをかぶせて、スプレーして置く。
その2 重曹(炭酸水素ナトリウム)
 軽い汚れ:便器内に粉末の重曹を振りかける。
 こびりついた汚れ:重曹ペースト(重曹にクエン酸水を泡立つくらいかける)を汚れに塗りつける。
 いずれも時間を置いてからブラシで擦る。

消毒剤
■給食時の配膳台等の消毒剤は使っているか?
 使っている:86%、使っていない:14%
 割合が高いのは、O-157対策のためと思われる。

〔原因・問題点〕
 環境、器具、手指用:塩化ベンザトニウム、逆性石鹸(塩化ベンザルコニウム、4級アンモニウム化合物)、エチルアルコール
 食品・環境用:アルコール
 プール・環境用:次亜塩素酸カルシウム

〔対策・代替品〕
その1 強酸性水:電気分解生成水。製品(1,000円/2リットル〜)と生成機がある。悪臭、環境汚染がほとんどなく、皮膚・粘膜への毒性軽微。
その2 用途に応じた、かつ毒性の低い製品を使う。

除草剤
■使っているか?
 使っている:71%、使っていない:27%
■使う時、児童生徒に配慮しているか?
 配慮している:88%、配慮していない:12%
■どんな配慮をしているか?
 散布場所に行ったり触ったりしないように注意:35%、児童生徒が使用しない場所のみまく:23%、児童生徒がいない時まく:42%

〔対策・代替品〕
その1 使用頻度、時期の見直し:効果的な時期に散布し、量や回数を減らす
その2 場所、用途に応じた散布:花壇、菜園などには使用せず、手で抜く
その3 ガスバーナーによる焼き除草
その4 土壌の酸性化:天然素材(塩)を主成分とする除草剤を散布して、草が生えにくい土壌に変える

殺虫剤(編集注3)
■樹木等の殺虫剤は使っているか?
 使っている:19%、使っていない:6%、業者がする:75%
■児童生徒への配慮は?
 配慮している:95%、していない:5%
■配慮の内容は?
 散布場所に行ったり触ったりしないように注意:45%、児童生徒が使用しない場所のみまく:6%、児童生徒がいない時まく:38%、その他:11%
 業者が使用している農薬の種類については、把握できていない現状である。

〔対策・代替品〕

その1 無農薬での剪定駆除:害虫発生時期の見回りを徹底し、初期に発見して大量発生する前に剪定し、防除・駆除する。
その2 部分焼却駆除:害虫が発生している箇所を部分焼却し、大量発生を防ぐ。
その3 コモ巻きによる毛虫の駆除:秋にコモ巻きを行い、2月下旬から3月初旬にコモを外し毛虫の捕獲・処分をする。
その4 天然素材のもの:木酢液、除虫菊の蚊取り線香、ハーブ精油など。
その5 散布頻度、時期の見直し

(せっけん、ペンキ、塩ビ製品等については省略)

 研究紀要には、ほかに化学物質過敏症についての説明、化学物質に弱い子どもの特性、大阪市のシックスクール訴訟の紹介など、そして必要な関係行政資料も掲載されています。
 学校の事務職員は、実際に消耗品や備品を選択し発注する立場にあり、シックスクールの原因物質と深く関わっています。今回の富山県の例のように、今、学校事務職員の団体の中にシックスクール問題に取り組む動きが広がってきている(本紙76号参照)ことに、問題解決への希望を感じます。(安間節子)

編集注1:有機リン系可塑剤を含む物がある
編集注2:キシレン、トルエンが検出された例がある。防腐剤を含む物が多い。
編集注3:研究発表では防虫剤となっているが、内容から殺虫剤とした。

化学物質問題市民研究会
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